随分前で彼女にどこで出会ったか忘れてしまいましたが、「あなたも宝石の仕事を続けていれば石の力がわかってくる」と言われた言葉は今でもよく覚えています。

一見すると下町の商店街に居そうな庶民的な雰囲気の人です。年の離れたご主人が体力的に無理ができないので、彼女が変わって世界中を回って宝石を仕入れて卸しています。

アメリカのアリゾナ州にあるツーソンという町で開催されるミネラルショーはとても大掛かり。宝石はもちろん、鉱物、恐竜の化石まで、石なら何でも売っています。

いくつかの会場があり、それらをつなぐ道の傍にはトラックが何台も店開き。車で寝泊まりしながら会場を回って、最終日にはその車も石に変えてしまう石好きが世界中から集まります。

私も行きたかったのですが、占いもする友人から「散財して帰国できなくなる」と言われ、身に覚えがあるので断念しました。

彼女も現地でレンタカーを借りて、西部劇に出てくるような道を回るのだそうです。そこで見つけた石を見せてくれました。

シジミくらいの大きさの貝の形をしたオパール。オパールとしてはさほど品質が良いようには見えません。「これは貝の形にカットして売っているんですか?」私が不思議に思っていると、彼女は私が想像すらしていなかったことを口にしました。「これはオパール化した貝の化石なのよ」貝が土底に沈み、貝殻が溶けて貝の形の空洞になったところにオパールの成分を含む水が少しづつ長時間しみ込んでできたもの。白亜紀の地層から出ることが多い、と聞くと地学の授業を受けているよう。化石と宝石、今まで結びつかなかったものが頭の中でつながった私は興味を持って、いろいろと調べてみました。オーストラリアの博物館には恐竜の骨の一部がオパール化した物や、カタツムリがそのままの形でオパール化したものが展示されていると判明。

元々恐竜が大好きな私。「ジェラシックパーク」はシリーズ全て見逃しませんでした。首長竜のひれがオパール化してるなんて、気の遠くなるような時間がもう一度恐竜を輝かせてくれます。べレムナイトという白亜紀末に絶滅した古代のイカは身体の背部から先端にかけて鏃型の殻をもっていました。その殻がオパール化しやすく、数も多いので市場に出回ることもあるのだとか。

私は彼女に連絡して、「もし見つけたら購入して持って帰ってほしい」と伝えました。

それから何年かして「ツーソンから帰ってきた」と彼女から連絡がありました。ワクワクしながら待ち合わせ場所へ。

思っていたよりも多くの化石をテーブルの上に広げてくれました.

遊色効果の具合がどれも違い、とても選べないと困っていると「あなたのために買って来たんだからみんな持って行ってもいいよ」

彼女の尽力に感謝して足早に帰宅し、魚竜が泳いでいた古代の海にダイブ。

しばらくして、このロマンをジュエリーにして皆に伝えたいと思い始めました。ジュエリーにするには研磨せざる負えません。

細長い鏃の先のような立体的な形を生かしてネックレスに仕立てました。すぐに購入者が現れ、私は古代の世界へ誘ったものと思っていましたが、「オパールの色が気に入ったから」と彼女は現代のデパートに居ました。

確かに興味のあるところは人それぞれ、接点を見つけていくのがデザイナーの仕事なのかな。