本日、通常国会が開会されました。国会法によれば、通常国会は「毎年1月中に召集するのを常例とする」とされていますが、通常、1月下旬に開会されていますから、「5日の開会」というのは極めて異例です。そして、この異例の開会時期となったのは、第二次補正予算の審議のためであり、第二次補正予算で与野党対立の焦点となっているのが、「定額給付金」の取扱いです。

 「定額給付金」は、「景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うとともに、あわせて、住民に広く給付することにより、地域の経済対策に資するもの」として決定されたものであり、予算案では、総額2兆395億円が計上されています。この「定額給付金」は、19歳から64歳までの人は一人当たり1万2千円、18歳以下又は65歳以上の人は更に8千円を加算した額が支給されることとされています。

 この「定額給付金」の決定を巡っては、麻生総理の「迷走」がありました。当初、公明党から「景気対策として2兆円の定率減税」が打ち出されましたが、「高額所得者に優遇となる」との批判を受けて「2兆円の定額減税」に変更され、「所得税を払えない低額所得者へも支給すべき」との主張があって「生活支援のための2兆円の定額給付金」にまとまりました。この動きに混乱した麻生総理の「迷走」が、「定額給付金」に対する国民の批判に繋がったのです。

 「定額給付金」を巡っては、「地方分権」との関係を巡っても批判がありました。麻生総理は、受給対象者の所得制限に関して、「所得制限を設けるか否か、また、設ける場合でも幾らで設けるかは、地方自治体が決めれば良い。それが地方分権だ。」と言い張りましたが、「地方分権」と言うならば、2兆円の財源をどのように使うのかも、地方自治体に委ねるべきでしょう。特に、「定額給付金」給付に825億円の事務費がかかることを考えれば、なお更です。

 このような「定額給付金」ですから、「定額給付金」による経済波及効果に疑問があること(かつての「地域振興券」による経済効果は、給付額の3割程度しかなかったとの分析が政府によって行われています。)と併せて、野党各党は反対をしています。この国会での審議でも、激しい論戦が見込まれていますが、その論戦は、第二次補正予算の成立を巡って行われるほか、関連法案の成立を巡っても行われることになります。

 具体的には、次の通りです。先ず、「定額給付金」の実施自体は、第二次補正予算で審議されますが、衆議院で第二次補正予算の採決が行われ参議院に送付されますと、その後30日を経過すれば「自然成立」します。他方、「定額給付金」支給の財源は、「財政投融資特別会計からの繰入れ法案」で審議されますが、同法案は衆議院で採決されても、参議院で「否決」又は「60日経過」となると、衆議院で3分の2以上の多数での再議決が必要となります。

 この関連法案の再議決を巡っては、波乱となり得る色々な事態が想定されます。

 その一つは、関連法案が今年度中に成立するのか、です。「定額給付金」の支給は、予算書では「繰越明許費」扱いとなっており、来年度に入っても支給することができるようになっていますが、「関連法案が今年度中成立しなければ財源の裏付けがないことから、『定額給付金』の支給はできない」(財務省説明)とされています。可能性は乏しいと思いますが、今月中に関連法案が衆議院を通過しない時は、「定額給付金」の支給ができなくなります。

 もう一つは、与党側にとって、関連法案の再議決に必要な3分の2以上の多数が確保できるか、です。与党から17人の造反者が出れば、衆議院での3分の2以上の多数は確保できない状況です。本日も、自民党の渡辺喜美・衆議院議員が、「定額給付金が撤回されないならば、自民党を離党する」との申入れを自民党執行部に行っており、この動きが、今後どのように波及していくのか予断を許さない事態となっていると思います。

 この「定額給付金」を巡っての与野党攻防の結果如何によっては、麻生総理は、責任を取って総理大臣を辞任するか、国民の信を問うための解散・総選挙に踏み切るか、の選択を迫られる可能性があり得ます。この1ヶ月間の国会での攻防に注目していただきたいと思います。