東京五輪が8月8日の閉会式をもって幕を閉じた.

日本人選手団の大活躍に心躍った17日間であったが,その余熱が冷めないうちに,自らの備忘録として雑感を書き留めておく.

 

まずもって,五輪閉幕から一夜明けて抱いたのは,「この大会が無事終了できてよかった」との安堵感だ.組織委員会や競技団体の一員として運営にあたった人達の顔が目に浮かぶだけに,彼らがどれだけ困難な状況に置かれ,常に緊張を強いられながら運営にあたったかを想像すると,心の底からお疲れ様と言いたい.

 

もちろん,まだパラリンピックが残っており,TOKYO2020が完遂されたわけではないが,オリンピックの競技そのものが大きな混乱なく終了できたことは,一重に大会関係者,ボランティア,そして選手の努力と協力の賜物であろう.

 

2013年9月ブエノス・アイレスで開催されたIOC総会で,TOKYO開催が決定された時,世界に対してアスリート達が思う存分力を発揮できる最高の舞台を東京に用意すると約束したわけだから,その8年越しの国際公約をきちんと果たせた事実は大きい.

 

しかし,その約束を果たすに当たり,こんな困難が待ち受けているとは,誰もが予想だにしなかったろう.

 

全世界的な新型ウイルス感染症拡大に伴い,なんと開会4ヶ月前に,五輪史上初の1年延期決定が決定され,それまでに準備してきたすべての段取りがリセットされる事態に至った.この時,現場は大いに混乱し,途方に暮れたであろう.しかし,やるしかないという使命感からリスケジュール作業が行われ,ようやく大会開催の目処が立ちだした頃,今度は相次ぐスキャンダルと国内の感染拡大によって,8年越しの労苦が水泡に帰す可能性さえ取り沙汰された.このように一度ならず二度までも,開催の危機に瀕しながら,よくぞやり遂げた!と称賛したい.

 

今後,今回の五輪の総括が行われ,それぞれの立場からポジショントークが展開されると思うが,「我々は約束を守るために最大限努力し,困難をはねのけてやり遂げる力がある」ことを世界に示すことができたことは,誇りに思って良いのではなかろうか?

 

また今回の五輪開催の評価は,きっと何年かした後に,明確になるであろう.それは,モニター越しではあったが,リアルタイムで五輪で活躍する選手の姿を見て,「よし自分も!」と夢を抱いた子どもたちの将来が証明してくれるはずだ.曇りのない純粋な目で,五輪で躍動する選手の姿に憧れ,「よし自分も将来は,世界で活躍したい」と夢を抱いてくれれば,今回五輪を開催した意義は大きいと思う.

 

また同年代の若手選手が新種目で大活躍する姿をみて,一人でも多くの若者が現状に満足せずチャレンジしようと思い立ってくれれば,それは希望の光と言える.

 

そして最後に,東京五輪に参加したすべての選手に対してエールを送りたい.一旦は落胆し,モチベーションを失い,不安だらけの中,よくぞ鍛え直し,五輪の大舞台に立ったと思う.まさにあっぱれ!

 

そしてその選手達から異口同音に発せられた五輪開催への感謝の弁を聞くにつけ,開催できて心からよかったと思う次第である.