中東の火薬庫が再びくすぶり始めた。

イランがホルムズ海峡の再封鎖を通告し、レバノンでは停戦にほころびが生じている。そんな緊迫した状況下で、日経平均株価は4月16日に終値ベースで5万9518円と史上最高値を更新した。週末の17日は利益確定売りに押されて5万8475円に反落したものの、地政学リスクという分厚い雲をものともしない上昇基調にある。

なぜ、こんなに強いのか。

答えのひとつは「日本企業のガバナンス改革」にある。マネックス証券のチーフ・ストラテジスト広木隆氏の分析を手がかりに、その実像を掘り下げていこう。

「岩盤」がついに動き出す

これまでの株式持ち合い解消は、大企業間の取引や金融機関の大口売却が中心だった。しかし、いよいよ本丸に足を踏み入れた。地方や中小規模の企業といった「岩盤」が動き始める気配が濃厚だ。

その典型が、愛知県地盤の中堅ゼネコン、矢作建設工業である。発行済み株式の2割を保有する「安定株主」だった銀行など13社に自ら働きかけ、2025年2月に持ち合い解消を決断した。同時に株主資本配当率(DOE)を5%以上とする方針を打ち出し、株主還元を強化。その結果、株価は1年あまりで1.7倍に跳ね上がった。足元では中東情勢の緊迫で一時売りに押されたものの、「機関投資家からの問い合わせが相次いでいる」という。市場の関心の高さがうかがえる。

アクティビストとの対話が生んだ「気づき」

安定株主を失うことは、すなわちアクティビスト(物言う株主)が参入するリスクを伴う。しかし、それを成長のきっかけに変えた企業もある。

自動車部品のエクセディ。2024年、筆頭株主だったアイシンが全保有株を売却し、3割を占める安定株主を失った。直後、旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンスなどが1割超を取得し、大株主に名を連ねた。

経営陣はこの変化を拒まず、アクティビストを含む株主との対話を徹底的に強化した。自己資本の圧縮や株主還元などバランスシート改革を断行。持ち合い解消前には2%台に低迷していた自己資本利益率(ROE)は、2025年に6%まで回復。株価は2年あまりでほぼ2倍になった。

同社幹部はこう語る。「自助努力のみで変革は容易でない。ファンドや取引関係のない異業種の株主との対話は、気づきや健全な緊張感を与えてくれる」。対話の内容は経営会議や取締役会で共有され、全従業員を対象とした株式付与制度も導入された。企業価値向上の意識が社内全体に浸透しつつある。

「次の候補」を探る投資家たち

市場の目は、すでに次のターゲットに向かっている。

野村証券の中川和哉ESGチーム・ヘッドは「政策保有株の売却が遅れている企業」をリストアップし、3月末にアジアで投資家向けに説明したところ、関心は非常に高かったという。これから解消する余地が大きい銘柄への期待が、具体的な資金流入に結びつき始めている証左だ。

制度も投資家も厳しくなる

この流れを後押しするのが、制度の強化である。

金融庁と東京証券取引所は2026年4月10日、企業統治指針の改訂案を公表した。企業が自社の株式を政策保有株として保有する会社に対して「売らせない圧力」をかけることを禁止する記述を、強制力の高い「原則」に格上げしたのだ。

投資家側の姿勢も厳格化している。野村アセットマネジメントは議決権行使基準を改定し、政策保有株が投下資本の15%を超える企業に対しては社長などの再任に反対する。従来の基準は20%だった。三井住友トラスト・アセットマネジメントも、純資産対比で20%以上を「過大な保有水準」とみなすスタンスを明確にした。

スピード感が問われる時代

ただし、変革のスピードには課題も残る。

住友不動産は2025年、2035年3月期までに政策保有株や純投資の上場株式を4000億円縮減する方針を打ち出した。しかし、米エリオット・インベストメント・マネジメントからは「売却に10年を要する計画はあまりにも長期だ」と不満の声が上がる。市場の期待と企業の実行速度のギャップが、ここに如実に現れている。

中東の霧の中で

資本効率の悪い政策保有株の売却は、保有企業の株価ディスカウント解消だけでなく、売られる側の企業にとっても変革の好機となる。

ホルムズ海峡の再封鎖やレバノン情勢の緊迫化という不透明要因は依然として残る。しかし、だからこそ、ガバナンス改革という確かな地殻変動に支えられた日本株には、一歩先を見据えた投資家の資金が流入し続ける余地が十分に残されている。

市場のセンチメントは中東のニュースに一喜一憂するだろう。だが、そのたびに目を向けるべきは、企業変革という本質的なドライバーがまだまだ加速の途上にあるという事実だ。

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