実質的には、今臨時国会は、昨日の衆議院及び参議院の本会議で終了していましたが、本日をもって、9月12日から開会されていた臨時国会が閉会しました。今臨時国会は、「福田総理大臣(当時)の辞任表明の後行われた自民党の総裁選挙により選出された麻生太郎氏が総理大臣に就任した直後に、衆議院の解散・総選挙が行われることが必至である」と言われていたにもかかわらず、解散することもなく閉会を迎えました。
民主党の小沢代表も、6月に閉会した通常国会の終盤の頃から、「年内には、必ず解散・総選挙がある」と言っていましたが、結局は予想が外れた格好になっています。しかし、小沢代表の予想は、9月中旬から表面化した米国発の金融危機によって、麻生総理に、「政局より政策」とか、「景気対策が最優先だ」とかの口実を与えさせたために外れたと言っても過言ではありません。正に、「突発的な災害」に見舞われた臨時国会であったと言えそうです。
そこで、今後の関心は、来年9月に任期を迎える衆議院議員の総選挙が何時行われるのか、更に、どのような枠組みで総選挙が行われるのか、ということになります。
私が思いますに、最も穏当で、可能性が高いのは、麻生総理が踏ん張って、来年9月までの自民党総裁としての任期を全うして総選挙を迎えることでしょう。その場合は、自民党総裁の任期満了に伴う総裁選挙で、麻生総裁が静かに退場すると共に、新しい総裁が選ばれた上で、総選挙に臨むことになると思います。しかしながら、問題は、その場合には、自民党の若手議員が大勢落選する可能性が極めて高くなることです。
そう考えると、自民党の若手議員は、何とか生き残る手段を必死で模索することになると思います。その場合の一つの選択肢は、自民党若手議員がまとまって、「新しい改革勢力」に見える新党を立ち上げることです。その意味では、昨日の衆議院本会議での「衆議院解散要求決議」の採決を巡っての波乱が、今後、そのような流れを作るきっかけとなるかもしれない、と思っています。
昨日の衆議院本会議では、自民党の渡辺嘉美・議員が、与党の中では唯一人、「衆議院解散要求決議」に賛成をしました。昨日及び本日の報道では、渡辺議員の造反のみを取上げていましたが、実は、もっと幅広い動きがあったのではないかと想像しています。と言うのは、渡辺議員は、採決の寸前に自席に戻って賛成を示す起立をしたのですが、その採決には、渡辺議員の「お友達」と言われている後藤田正純議員は棄権をしていました。
その事実は、採決の直後に後藤田議員が本会議場の自席に駆け込むように戻ったところを、私自身が目撃したことではっきりしました。と言うことは、渡辺議員の賛成起立は、単独の行動というより、何人かの仲間がいる中での行動である可能性が想定されます。そうであるとすると、この動きは、来年1月5日に召集される通常国会で、もしかすると大きく広がっていく可能性がありそうです。
即ち、来る通常国会では、最初に、今年度の第二次補正予算の審議が行われますが、その中には、あの2兆円の「定額給付金」が含まれています。「定額給付金」の実施のためには、補正予算の成立に加えて、関連法案の成立も必要ですが、野党が「定額給付金」に反対している状況では、衆議院での3分の2以上の再議決が不可欠となります。しかし、もし、17人の与党議員が造反すれば、その再議決もできなくなるのです。
17人の与党議員が造反すれば、さすがの麻生総理も、窮地に陥ってしまいます。自らが総理大臣を辞任するか、衆議院の解散・総選挙を断行するしか、選択肢が無くなってしまうかもしれません。しかし、その場合でも、どのような枠組みで総選挙になるのかは、問題です。ただ単に自民党が分裂して選挙に臨むことになれば、有権者の皆さんからは、「自民党の内紛」としか受止められないでしょう。
「自民党の内紛」と受止められないためには、自民党の外部の政治勢力と結びつく必要があります。その場合の外部の政治勢力には、①民主党の一部、②改革派知事(元知事)、③脱藩官僚などの可能性が考えられます。民主党の議員は、今、「一致団結していることが大切な時期だ」との意識が浸透していますので、民主党の一部議員が自民党の一部議員と結びつく可能性は乏しいと思いますが、正直言って、その他の可能性は、私にはよく分りません。
いずれにしても、今後の政局は、誰にとっても、読み難いものと思います。「選挙による政権交代」を目指してきた我々にとっては、一時も気を抜けない状況がしばらく続くことになりそうです。