昨日のマスコミ報道で、岩国米軍基地への空母艦載機の移駐問題に関して、国から岩国市に対して、「岩国基地での民間空港再開を進める見返りとして、岩国市内にある愛宕山地域開発事業跡地での米軍住宅建設を了承して欲しい」旨の打診があったことが報道されました。この報道が真実であれば、以前、国が「空母艦載機の移駐を認めなければ、市役所建替え補助金は出さない」としていたことと似たような話が再発しそうです。

 この報道に対しては、岩国市当局は、昨日、「(報道の基となった)し内部の意見交換のメモ的なものを正当な手続によらずに入手した」等、取材や報道振りに抗議すると共に、「(報道の基となったメモに記載された)記事中の会議は、今後の様々なケースを想定しての内部の意見交換である」とし、「国や山口県から記事に掲載されているような打診や照会があった事実はない」として事実関係自体を否定する「報道資料」を発表しています。

 岩国市の「報道資料」とは別に、市の幹部から、メモの存在に関して、「民空、愛宕山、集団移転など7項目についての想定問答の会議をメモにしたもの」との説明はあったようです。しかしながら、本日の報道の中には、「7項目についての岩国市の意向確認が、国と県からあった」としているものがあるにもかかわらず、「報道資料」には、残念ながら、「7項目の検討項目」については何も触れられていません。

 他方、昨日の報道の中で、防衛省は、「民空再開は米側と合意済みであり、米軍住宅とリンクさせるということではない。」としながらも、「地元から買い取り要望があった愛宕山の土地は、どういう形で利用するかを調整中」と答えています。「調整中」という言葉の中には、岩国市の意向を打診していることも、暗に認めているのではないかと感じました。

 ところで、報道で指摘された内部の会議は、4月7日に岩国市長ら市幹部が出席して開催された「愛宕山地域開発等に係る市長協議」と、同月15日に開催された「市、県、県住宅供給公社の事務レベル協議」です。この2つの会議のタイミングに注目してください。実は、岩国市長と山口県知事は、同月10日に上京し、冬柴・国土交通大臣(当時)と石破・防衛大臣(当時)に面会して、民空再開を要請しています。

 この要請自体、同月15日に告示された衆議院議員山口2区選挙区の補欠選挙をにらんで行われたもの(実際、4月14日の自民党候補者の決起集会では、公明党幹事長が「自民党公認候補を勝たせてくれるなら、岩国の民空再開を与党の責任で実現させていただく」と発言しています。)のだと思っていますが、山口県の最高幹部の話によれば、「国土交通大臣、防衛大臣への要請行動は、岩国市側から県に持ちかけられたものであった」そうです。

 以上のことからは、次のことが想像できます。すなわち、「4月10日の上京・政府への要請に備えて、同月7日に「市長協議」が行われた。同月10日の防衛大臣への要請に際に、防衛大臣から色々な意向確認を求められた。同月15日の「事務レベル協議」で意向確認を求められた検討事項について協議が行われた。その後、岩国市の意向が確認されて、防衛省を中心として調整が進められている。」ということではないでしょうか。

 私としては、これから、防衛省に対して、「調整中」であるこの問題について事実関係の確認を行っていきたいと思いますが、岩国市としても、市民の皆さんに対し、事実関係をできる限り明らかにして、説明責任を果たすべきだと思います。特に、愛宕山地域開発跡地だけに止まらず、跡地周辺に岩国市が所有する野球場建設予定地までが米軍住宅用地になるとなると、市民の関心はもっと幅広いものになると思われますので。