本日、衆議院では、予算委員会が開催され、「金融・経済、年金・医療」に関する集中審議が行われました。民主党は、従来から「国民の生活が第一」との方針の下、国民生活にかかわりのある問題を精力的に取上げてきましたが、特に、最近の経済危機を踏まえて、本日の集中審議となったわけです。他方、私は、本日は、私が役員を務めている二つの議員の集まりで、「軍縮」に関する勉強会を行いました。

 現在の経済危機に迅速かつ的確に対処することはもちろん大事なことですが、もう一つ、現時点で、安全保障の問題、特に「軍縮」の問題に取り組むことも大事だと思っています。というのは、先月4日に、米国の新大統領にバラク・オバマ氏が当選し、これまでのジョージ・ブッシュ大統領の「一国中心主義」の外交・安全保障政策が見直される可能性が高いとき、我が国として、どのような行動を採るべきなのか、現時点でよく検討しておくべきだからです。

 「軍縮」という点で最近注目されたのは、一昨日、ノルウェーの首都オスロで、「クラスター爆弾禁止条約」が署名されたことです。「クラスター爆弾」とは、一つの親爆弾から何百もの子爆弾が分散されて、敵軍を面的に制圧しようという爆弾ですが、子爆弾で不発弾となるものの多く、爆弾投下後も民間人に多くの被害をもたらしている爆弾です。我が国では、自衛隊が保有しており、禁止条約には積極的ではありませんでしたが、署名には参加しました。

 実は、この禁止条約には、クラスター爆弾を大量に保有する米・露・中などの国が参加していません。そのために、条約の実効性に疑問が持たれているという面もあるのですが、オバマ新大統領は、大統領選挙中に、クラスター爆弾や対人地雷などの「軍縮」に理解を示したと報じられています。オバマ氏は、上院議員時代の06年に、クラスター爆弾の使用禁止規定を盛り込んだ予算法案修正案を支持したこともありました。

 今日行われた2つの勉強会の主なテーマは、1つが「核軍縮問題」であり、もう1つが「米軍再編問題」です。いずれも、オバマ新大統領がこれからどのような考え方で取り組んでいくのかで、我が国にとっても影響が大きいと考えられます。また、「1週間で30億ドル」、「1ヶ月で60億ドル」などと言われている米国の巨大な軍事費が、米国の経済危機の中でどのように取り扱われることになり、この2つのテーマにどう影響するのかも、関心があるところです。

 「核軍縮問題」については、ニュージーランドから来日したアラン・ウェア氏から、国際法学者や科学者などの手によって作成され昨年改訂された「核兵器禁止条約」(案)の説明を受けた後、国会議員との意見交換を行いました。この条約案は、既に、マレーシア政府やコスタリカ政府の手によって国連総会にも提出されていますし、2010年に開催されるNPT(核不拡散条約)再検討会議でも検討されるべく、現在世界各地で働きかけが行われています。

 残念ながら、「核兵器禁止条約」のような包括的なアプローチをする条約については、核兵器保有国の政府は極めて消極的です。唯一の被爆国である日本の政府も、なぜか、「核兵器禁止条約」には消極的で、「部分的な対処を行っていく漸進的アプローチの方が現実的である」といった態度を取っています。米国政府に配慮すると共に、「我が国の安全保障を『核抑止力』に頼っている」という意識もあるからだと思います。

 しかし、最大の核兵器保有国である米国でも、かつての米国政府高官から核兵器廃絶の動きが出てきています。昨年1月と今年の1月のウォール・ストリート・ジャーナル紙に、キッシンジャー・元国務長官、シュルツ元国務長官などの連名による「核兵器のない世界を目指して」と題する論文とその続編が掲載されました。オバマ新大統領も、ブッシュ大統領が離脱を表明した包括的核実験禁止条約(CTBT)批准に向けて積極的な態度を見せています。

 「米軍再編問題」については、国立国会図書館の担当者から、①世界的な米軍再編の戦略目的、②在日米軍基地再編の経緯、③在日米軍基地の再編の現状と見通し等についての説明を受け、国会議員同士の意見交換を行いました。このような勉強会を行った経緯は、民主党の前原・元代表が、最近の講演で「今年の6月に訪米をして、オバマ氏に近い国防関係者と在日米軍の再編問題について面談をした」ことを明らかにしたことにもあります。

 前原元代表は、上記の講演で、米国の国防関係者との面談においては、沖縄の普天間飛行場の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に関して、「環境面、費用面、工期の長さなどから、難しいのではないか」との認識が双方から示されたことを明らかにしました。もし、その認識が実際に示されたとするならば、普天間飛行場に駐留する米軍の移転は、実は、「世界的な米軍再編の戦略目的」とは関係がない問題であることを示したことになると思います。

 同じことは、空母艦載機の厚木基地から岩国基地への移駐の問題についても、言えそうです。実は、空母艦載機の移駐は、「世界的な米軍再編の戦略目的」とは関係なく、日本側の事情によって推し進められている問題であることを改めて確認をする必要があります。つまり、空母艦載機は、「人口密集地域である厚木から、瀬戸内海沿岸で人口が密集していない地域に移駐させたい」という日本側の要請に基づいて行われようとしているということです。

 普天間飛行場の問題にしても、空母艦載機の移駐問題にしても、このような事実関係を日本政府にも認めさせた上で、本来あるべき「在日米軍基地の再編問題」を議論しなければ、国民や地元住民が納得できる解決策は見出せないと考えます。情報の隠蔽や「アメとムチ」の手法で、国民や住民をないがしろにする政府の姿勢を先ず改めさせるのが先決だと思います。