一昨日(18日)、麻生総理は、超党派でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会(若手議員の会)」のメンバー(自民党の代表幹事と民主党の幹事)と首相官邸で会い、同メンバーから、アフリカ東部のソマリア沖で頻発している海賊対策として海上自衛隊の艦船等の派遣の要請を受け、「日本の船舶が海賊に襲われたり、人質になってからでは遅い。早急に対策を検討しなければならない。」と答えた、と昨日(19日)報じられています。

 同日の別の新聞では、「若手議員の会」のメンバーからの要請の内容と同じ内容の法律を、「政府が特別措置法として制定する方向で検討に入った」と報じています。何か、政府、「若手議員の会」とマスコミが一緒になって仕組んでいるような気配を感じますが、その気配は、先月17日の衆議院テロ防止特別委員会で民主党議員がこの問題を取上げて、麻生総理が前向きに答弁し、翌日の新聞も大きく取り上げた時にも若干感じました。

 海上自衛隊のソマリア沖派遣は、結論的に言えば、「自衛隊の海外派遣の実績作りのためのもの」と思います。「実績作り」という意味では、私は、先月17日の衆議院テロ防止特別委員会で、麻生総理の著作から「始めて5年半。『ネイビー』をこれだけ長い間遠方に展開したことは、我が国の歴史始まって以来のことです。」という言葉を引用して、麻生総理に「インド洋への自衛艦の派遣は、海外派遣の実績作りではないか」と聞いたことがあります。

 この点に関しては、15日の朝刊でも、ソマリア沖の海賊行為を取り締まっている隣国イエメンの沿岸警備隊作戦局長が、インタビューに答えて、「海上自衛隊の派遣は、高い効果は期待できず、必要ない。日本から自衛艦を派遣すれば費用がかかるはず。」として基地港建設や高速警備艇導入などの財政援助を求めていることが報じられていますが、自衛艦のソマリア沖派遣は、正に、その必要性からも、費用面からも説明つかないものと評価されたのです。

 以上の考えは、「海賊対策をする必要がない」と言っているのではありません。世界では、今年の1月から9月までの間に199件の海賊事件が発生し、その3分の1がソマリア沖で発生しているそうですが、東南アジアのマラッカ海峡付近でも多発しています。その東南アジアでの海賊対策として、「アジア海賊対策地域協力協定」が06年9月に発効していますが、その起こりは、01年に日本が地域協力促進のための法的枠組み作りを提案したことにあります。

 「海賊行為」は、元来が犯罪行為であり、「海賊対策」は、犯罪発生の防止であったり、犯罪行為の取締りです。従って、「海賊対策」は、海上保安庁的組織によって実施されるべき性格のものであり、決して、「国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇や武力の行使」に当たるものではありません。万が一、その「海賊」が「国又は国に準ずる組織」と認定されるようであるならば、それは、また別の国際法的枠組みで対応を検討すべき問題であると思います。

 麻生総理が「日本の船舶が海賊に襲われたり、人質になってからでは遅い」と言っていることも気になります。麻生総理や「若手議員の会」が、我が国の船舶を守ることを理由に「実力部隊」を海外に派遣しようとしているならば、「いつか来た道」を思い起こさせます。「日本の国益を守るため」とか「邦人の生命、財産を守るため」という理由で、かつて日本軍を海外に展開して行ったことと余り違いがないのではないでしょうか。

 そのように考えたとき、我が国がとるべき合理的行動としては、①東南アジア地域では、犯罪取締りの目的がハッキリしている海上保安庁による活動があり得るとしても、②ソマリア沖では、イエメンの沿岸警備隊作戦局長が望んでいるように、精々財政的支援を行うことではないでしょうか。経済的にも効率的にも合理性のある地域分担、役割分担をすることが望まれるのではないかと考えます。

 麻生総理が、あくまでも、自衛隊の艦船をソマリア沖に派遣することにこだわるとするならば、それは、「効率的な海賊対策を講じる」という目的のためではなく、「自衛隊の海外派遣の実績をつくる」という目的か、或いは、「自衛隊の海外派遣の是非を巡って民主党内に亀裂を起こさせる」という目的のためではないかと勘ぐるのは、私だけでしょうか。