イランで戦争が始まって2カ月近く。普通に考えれば「地政学リスクで株は下がる」ものだ。ところが現実はどうか。世界の株式市場は過去最高値に向けて力強い上昇基調にあるというのだから、驚き以外の何物でもない。

「戦争下でも米国株が上がる5つの理由」

ブルームバーグの記事では、投資家たちの強気なスタンスを支える5つのポイントが整理されていた。

1つ目は「不透明感はピーク越え」だ。

戦争が始まった瞬間のパニックはどこへやら。市場はもはや紛争をおおむね織り込み済み。外交解決への期待感がむしろ強まっている。金融市場という生き物は、わからないことが最大のリスク。ひとたび最悪のシナリオが見えてくると、「あとは知れてる」とばかりに動揺が収まるのが常だ。

2つ目は「押し目買いの定着」だ。

少し下がれば買う。この行動パターンが市場に染み込んでいる。地政学ショックで一時的に下落しても、それを「チャンス」と捉えるマネーが底堅さを支えている。いわゆる「ディップ買い」習慣が、売り一巡後の回復を加速させるメカニズムが働いているわけだ。

3つ目は「緩和された原油ショック」だ。

エネルギー供給の混乱は確かに起きている。原油価格も上昇した。しかし多くの投資家が恐れたような「広範な経済停止」という最悪の事態には至らなかった。一部の新興国で深刻な不足は見られるものの、世界経済全体を麻痺させるほどの打撃ではないと市場は判断している。結果として、インフレ懸念が過度に高まる前に落ち着きを取り戻した。

4つ目は「堅調な企業業績」だ。

結局のところ、株価を決めるのは企業の稼ぐ力。戦争の影がある中でも、多くの企業がしっかりと利益を出している。地政学リスクよりもファンダメンタルズに焦点を移した投資家たちは、数字の強さを見逃さなかった。

5つ目は「AI株の復活」だ。

これは日本市場にも直結する話だ。人工知能関連銘柄への資金回帰が鮮明になっている。半導体、データセンター、AIインフラ—これらのテーマは戦争ごときでは熱が冷めない。むしろ、他のセクターから資金を吸い取るかのような勢いで再び主役の座に返り咲いた。

これらの要素が組み合わさり、開戦当初のドル上昇分もほとんど吐き出した。為替市場でさえ「最悪の局面は通過した」と判断している証左だろう。

日経平均6万円—歴史的瞬間の裏側にあるもの

また、ここにきて日経平均も一時的に初めて6万円の大台に到達した。米国とイランの停戦協議延長がリスクオンムードに拍車をかけ、AI・半導体株がけん引役を買って出た構図だ。

ただし、この瞬間をどう評価するかは識者によって意見が分かれる。ここからはロイター記事に登場する専門家たちの声を拾っていこう。

SMBC信託銀行の山口真弘氏は警鐘を鳴らす。NT倍率(日経平均とTOPIXの比率)が過去最高の16倍となっており、物色の偏りが極端だと指摘している。半導体やAIへの期待があまりに行き過ぎており、いったん調整が入ればその後は深い下落になりかねない。さらに企業決算では、中東情勢の緊迫化や原油高を背景に保守的な見通しが示される可能性もあり、日本株全般としては上値の重い展開が続きそうだと述べている。

一方、松井証券の窪田朋一郎氏は「K字型相場」という表現で現状を捉える。AI・半導体やデータセンター関連はぐんぐん上昇する一方、イラン情勢の悪影響を受ける業種は伸び悩む。実に二極化がはっきりしている。原油高はすぐには収まらず、実体経済への悪影響リスクもくすぶる中で、この二極構造はしばらく続く可能性が高い。それでも同氏は日経平均6万2000円程度までの上値を想定している。

これに対して、りそなホールディングスの武居大暉氏は楽観的だ。短期勢の利益確定売りは出ているが、業績のいい銘柄が買われている以上、必ずしも過熱感があるとは言えない。むしろ内需株への悲観的な見方は杞憂に終わる可能性があり、その場合内需株も再び上昇し、指数は一段高もあり得るとの見方を示している。

まとめ—楽観と警戒の間で

上記の3人の識者の見解から浮かび上がるのは「AI・半導体という狭い領域に過度に偏った上昇」への警戒と、「それでもなお上値を追う力」の両方だ。戦争という異常事態がむしろAI投資の重要性を際立たせたという逆説的な構図も見え隠れする。

原油価格の行方については注意が必要だ。米国とイランの停戦が実現しても、ホルムズ海峡の不安定性は続く可能性があり、銘柄によっては原油高の悪影響が長期化するリスクがある。

いずれにせよ、これからの決算発表シーズンが正念場だろう。そこで示される企業の見通しが、現在の株価水準を正当化するものなのか、それとも「行き過ぎ」を証明する材料になるのか。戦争下の株式市場という前代未聞のシナリオの行方から、しばらく目が離せそうにない。

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