収録後、瀬戸選手・南ちゃんと記念撮影

 

NHKスペシャル シリーズ TOKYOアスリート「競泳 私たちが“エース”だ」が10月5日(土)の午後9時から放映された。

 

その時刻、ラグビーWC日本対サモア戦が他局で放送されてたので、リアルタイムで観ていた人は少ないんじゃないかな~。かく言う私も、実は録画しておいて、日本戦が終わってから、追っかけ再生で観ました(笑)。

 

今回の番組作成にあたっては、試し撮りを含めて3日間もプールでの撮影が行われ、延べ20時間を超える映像収録が行われました。でも実際にどれくらい本番で使われるかは、出たとこ勝負で、観てみないと分からないことが多く、時には「丸1日撮影して30秒の露出」なんてのもザラなんです。そこで今回はいかに???とドキドキしながら再生ボタンを押しました。

 

実際の放映映像を観た第一印象は、「うちのプールがものすごくきれいに写ってる」という驚き!「そこかい!?」と突っ込まれそうですが、老朽化が目立ってお世辞にもきれいなプールとは言えないうちのプールが、照明と特撮効果で、ものすごく盛った映像になっててビックリ!やるなNHK!!

 

余談はさておき、今回のメインキャストは、先の世界選手権個人メドレー種目でで2冠に輝いた瀬戸大也選手と同3位の成績を収めた大橋悠依選手。男女エーススイマーの強さの秘密を探るというのが、番組の趣旨で、分析してみて改めて思ったのは、やっぱり一流選手はスゴイということ。

 

何がスゴイのかと言えば、瀬戸選手の場合、自分の「強み弱み」をきちんと把握していること。

身長174cmと、お世辞にも大きいとは言えない瀬戸選手が、2m近い選手を凌駕するためには、人と同じ泳ぎをしていては勝てないことを自覚し、独自の泳ぎを追求しているところがスゴイんです。

 

収録中のやり取りうけて、瀬戸選手に対しては、明るいキャラクターとは別に「理性のスイマー」との印象を持ちました。私が水中映像や推進力データを元に、瀬戸選手の泳ぎの特徴を解説した後、ご本人にどんな意識を持っているか尋ねると、本人はちゃんと理解していて、「意識してやってます」との返答。

 

たとえばバタフライの場合、「入水後直ぐに水をキャッチし、ハイエルバーを意識しながら手部+前腕で水を捉え、水を最後まで押すというよりは、前輪駆動車のイメージで、前へ前へと進んでいる感じで泳いでいるね」と指摘すれば、「まさにそれを意識してやっている」との返答。

 

同じくバタフライにおける2ストロークに1回の呼吸パターンについても、瀬戸選手は「しんどいことは承知の上で、抵抗の低減と推進力の向上を狙っている」と語っていましたが、ちゃんと分析データからも裏付けられており、理詰めで泳いでいることがよく分かりました。

 

 

 一方で、大橋選手は「感性のスイマー」というイメージを持ちました。どんなところが「感性」なのかと言えば、「どうやって抵抗の少ないフラッタスイムを身に着けたのか?」との問いに対して、「あまり力がないので、とにかく楽な泳ぎを目指していたら、知らない間に身に付いた」との返答。

 

 また、水中映像から人並み外れた足関節の柔らかさを指摘すると、「私の足、こんなんになっているのですか?」とのコメントが返ってくるなど、理詰めではなく、水中での自らの感覚を大切にして、繰り返し練習することで理想の泳技術を習得していったことが窺える。

 

 大橋選手の泳ぎの特徴は、とにかく無駄な動きがない究極の省エネ泳法を実践しているところ。TOKYO2020に向けては、さらに省エネ技術に磨きをかけるとともに、前半から積極的に仕掛けるレース展開ができれば、レース後半のしんどいところで省エネ泳法が活きてくると思われる。

 

 今回の番組制作を通じて、お二人の日本トップスイマーの映像分析やインタビューすることで、私にとっても多くの気付きがあった。「理性のスイマー」と「感性のスイマー」と、お二人の印象はやや異なるところがあったが、来年のオリンピックで優勝することを目指し、様々な重圧や痛みを乗り越え、前に進もうとするお二人の姿に心から感動を覚えた。二人ならきっと自分の夢を掴み取ってくれるに違いない。