夢の中で繰り返される子供の時間はいつも呆気なく幕を下ろすんだ。
弱虫だった僕に出来た事といえば、どこかへ連れて行かれる少年の姿を見つめているだけだった。
助けてくれた相手に手を差し伸べる事も出来ずに、笑って手を振る少年をただじっと見ている。
涙をいっぱい浮かべた瞳が彼の後姿をぼやけさせるのを感じながら。
罪悪感に似た思いは、いつまでも癒えない古い傷のように心の深い場所で痛んだ。
捕まったあの子はどうなったんだろう。
どこからやってきた子供だったんだろう。
どうして僕を助けてくれたんだろう。
あの時、あの子と二人でどんな話をしたんだった・・・・?
目覚めたいのに夢の時間は終わらない。
身体に巻きついた腕があと少しだけ弱かったら、夢から覚めたかもしれないのに。
力強い腕に守られた心は記憶の底まで辿り着いて、忘れかけていた少年との時間に彷徨っていた。
僕がユノみたいに強ければ、きっとあの子を助けられた-------
「ここ気持ちいいな」
樹の陰に二人で身を隠すようにくっついて座ると、屈託のない声が話し掛けて来る。
どんな言葉を返せばいいのか迷っているうちに何も言えなくなってしまう僕を気にする様子も無くキラキラした眩い光を
浴びながら。
「・・・・見つかってしまわない・・・・?」
追われてる、なんて物騒な事を言っていた割には悠長に欠伸なんかしている少年に声を掛けると”やっとこっちを向い
たな”とでも言いたげな顔で笑う。
その顔を見ていると、今日初めて会ったばかりの少年の隣りにもう少しだけ一緒に居たくなった。
誰かの傍にいたいなんて初めて芽生えた感情に戸惑いながらも、少年を繋ぎとめておく術を持たない自分に歯痒い思
いをしながら、僅かしか持ち合わせていない言葉を懸命に探したりしていた。
助けて貰ったお礼をまだ言ってない事に気がついたのはその時だった。
それと同時に下手にお礼なんかを言ったら、今しがた味わった惨めな思いを再び思い起こしそうで言い出す事を躊躇
ってしまう。
それでも自分の為に怪我までした少年に何か言いたかった。
どんな言葉で感謝の気持ちを伝えればいいのか判らずに何度も噛み締める唇に、少年の視線がじっと注がれている
事に気がついたのはその時だった。
「お前、何か甘い匂いがする」
クン、と鼻を鳴らす仕草をした少年が顔を近付けて来た。