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 学会が終わり,帰国の途につくことになった.また長い長い旅が待っている.その皮切りに,まずオーロ・プレットから空港のある町,ベロ・オリゾンチへと移動した.オーロ・プレットのバスターミナルからバスに乗り込み,2時間の行程である.途中,水晶の結晶のような六角柱をした奇石が次々に現れ,バスの窓越しに見送っていくと,秘境から生還する探検隊のような思いが募った.幾重もの稜線をバスはうなりを上げて超えていく.途中1時間,ほとんど人工物らしいものにはお目にかからない.あるのは,荒涼とした潅木の山肌を切り裂くように続く一筋の道だけである.

 1時間ほどすると,古ぼけた看板がちらほら目に留るようななり,うなりを上げる重機で根こそぎ森をなぎ倒し,道路を造成する工事現場に出くわした.赤茶色の大地がむき出しになり,痛ましい.オーロ・プレットで止まっていた時間が動き出し,現実に引き戻された瞬間だった.次第に人家がポツポツと道路脇の林に見え隠れするようになり,最後の難所とも言うべき坂をバスが喘ぎあえぎ越えて行くとと,眼下にベロ・オリゾンチの街が広がった.210万人が住む大都会である.

 およそ「都会」と言うのは世界中どこでも同じである.ビルが立ち並び,道路は車で溢れかえり,時間に追われる人々が交差点を行きかう.それに付いて行けなかった人々はホームレスとなり,道端で物乞いをする.....話は突然とぶが,私は物乞いをする人を見つけると,できるだけ「施し」をするようにしている.何も格好を付けているわけではない.いつ自分がそうなるか分からないと言う切実感からである.現状は「あちら」と「こちら」を隔てる塀の上を,綱渡りするごとく進んでいるようなもので,いつ「あちら」側に落ちるとも限らない.

 今日の宿はOthon Placeというホテルである.やや古いが25階建てで,最上階にはプールやバーがあり,さらに地下にはサウナやフィットネスルームもある.部屋もスイートタイプで1人で泊まる分には申し分なく,おまけに無線LANも使えて大変便利.眼前には緑豊かなムニンシパル公園が広がり,ショッピングセンターも至近距離にあって,ロケーションも最高である.私の部屋は15階にあるが,夜の眺めも50万ドルぐらいの価値はあるかもしれない.

 投宿後は,まずメールをチェックして,いくつかの雑用を済ませた後,遅れていた原稿を送付し,一段落して街へ出た.息子たちへのお土産を買っていなかったので,ショッピングセンターに出かけていろいろ物色したが,ハリウッドセレブ御用達で話題の"havaianas"のゴム草履(「地球の歩き方」の受ける売り)と地元サッカーチームのユニフォーム(カナリア軍団のユニフォームではあまりにもありきたり)を買った.

 ホテルに戻ってきた後は,運動不足を解消するために早速フィットネスルームを覗いた.実はプールがあると聞いていたので,真っ先に行ってみたのだが,アウトドアで,さすがにこちらの真冬に泳いでいる人もいなく断念した(泳いで泳げない水温ではなかったが,あほな日本人と思われるのも癪に障るので,,,ヤメ!).フィットネスルームといっても,マルチウェイトマシンが1台,エルゴメータが2台,トレッドミルが1台しかなく,至ってシンプルである.おまけにウェイトマシンのワイヤーが切れていて使えないとの事.まあそれでも無いよりはましと思って,エルゴメータで30分汗を流した.その後は同じフロアーにあるサウナに入り,これまで溜まりに溜まった老廃物を一気に排出した.

 サウナに入って極楽気分でいるところへ,マトボウというブラジル人が白衣を着てやって来て,話しかけてきた.内容を要約すると「お前は日本人か?日本人ならジーコを知っているだろう.ジーコはサッカーの神様だ.そのサッカー選手相手におれはマッサージしている.日本人ならマッサージ受けてみないか?」かなりむちゃな話の展開であるが,人のよさそうな感じだったので,マッサージを受けることにした.

 マッサージ中はマトボウがポルトガル語で質問するのに,私がスペイン語で答えるという,なんとも”アンニュイ”な感じで時間が流れた.「日本の”大統領”は”コイズミ”だろ」などと時事問題にも関心があるようで(私としては黙ってマッサージしていて欲しいのだが,,,),なかなかの人物.マッサージはオイルを使ったオーソドックスなものだが,確かに腕は良った.サウナで汗を流し,マッサージを受け,その後最上階のバーに移動し,夜景を見ながら生ビールを飲み,まさに至福のときを過ごした.
 
 旅の終わりに,随分良い思いをしたが,これからの長旅とその後に待っている現実を思うと,気が重くなる.それに日本に帰ると時間が取れないので,このブログもしばらく更新できないかもしれない,,,