モワッ
生温かい空気が密封された朝の満員電車
その場その時に遭遇してしまうと
朝っぱらから電車の中の乗客達で小戦が始まる
我慢できずに密かに放たれたか
攻撃を仕掛けるかの如く遠慮なしに放ってきたのかは定かでない
車内の空気を乱したいか
己の腹中にひしめく空気を尻の穴から解き放つ輩に遭遇する事がある
その気体が放たれた数秒後
半径２～３メートル圏内の人間は悪臭の餌食となり
皆一斉に眉間にシワを寄せ始め
周囲の人間全てを敵とみなす
周りにいるどの人間が放屁したのかなど判別する事は不可能に近く
周辺の人間達の間で心理戦が繰り広げられる
お前がやったんだろ？
おいおい臭えな
俺じゃねえ
そんな顔して本当はお前なんだろう？
ちげーよ こっち見るな
等々
老若男女問わず無言のまま視線で交わされる会話は様々だ
だが結局は容疑者を特定する事など皆無に等しいため
眉間にシワを寄せ合っている己らの肺呼吸という方法で
誰が放ったかも分からない悪臭を浄化していく以外に解決法はない
ただこの心理戦には
最後までシラを切り通し
「本当は俺（私）の仕業だ」
と
勝ち誇れる勝者が一人いる事だけは間違いない