以前,本でドイツのイーダー・オーバーシュタインが宝石研磨の町として紹介されていて、興味を持っていました。小さな町で英語が通じにくいという事から行くのをあきらめていましたが、ドイツでも宝飾展示会があることがわかりました。
調べてみるとミュンヘンの近くらしい。インターネットで会場から近いと思われるホテルを予約。会場があるのはインホルゲンタ、電車の路線図でみると終着駅です。予約したホテルには英語を話せる人はいなくて、レストランも開いていません。私は一言もドイツ語ができず、明日はホテルを替わろうと決心して、空腹のまま就寝。
展示会はやはり、カットが 素晴らしい石が多く、デザインも斬新で、同じ国際宝飾展示会でも開催国によってずいぶん違うことを実感しました。
素材として興味をひかれたのは、巻貝に指が入るくらいの穴をあけ、上部をカットして中の渦巻きが見えるようにしてあるリングでした。貝の色や模様はそのままで自然を楽しむスタイルです。
見ているといろいろなアイデアが浮かんできて、日本へ連れ帰りました。
こういう素材は安っぽくなりがちなので,ジュエリーにするにはダイヤを18金で貝の渦巻きに合わせて留めました。
我ながら個性的で目を引くリングができました。夏の催事にぴったりと自信を持って、デパートの担当者に見せました。
彼は「今回の催事の目玉になりますね」と喜んでくれました。
しかし、後日彼から暗い声で電話がありました。「ディオールの新作とすごく似ている。デパートでは取り扱えないので、引き取りに来てほしい」全くの寝耳に水でした。
そう言われるまで、私はディオールの新作を知りませんでした。急いで銀座のディオールへ行くと、確かに同じ様に貝を使ったリングがありました。価格は弊社の10倍。
「あーディオールのデザイナーさんもインホルゲンタに来ていたんだ。」同じ所で買った貝としか思えません。細工できるところは少ししかないので、どうしても似通ってしまいます。悔しいけれど、相手がディオールでは私の方がまねをしたと思われても仕方ありません。
ここは卑屈にならず、ディオールのデザイナーとレベルは変わらないと胸を張ることにしました。
資本金は違うけれどね。