鹿児島を出たフェリーは種子島を経由し、早朝屋久島へと到着する。

南国の4月といってもまだ寒く、山には靄がかかる。

雨が多く降る島、木がよく育つ島、、それだけの情報でよくもはるばるやってこれたと思う。

財布の中の残金はあと僅か、どうやって帰ろうかということよりも、

どうやって今日の食事にありつこうかという方が問題だった。

当然GH(ゲストハウス)やYH(ユースホステル)といった格安宿に泊まる余裕もすでにない。


りあえず島を一周してみることにした。自転車を借り、一日かけて島の反対側に行こうとしていた。

4月1日を過ぎてから、どこに行ってもほぼ観光客の姿はない。

周りの同級生は新生活が始まっているのに、自分は何をしているんだろうと考えさせられた。

当てもなく自転車をこぎ出して最初のカーブを曲がり切る時に、一人のおじさんと目が合った。

どこか自然体というか、観光客慣れしてるというか、どうにも優しい目に声を掛けたくなる。


「こんにちわ」
「おう、どこ行くんだ?」

「とりあえず、島一周してきたいと思います。」
「そのママチャリで行くのか?2日かかるぞ?」

「そうなんですが、他に何もやることも、できることもないので。」
「…。車で案内してやる。自転車うちにとめておけ。」

「え?お時間はいいんですか?」
「隠居の身だからね。OKOK!」

おじさんに乗せてもらい、3時間ほどで道沿いにある観光スポットをだいたい回りきった。

その間おじさんに色々質問されたがほとんど覚えていない。

ただ一つ「屋久島には何をしに来た?」という質問に自分が「山に行こうかと思います。」

と答えたのを覚えている。

ろそろ、もとのいた街に着くなぁと考えていると車は急に急な山道に入っていく。

しばらくして一軒の建物が見えてきた。脇を走る川からは湯気が立ち上っていた。

「ボウズ、風呂入っていくぞ」

その旅に出発したとき自分は髪を全て剃った。

屋久島についた時もまだまだ「ボウズ」だった訳だが、その意味の「ボウズ」ではなかった。

当時18歳、まだまだ子供だったんだな、とつくづく思う。


久島は多くの山を持ち、それに伴なう温泉も沢山ある。
有名なもので言うと「海中温泉」がある。文字通り海の中にある。
引き潮の時間だけ海中から出てくる。それを見計らって温泉に浸かる。
ちなみにここは男女混浴&観光スポットということで、なかなか入れたもんじゃない。

しかし、折角訪れて入らないのは勿体無いと思い、屋久島3度目の訪問の際に入ったことがある。
それは真夏での出来事。当然温泉も南国の日光でいつもより余計に熱い。
「そんなに長くは入っていられないな。」と思っていた時、車が止まる音がする。
あの時ほど、今ここに来るのが男性であって欲しいと願ったことはない。

大学生と思われるピチピチの女の子だった。。。
なかなか肝が座っており、男性が入っていることなどお構いなしにこっちへ向かってくる。
「あの、写真一緒にいいですか??」
いやいや無理だろ、と言うわけにも行かず承諾したところ、かれこれ10分。

ゆでダコとは正しくこんな心地なんだろうかと哀れみの気持ちさえ湧いてくる。

女の子が帰った後、這いつくばって温泉から出ると、また遠くで車のとまる音が!!
しかも今度の車は大きい!!観光バスか!!
標的を確認せずに、持ち物をかき集め海に一目散に逃げたのを忘れもしない。



ジさんが連れていってくれた温泉は素晴らしいものだった。

聞けば地元の人はだいたいそこの温泉を利用するそうだった。

久々の温泉であったことや、洗濯物を洗わせていただいたこともあって
おじさんは先に上がり涼んでいた。

私が上がるとおじさんに

「行く当てのない旅は、悩み始めた頃が引き際」

と声をかけられた。

どこかで分かっていたことを突かれてしまい、自分の足が崩れるのがわかった。

焦ってばかりで、座ることなく進んだ旅は1500キロの道に足跡を付けていた。

どこかすっきりした気がした。気持ちよかった。

「帰ろうかと思います。」

私がしばらく考えたあとおじさんはニコッと笑い、

「はるばる来たんだろ、山くらい登っていけ。とりあえず今日はうちへ泊まればいい」

今思えば、きっとお金が無いこと諸々全部ばれていたんだと思う。

自分は屋久島にそれから約3週間滞在し、その後に何故か沖縄にも行ったのだが、

その話はまた今度。。


れ以来屋久島へは毎年行っている。

相変わらず「たいした当てもない旅」に変わりはないが、
あの時あの場所で出会ったおじさんを訪ねて。

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どこかに行くのが目的の旅も最高!!
でも、誰かに会いに行く旅はもっと最高!!

                hideki