映画「ドライブ・マイ・カー」(監督:濱口竜介、原作:村上春樹)をシネコンで観てきました。
自称「ハルキスト」を名乗る私。村上春樹作の同名の短編小説が映画化され、村上春樹自身がパーソナリティを務める村上RADIO(FM東京)でも「なかなかいい作品に仕上がっていると思うんです」と直々コメントしたのを聞いて、その時は「すぐに観に行かなきゃ!」と思ったのですが、実際には「観に行かないまま」でいました。
というのも、これまで村上春樹の原作を映画化した作品を過去2本、「ノルウェーの森」、「ハナレイ・ベイ」を観たことがあるんですが、その時の感想は正直言ってイマイチ。2度あることは3度あると言うので、「絶対観なきゃ」という気になれないでいたのです。
でも、一昨日のニュースで、この映画がアカデミー賞にノミネートされたと聞いて、にわかに「こりゃ観ないわけにはいかん!」と心変わり。現金なもので「かりそめにも、アカデミー賞を受賞してから観に行ったのでは、ハルキストの名折れとなる」と意を決したわけです。
ところでこの映画、短編小説を映画化した割には、179分という長尺の仕上がり。原作を下敷きにしつつも、原作には無い登場人物やストーリーも描かれているのですが、それはそれで、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しただけあって、重層的にストーリーが展開され、見応え十分。179分という時間の長さを感じさせませんでした。
それに、車の中のシーンが多いので、必然的にキャスト同士が向かい合う事なく、並んで横顔がクローズアップされ、それも長回しで撮影されているので、あたかも自分が車の中にいるような臨場感と緊迫感を感じさせる映像が印象的。
映画の内容については、ネタバレさせたくないので触れませんが、観終わった時の心情としては、ずっと心の底に澱(おり)のように溜まったものが、涙とともに洗い流されたような感じ。
村上春樹曰く、「なかなかいい作品に仕上がっていると思うんです」との言葉どおりの作品でした。