―――どこからかやって来た小さな子供。
その子は、何度も遊具の方を振り返りながら、近付いて来た。
賑やかに遊ぶ子供たちの”輪”に入る術を知らないような、俯きがちな顔で。
やがて、何かを諦めたように樹の陰まで来ると、ゆっくりと腰を下ろした。
誰からも忘れられたような、一人ぼっちの子供。
《きっと弱虫だから、誰とも遊べないんだ》
――そう思いながら見ていた。
ふいに
小さな手が差し出された。
空っぽだった両手を持て余していた俺に向かって それは真っ直ぐ伸びて来た。
何かを欲しがるように。
何かを捧げるように。
初夏の光の中で、鮮やかに浮かび上がったのは、何処か遠くに心を置き忘れたような瞳。
ドキドキした・・・
見つかったのかと思って、ドキドキした。
・・・そして
それとは 違う意味でも
ドキドキしてた・・・
男が近付いて来て、その子を抱き上げた時 嫌な予感がした事は確かだった。
最初は、普通に可愛がっているように思えた手が、おかしな動きを見せ始めた。
もしかしたら、ヤバイんじゃないか、と思った次の瞬間
俺は大声を上げながら、その子の元に飛び降りた――。
「――――可哀相な俺の願いを、神様は聞き届けてくれて・・」
真剣な顔で聞いている貴方を見ていると、少しだけ後ろめたい気がしないでもないけれど。
「とても可愛い子を、この手に与えてくれたんだ・・」
「・・・・・・・・そう・・・」
「それに、神様は優しいから」
目の前の人に意地悪する事も、お許し下さるだろうか。
「俺の、願い事に”おまけ”まで付けてくれて」
「 ・・・? ・・・おまけ・・?」
「その子はとても可愛かったけれど」
―――そう、とても可愛かったんだ・・・。
ぼんやりと定まらない瞳を、自分だけのものにしたいと思ったくらい。
「すごく、泣き虫で・・」
「・・・・・ユノ・・」
「すぐに、目から雨が降るんだ・・」
貴方を、怒らせたり泣かせたりしても、反省はまるで出来そうもない俺だけど。
「こんな泣き虫は俺が守ってやらないと、って思ったんだよ」
「・・・・・・・それ・・もしかして・・僕のこと・・?」
「他に誰がいるの?」
膨らんだ頬を突ついて、余計に怒らせてみたりもして。
「貴方以外に誰がいるの? ジェジュン?」
「・・ユノ・・ いじわるだ・・・」
「意地悪だけど、好きでしょ?俺が」
《さっきの告白は、しっかり胸に刻んでおくからね》
《それに、俺が意地悪するのは貴方だけだよ?》
そんな戯言を並べてやると、膨らんだ頬が美味しそうな色まで付けてくれる。
食べたい気持ちのままに唇を寄せても、逃げないのが貴方の返事だと勝手に思う俺の前で。
「・・・・・好き・・・だけど・・・」
甘い匂いはあの時と同じだけど、時間はたっぷり流れているから―――
「・・・あんまり・・苛めないで・・・」
柔らかな感触を確かめていた俺は、もう小さな子供じゃなくなった貴方にしっかりお返しをされたんだ・・・。