本日、民主党の代表選挙が告示されましたが、小沢一郎・現代表一人しか立候補届けを出しませんでしたので、事実上、小沢代表の3選が決まりました。他方、自民党の総裁選挙は、2日後に告示されますが、本日2人が公式に出馬表明しましたので、昨日正式に出馬表明した2人を合わせて、4人以上が総裁選に出馬するという乱立模様になってきています。

 このように対照的な状況が生じてきた理由は何なのでしょうか。自民党のある閣僚からは、「民主党が閉ざされた政党であるから、小沢現代表以外に立候補者が出ない。」というような趣旨の発言がありますが、それは、民主党を批判するための「為にする」発言でしかありません。このような違いが出た真の理由は、解散・総選挙の時期を選ぶ権限を自民党の総裁でもある内閣総理大臣が持っていることにあると思います。

 もし、衆議院議員の任期を約1年後に控えたこの時期に、民主党が代表選挙で「仲間割れ」的な状況を示せば、総理大臣は、即座に、解散・総選挙の実施に打って出る可能性があります。逆に、今回のように、無風で民主党の代表選挙が実施されるならば、何か、自民党の人気が高まる手段を講じることをした後で、その結果を見て、最も適切な時期に解散・総選挙の実施に踏み切ればよいわけです。

 正に、福田総理は、今回、民主党の代表選挙に小沢現代表しか出馬しないことが事実上確定した今月1日に、後出しで辞任の記者会見を行い、「自民党の人気が高まる手段」としての総裁選挙ができる状況を作り出したわけです。このような状況では、自民党総裁選挙に、推薦人の当てもついていない国会議員でも「我も、我も」と候補者に名乗りを上げることに躊躇しないのは当然かもしれません。

 なお、思い起こしてみると、4年半前に、福田官房長官(当時)は、「年金保険料未納問題で辞任」という先手を打って、当時の民主党・菅代表を辞任に追い込んでいます。政治家・福田康夫は、在任中は、自虐的ないい振りで特徴的だった他はそれ程目立った実績はありませんでしたが、「自らの辞任で政局を作っていく政治家」として、歴史に名を残すこともあり得そうです。

 ところで、小沢代表の立候補に必要な25人の推薦人に私も含まれています。私が推薦人の一人になったのは、「小沢代表の推薦人には、党内の色々なグループから幅広く、中堅・若手の議員を出そう」という方針の下で、私が代表世話人の一人となっている勉強会「リベラルの会」から選ばれたためです。「リベラルの会」は、元々、「衆議院の当選回数4回以下の議員」等、中堅・若手しかいませんから、代表世話人でも、中堅・若手の議員なのです。

 党内の他のグループからは、複数の中堅・若手議員が推薦人になっているところもありますが、幅広いグループから推薦人が選ばれています。このことで、「10月解散、11月総選挙」の可能性が高いといわれている総選挙に向けて、党内が一致団結して進んでいくことが確認されたわけです。自民党総裁選挙だけでなく、これからの民主党の活動に注目していただきたいと思います。

 他方、福田総理の「大英断」又は「大戦略」で行われることとなった自民党総裁選挙ですが、これだけ多くの候補者が出馬して大いに盛り上がるであろう総裁選挙となることによって、福田総理の思惑とは逆に、解散の時期が狭まってしまったのではないかと感じます。つまり、自民党総裁選挙の実施直後でも自民党支持率が上昇せず、もし解散ができなかったら、後は、任期満了まで解散できずにズルズルといってしまう可能性が高まったと思います。

 いずれにしても、この時点での福田総理の辞任が「吉と出るか凶と出るか」が判明すれば、福田総理の名前が歴史にどう残るのかが決まることになります。