バタン
・・・・・
玄関のドアが乾いた音を響かせる。
耳の奥に反響した音を閉じ込めた後でジェジュンは強張る身体からゆっくり力を抜いた。
ユノの姿が見えなくなったら泣いてしまうと思った。
身体は寒気が止まらないみたいに震えているし、何より自分が口にした言葉で
ユノを怒らせてしまったのが解っているから。
それでも涙が零れ落ちる事はなかった。
一人になった途端、感情が麻痺したみたいに固まってしまっていた。
終わりにしようと思って言ったわけじゃない。
ただ、心の中に浮かんだままの想いを口にしただけだ。
いつかユノが気付く前に自分から教えておきたかっただけだ。
お互いの未来にお互いしかいないなんて、そんな都合のいい話がある筈はない。
だから
それが解っているから
一年に一度くらいはユノの本当の幸せを願ってもいいんじゃないか・・・・
-----そう・・・思っただけだ・・・
*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:
「雪だ」
部屋には誰もいないというのに、つい口に出た。
飼い猫のジジがその声を聞きつけて《ニャア》と短く鳴いた。
「あっは・・お前、返事をしてくれたの?」
いつの間にか足元に擦り寄って来たグレーの身体を抱き上げて柔らかい毛並みに唇を寄せると
嗅ぎ慣れた匂いが鼻先をくすぐる。
「ジジ・・・ユノ、帰っちゃった」
怒ったかな・・・怒ったよね・・・どう思う・・?
もちろん返事を期待して話し掛けている訳ではなかった。
言葉にする事で少しでも重苦しい胸のつかえが取れはしないかと
虚しい期待をしてみただけだった。
「ユノも大人になったよな・・・ジジ・・」
少し前までだったら
”どうしてそんな事を言い出したんだ!”と、理由を言うまで許して貰えなかっただろう。
曖昧さを嫌うユノの性格は、時に激しいくらいジェジュンを責める時もあった。
それが最近ではすっかり落ち着いてきた。
ユノが自分との間に少しだけ距離を置いている----そう感じるほどに。
「ユノは家族の健康を祈るんだってさ・・」
----あの鈍感男
《今までだって一度もオレの事を祈るって言ってくれた試しがない》
ユノが自分の事で祈ってくれる事といえば、【メンバー】としてだけだ。
彼はメンバー全員の事を祈るから、その中に自分も含まれているだけ。
・・・でも
・・・・
さっきのは嬉しかったな・・・・
《---家族って、お前また猫を増やすつもりか》
「・・・・・だってさ、ジジ・・ ユノはオレとジジを将来自分の家族にしてくれるつもりなのかな?」
ウソでも嬉しいかも・・・ねぇ・・ジジ・・
鈍感のくせにオレを喜ばせる事をなんの計算も無しに言えるのはユノだけだ。
----それに
ユノはウソをつかない。
だから
・・・・
だからこそ
オレが足枷になっちゃいけないんだよね・・・ジジ・・
つづく