昨夜から今日にかけて、民主党の勉強会仲間の3人の国会議員と一緒に、沖縄を訪問しました。訪問の目的は、今年2月17日に米国クリントン国務長官と中曽根外務大臣との間で署名された「海兵隊の沖縄からグアムへの移転に関する協定」(以下、「協定」と言います。)の国会での審議が明後日から始まるのに備えて、現地・沖縄を見ておこうとすることにあります。

 先ず、協定の概要をご紹介します。協定では、①我が国が、米海兵隊8千人とその家族9千人の沖縄からグアムへの移転費用の一部として最大28億ドルを負担する、②米国政府は、我が国の資金拠出に対し、その適正な使用をすると共に、調達に当たって公正、公平な取扱いをする、③米国政府は、米国の予算の範囲内で、普天間基地の代替施設の完成に具体的な進展があること等を条件に、資金拠出等を行う、などとしています。

 この協定については、これまで、民主党の外交・安保部門会議で勉強・意見交換してきており、その際にも、また、有識者からも、色々な問題が指摘されています。以下、その問題点をご紹介します。

 第一に、今から2年前に日米両政府間で合意され、その合意に基づいて我が国の今年度予算で既に340億円余が予算措置されているにも拘らず、なぜ、この時点になって日米間の「協定」が結ばれなければならないのかという問題です。この点については、もし、我が国で政権交代が起こると、日米政府間の合意が新政権によって見直されることを自公政権と官僚が恐れ、今のうちに「協定」で新政権を縛っておこうとしたからではないかと考えられます。

 第二に、協定は、何を縛ろうとしているのかという問題です。表面的には、「米海兵隊の沖縄からグアム移転に関する日米両政府の義務」が、協定の本文である各条文で規定されているのですが、実は、前文には、在日米軍の再編の全体像が記載されているのです。私の地元でも反対が強い、厚木基地から岩国基地への空母艦載機の移駐も記載されています。つまり、この協定は、在日米軍再編の全内容について新政権をも縛ろうとしているのです。

 第三に、協定では、海兵隊の沖縄からグアムへの移転を、普天間基地の代替施設の完成に具体的な進展があることを条件としていることの問題です。普天間基地の我が国への返還は、既に96年に合意されているにも拘らず実現されていません。「代替施設ができないから」と言う理由ですが、この協定で、日米両国政府は、沖縄県民に対し、「代替施設の建設を受容れない限り、海兵隊はグアムへは移転させないぞ」と圧力をかけているのです。

 第四に、我が国が最大28億ドルの「真水」(税金による負担)を負担する根拠が何なのかという問題です。「沖縄の基地負担を軽減するために移転してもらうのだから、ある程度、我が国が財政負担するのは当然だ」という理屈もありますが、他の国で米軍再編のための財政負担を負った国は、我が国以外にはありません。また、その負担金額の根拠も、積算根拠は隠されたままですし、合理的な説明がなされているとはとても言えないのです。

 以上のように、問題の多い協定ですので、国会での審議に当たっては、色々な問題点が指摘されることになると思います。半年以内に必ず行われる総選挙で政権交代を目指す民主党としても、問題が多く、必要な情報も明らかにされていないこの協定に縛られることは決して好ましくないと思われます。

 ところで、今回の沖縄訪問では、協定に直接関係する基地問題や、直接関係はしないが対処を必要とする基地問題に幾つか出会いましたので、以下にご紹介しておきたいと思います。

 その一つは、普天間基地の状況についてです。普天間基地では、米軍の安全基準に反した基地運用が長い間行われており、もし、普天間基地が米国内であれば、安全上不適格な飛行場として欠陥飛行場となると言うことです。元々、米軍再編が検討される以前の96年に、我が国への返還が両国政府で合意されていたのであり、代替施設の手当ての有無とは関係なく、即刻、返還されるべき状況にあると言えます。

 その二つは、普天間基地の代替施設として位置づけられる辺野古新基地建設についてです。本日、沖縄防衛局から、環境アセスメントの「準備書」が提出されましたが、既にキャンプ・シュワブとなっている現地では、新基地建設に必要となる陸上施設について、急ピッチで建設が進められていました。美しいサンゴ礁があり、ジュゴンやウミガメが生息する海を失うことの損失は計り知れないものがあると感じました。

 その3つは、嘉手納基地の騒音問題等についてです。極東最大規模の嘉手納基地には、今年1月から、米空軍最新鋭のステルス戦闘機F22Aラプター12機が配備され、さらに、先月27日には4機が加わっています。これらの戦闘機で「負担軽減どころか、年明けから騒音がひどい状況が続いている」(自治会長談)上に、同型機が先月25日に米国内で墜落してパイロットが死亡しており、住民は、墜落の不安をも抱える状況になっています。

 その4つは、キャンプ・ハンセンでの流弾事件です。実弾射撃訓練場のあるキャンプ・ハンセンでは、過去にも数多くの流弾事件が発生しており、住民に不安を与えてきました。最近、テロリスト等に対処する訓練のために、都市型の訓練施設ができたことから更に不安が増しています。その中で、昨年12月に起こった流弾事件について米軍の不誠実な対応に憤りを感じた住民が、軍用地の賃貸借契約の更新を拒否する事態も発生しています。

 このように、米軍基地に関して多くの苦悩を抱えた地域住民の皆さんは、異口同音に、「我々は人間としての扱いを受けていない。」「何時まで経っても、我々は『占領軍』に支配されている。」等言っておられました。「基地周辺の住民にとっては、何時、『本当の戦後』がやってくるのだろうか。」米軍基地を抱えた岩国で生まれ育った私にとっても、同じような思いがよぎった沖縄訪問でした。