山口君がバイトを卒業してしまったので、調理場の仕事を私は他の人から教えて貰うことになった。常勤するパートのおじさん一名・おばさん二名、そしてマネージャーの小林さんの四名である。調理場にいる大人では、小林さん以外は初対面だったのだが、山口君が在籍中に繋いでくれた縁で話は出来る様になっていた。
まず、パートのおじさん(仮名・草川 ハジメ)は、体格の良い独り者だという事だった。前職が魚屋さんだった事もあって、魚を捌くのが半端じゃなく上手かった。手の器用さとかの差では無かった。鮮やかな魚捌きは食欲が湧くものだと感じた。
切りたての刺身がホントに美味そうに並ぶバッタを初めて見た。目で味わうと言う言葉の意味を知れたのである。マルチに作業をこなせる人でもあり、作業の大半を教わった。男子が増えて嬉しいと言ってくれた。
そして、もう一人。魚を捌けるパートのおばさん(仮名・潮見 雅美)である。彼女の捌き方は、草川さんと同じように上手いとは言い切れなかったが、かなり手早くてその割にきれいなのである。イメージ的に主婦の料理人といった感じだった。
器用さという言葉は彼女にこそ相応しく、どちらかと言えば彼女はネタの扱いが上手かった。解凍し切り分けて、バッタに並べるその速さと見た目のきれいさはピカイチだった。
最後に、パートのもうひとりのおばさん(仮名・鬼山 弘子)は、接客が上手かった。電話での問い合せや注文、店頭での対応はこの人が一番だった。難点は気難しいという事だった。潮見さんよりやや年下だったが、接客が苦手な潮見さんをあまり良く思っていない様だった。
だが、ネタの扱いが得意で無かった事もあり役割で働いていた。仕事として割り切っているように私には見えた。パックに盛りつけられたお寿司のラッピングを手早くこなして、品出ししてお客さんへ届ける。ラップは熱で切れる仕組みだったので、小さな火傷は致し方ない。経験しないと分からないものでもある。
私はこうした得意分野を持つ方々を師匠にして自分に出来る事を増やしていった。先に言うと、草川さん、潮見さん、鬼山さんの特徴は私が後から書き足しているのは分かって頂けるだろうか。というのもいろいろな作業を教えて貰った時に、この師匠達の特徴を私は掴んでいったのである。
私は高校生だったので、刃物(包丁)は使わせて貰えず。魚の捌き方は、手が空いて居れば飽きるまで見る事が出来たし、ラッピングや接客も好きなだけ出来たのである。
それぞれの師匠の事は、社員食堂(母の食券で利用)などで他部署のパートの方々との話題にしてしまっていたのだが、それがマネージャーにまで届いていたのだそうな。。。
そうして数カ月後。実際に師匠達の特性は、繁忙期(イベント日)のフォーメーション(立位置)決めの面談の際にも有効に活用されたのだった。