本日、福田総理は、自民党の役員人事と内閣の閣僚人事を行いました。両方の人事共に、昨年安倍総理から引き継いだ時に比べて大幅な異動となりました。しかし、「福田カラー」がどのように出ているのかと言えば、福田総理が目指す「国のかたち」を示すというより、むしろ、手堅い人を選任することによって、実務的な実績を上げていこうという「政権の姿勢」を示したと言えそうです。
以下、思いつくままに、今回の福田人事について、若干裏読み的なものではありますが、私の感想を述べたいと思います。
先ず、今回の人事と解散総選挙の関係についてです。今回の人事は、「福田総理の手による衆議院の解散」を目指したものではないか、と思います。福田総理は、「内閣がシッカリと仕事をすれば、内閣の支持率は上昇するはずだ。」と考え、実務的な実績を上げられそうな陣営の内閣を作って、実績を出すことによって支持率を上げて、その上で、自らの手で解散・総選挙に臨もうとしているように思います。
また、麻生氏を幹事長に選任したことも、自身（福田）の後任として最有力視されている人を、党の最高幹部に取り込むことによって、その動きを牽制しようとしているように思います。麻生氏も、福田総理のその思いは判っていると思います。それにもかかわらず幹事長職を引き受けたのは、福田総理の「次」を狙う政治家として、出番の多い幹事長ポストで自分（麻生）自身の存在をアピールすることの重要性を感じているからなのではないでしょうか。
次に、今回の人事の内容全体の印象です。マスコミや国民受けする華やかさ（「サプライズ」）よりも、実務能力のある手堅い人を党役員や閣僚に配置して実績を上げることで、支持率を上げていこうとしていると思います。具体的には、閣僚として既に経験のある人など、その政策分野に通じた人を閣僚に選任しています。福田総理自身、自分の内閣を「安心実現内閣」と評して、そのことを示していると思います。
次に、財政再建派の政治家を財政関係主要閣僚に配置したことです。歳出削減に係わる財務大臣、消費税率引上げに係わる経済財政担当大臣、道路特定財源の一般財源化に係わる国土交通大臣に、財政再建を重視する政治家を配置しています。このことで、福田総理が目指すものが見えてきますが、逆に、この顔ぶれを見ますと、財務省に係わりの深い人ばかりで、財務省主導の財政運営が行われることが懸念されると思います。
次に、今回の閣僚人事は、公明党にかなり配慮したものとなっていると思われることです。公明党がこれまで配分された閣僚ポストは、厚労大臣、国土交通大臣ですが、今やそのポストは、与野党が激しく対立する政策分野となっています。逆に、環境分野は、そのスピード感は違うとしても与野党が同じ方向性を向いている政策分野で、国民的にも人気のある分野です。にも拘らず、その閣僚ポストを公明党に譲ったのは、かなりの譲歩であったと思います。
公明党は、最近、解散・総選挙を巡って、①解散の時期を「年末から来年年始にすべきである」と主張したり、②インド洋に自衛隊艦船を派遣するテロ対策特措法の延長法案の衆議院での再議決に消極的姿勢を見せたり、③総選挙の結果として自民党との連立政権に固執しないことをほのめかしたりしています。そのため、福田総理としても、何とか、公明党を連立政権に留めるためには、「環境大臣を譲る」という譲歩が必要だったのではないでしょうか。
最後に、安全保障に関する閣僚人事についてです。安全保障に係わる閣僚は、外務大臣と防衛大臣ですが、今回の人事では、両大臣共に、山口県選出の国会議員です。外務大臣は留任ですからともかくとして、防衛大臣は、新入閣の林芳正・参議院議員となりました。林議員は、参議院で外交防衛委員会の委員長としての経験があるとは言え、彼自身の安全保障政策の考え方は国会議員の中でもあまり知られていないように思います。
それにもかかわらず彼が防衛大臣に選任されたのは、①「ハト派」と言われた宮沢喜一・元総理に由来する派閥の出身であること、②「同盟関係」にあると言われる米国の政治家との交友関係が深いこと等のほかに、山口県・岩国市に関係の深い多くの地元対策があるためではないかとも想像されます。
具体的には、①岩国市内の愛宕山開発（米軍岩国基地の沖合い移設のための土砂の搬出を行って宅地造成をした開発）で山口県・岩国市から開発した土地の買取を防衛省が求められていること、②岩国飛行場の軍民共用化など、空母艦載機の岩国基地移駐を巡っての問題が山積していること、③空母艦載機の夜間離発着訓練施設を岩国基地に作らなければならない事態が今後予想されること等があります。
以上、裏読み的感想を述べさせていただきましたが、新しい自民党役員、福田内閣閣僚が決まったことから、いよいよ、民主党の代表選挙、そして解散・総選挙へと関心が移っていくことになります。