今夕、麻生総理は、総理官邸で記者会見を行い、①経済状況に対する自らの認識、②これから実施しようとする経済政策、③衆議院の解散・総選挙の見通しなどについて説明を行いました。その中で、解散・総選挙については、ちょっと前まで、「今月末頃に解散、来月(11月)末頃に投票」の可能性が高いと言われていましたが、近時の景気状況に鑑み、「政局より政策」との論調が強まる中、結局、解散・総選挙は先送りとなりました。
しかし、麻生総理が本当に「政局より政策」の気持ちを持って解散・総選挙を先送りにしたのかと言うと、ちょっと疑問に感じます。一部報道でも、「自民党が実施した衆院選の情勢調査で、与党議席が過半数を割る結果が出ており、解散先送りの判断を後押しした」と報じられていますが、本日の総理の記者会見の内容からも、「結局は、政局重視」と思われる箇所が幾つか見られたように思います。
その第一は、総理が「今の経済は100年に一度の暴風雨」と表現したことです。これまで、総理は、現在の経済状況に関して「全治3年」と表現してきました。本日の記者会見でも、「早ければ3年後に消費税率の引き上げをお願いしたい」と発言した判断の背景には、「3年後には景気が回復するであろう」との状況認識が実はあった、と思われます。しかし、「100年に一度の暴風雨」が、本当に3年間で回復するものなのでしょうか。
例えば、バブル経済崩壊後に「失われた10年」と言われる時期があったのは、1990年代であり、今はその時から未だ20年も経っていません。第二次世界大戦で我が国経済が壊滅的な状況になったのは60数年前であり、更に、その前の世界大恐慌も昭和時代初期で未だ100年も経っていません。結局、総理の発言は、「政局より政策が必要な時期だ」と強弁しようとして、逆に、実際はそうではないことの馬脚を現したのではないでしょうか。
その第二は、経済対策のための第二次補正予算について、総理が「今臨時国会中に国会に提出するかどうか分らない。」と説明したことです。今臨時国会の会期は11月末までですから、それ以後に第二次補正予算を国会に提出する可能性があり得るなら、11月末までに総選挙を済ましておいて、その後の特別国会や通常国会で第二次補正予算を審議することも選択肢としてあり得ることを示しています。
と言うのは、仮に、衆議院を解散しても、総理は、総選挙後30日以内に召集される特別国会の開会まで総理として留まれる(麻生内閣の閣僚も閣僚として留まれる)仕組みとなっているからです。この仕組みの下では、麻生総理は、衆議院の解散から特別国会の開会までの間に、総理大臣として第二次補正予算とその関連法案を政府に準備させることができるのです。「政局」をことさら強調する必要は全くありません。
ところで、総理が、経済政策に関して「早ければ3年後に消費税率の引き上げをお願いしたい」と発言したことについて、皆さんは、どのようにお考えになったでしょうか。残り任期が1年を切ってしまった麻生総理が、3年先に実現しようとする重要な政策を何故この時期に言い出したのでしょうか。「今は、『政局より政策』の時であり、『消費税率の引上げ』という政策についても政権の考え方を示すべきだ」と考えていたら、それは本末転倒だと思います。
「消費税率の引上げ」という国民的にも重大な関心を持たれている恒久的政策を実現しようとするのであれば、そのことについて国民の信を問う行動(すなわち解散・総選挙)をできるだけ早く採るのが筋であると思います。特に、第二次補正予算で実施しようとしている経済政策の妥当性に疑問がある中で、その経済政策のために財源を使ってしまえば、その分、消費税率の引上げ幅を大きくしたり、引上げ時期を早めたりする影響を与えてしまいます。
民主党は、徹底的な歳出の見直し、租税特別措置の見直し等により、(少なくとも当分の間は)消費税率の引上げは行わないとしていますが、麻生総理は、消費税率の引上げの時期までも明言しました。ここまで来たら、「一度、民主党に政権を担当させてみてもいいのではないか」という人もおられると思います。ここは、消費税率の引上げの是非についても、国民の意見を問うべき時期が来たと言えそうです。