当社はマンションの大規模修繕や設備・電気工事などを幅広く請け負っている。30年以上にわたり、マンションリニューアル業界のトップランナーとして走り続けてきた。 マンションに使用されている建築材料や設備、機材の耐用年数はそれぞれ異なる。各種の修繕工事を場当たり的に行って経済合理性や居住者の生活利便性が損なわれる事態を避けるためにも、長期修繕計画の定期的な見直しが欠かせない。国土交通省が公表する「長期修繕計画作成ガイドライン」も、おおよそ5年ごとの見直しを前提としている。 しかしながらマンションの管理運営には、多様な価値観を持つ居住者間の合意形成が難しいといった特有の課題がある。そうした困難を乗り越えて長期修繕計画を見直すためのポイントとして、次の3つを提案する。 1つ目は、修繕予定の設備などの現地見学を行うことだ。長期修繕計画の策定を管理会社などに委託する管理組合も多いだろう。第三者が作成した計画を文字や数字の羅列としてみるだけでは、計画の内容を把握し、その妥当性を判断することが難しい。そのため管理組合や修繕委員会での議論に際し、現地を確認することを勧めたい。 2つ目はマンションのビジョンの検討だ。国土交通省が公表する前出のガイドラインでも、希望する生活環境とそれに必要な住宅設備や性能を検討する必要性が示されている。ビジョンは修繕をいつまで行い、いつ建て替えるかの判断にも影響する。検討の材料として、修繕と建て替えの工事項目や費用などを確認できる比較表が役に立つ。 3つ目は管理計画認定制度の活用だ。2020年のマンション管理適正化法改正に伴い、長期修繕計画の見直しなどを含む良好な管理運営が行われているマンションを、自治体が認定する制度が始まった。認定取得を通じて一定以上の基準を満たすマンションであると可視化することは、快適な住環境の確保と資産価値の向上に資するはずだ。 他にも当社のウェブマガジン「KENSO Magazine」では、マンションの修繕に関する多彩な情報を発信している。情報収集に役立てていただければ幸いだ。 建装工業 MR業務推進部長 吉田 秀樹 氏