マジすか学園G5☆序章Ⅲ☆ in 乃木坂46
─1年C組
新入生たちで
雑然とする教室で。
「絶望の…一秒前だったな」
顔を腫らして、机に頬杖をついている井上ナギに向けて
同じく顔を少し腫らした菅原サツキが、ラッパッパ四天王─遠藤さくらとの一戦をにこやかに、そう評した。
「これからだったのに…、あそこで、邪魔が入らなきゃ…」
「よく言うよ。ラッパッパ四天王のひとりと闘って、その程度で済んだのは、儲けモノだって。モデル級の顔が台無しだけどね」
肩をすくめるナギ。
見据える先は。
「あれが…ラッパッパか」
マジすか女学園の歴史に
連綿と受け継がれし
最強の喧嘩集団─吹奏楽部(ラッパッパ)。
「あんたと闘(や)り合った遠藤さくら級(クラス)、つまり四天王と呼ばれる人間が、あと三人いるんだよ。それ以上の怪物(バケモノ)もね」
「知ってるのか?」
「ある程度はね。わたしの情報網を舐めてもらっちゃ困るのよねー」
「ラッパッパのこと、もっと詳しく教えてくれないか?」
「そっか。もう、吹奏楽部(ラッパッパ)に入部して、仲良しこよしするつもりは、なさそうだね。それなら、『洗う部』にでも入る?」
真剣な表情を崩すことのないナギ。
「わかったわかった。そうだな。まず、あの喧嘩を止めに入ったのは、漆黒のスカジャンを受け継いだラッパッパ四天王のひとり、賀喜遥香。“雷の王”と呼ばれ、電光石火のスピードを持つと言う強者だ」
得意そうにサツキは続ける。
「残りの二人は、深緑(ダークグリーン)のスカジャン“野生児”与田祐希(ユウキ)。赤のスカジャン“降霊術師(ネクロマンサー)”伊藤理々杏(リリア)。それから、その上には、副部長の─」
「なあなあ、何の話ー?うちにも教えてやー。関西から来たばっかりやから、こっちのこと、ようわからんのよー」
前髪を、パッツンと切りそろえた
警戒心のない満面の笑顔を弾けさせ
新入生のひとりが声を掛けてきた。
「わたしの名前は、五百城 茉央(いおき まお)。やる気!元気!五百城ー!
なあ、たこ焼き食べへん?」
おもむろに、たこ焼きを取り出す茉央に、
ぽかんとするナギとサツキの前に、さらに、
「🎶窓もドアも〜開いて〜る〜🎶」
突然、歌いながら踊り出す
ハーフ顔の少女。ミュージカル調。
「🎶なんて久しぶりなの〜🎶」
だんだんと、声量も上がり、気持ちが込められていく。
「🎶そう〜生まれ〜て〜はじめて〜🎶音楽に〜のり〜🎶わたしは、池田テレサ。一緒に踊りましょう」
緊張感の欠片もない
わちゃわちゃした空気が流れる。巻き込まれていく。
ナギは、こういう雰囲気が嫌いではなかった。ただ、この空間に、“彼女”がいたら良かったのに─と切実に思うのだった。
入学初日早々
ラッパッパ四天王と校庭で
一悶着を起こしたナギのことは、すでに、校内中に知れ渡っていた。
この教室には、もちろん、ナギ以外にも、マジすか女学園の“てっぺん ”を虎視眈々と狙ってる者もいるはずである。
それを、すこしも表面に出さずに──。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。
─吹奏楽部(ラッパッパ)部室
四人。
二人は派手に落書きされた壁際に
あとの二人は、テーブルを挟んで
座っていた。
奥には、部屋が、もうひとつある。
「どうして、止めたの?」
壁に寄りかかっている
遠藤さくらが、隣りの賀喜遥香を非難するように言った。
「それは、あのときにも言ったはずだ。ラッパッパ入部のための腕試し(テスト)はもう充分だ、とな」
「念の為に訊いておくけど、あのとき、わたしが、あの子を、完全に潰してしまうと思った?それとも…」
「それとも?」
「わたしの方が、負けていた…とでも?」
パシッ!
と、駒音高く、響く。
空気が一変する。
「王手飛車取りぃ!てへっ。ボクの勝ちだね☆」
アイドル顔の伊藤理々杏の勝利宣言に
相対するマネージャーの向井葉月は、顔色ひとつ変えずにいた。
テーブルの上には、将棋盤。
紫色のフード付きパーカーの葉月が、
「ところで、与田は、どうした?」
「どこかで、寝てるんじゃない?☆」
理々杏の
予想通り、与田祐希は、朝からずっと、桜の樹の上で、眠っていた。
「で、めぼしい新人は、いたのか?賀喜」
「中学で名をあげてた者たちは、ほとんど見掛け倒しで。ラッパッパにスカウトするような者は、いませんでした」
「そうか。そういえば、N中の“中西アルノ ”は、残念だったな。期待していたんだが」
その言葉に、賀喜遥香は、表情を変えずにいた。
「で、うわさの井上ナギは、どうだ?」
当然、今朝の出来事は、葉月の耳にも入っていた。
「面白いとは思いますが、どうでしょう…。入部するかどうかは…。
あとは、東京最大のレディース。Esperanza(エスペランサ)の元特攻隊長。池田テレサ。ですか」
「二匹のウサギを追いかけても、一匹も捕まらないってことにならないようにな」
そう言いながら、葉月は、
悠々と
王手を掛けられた駒を盤上から、取り除き、
逆に王手をかけた。
「プロ棋戦では、王手飛車をかけたほうが負けるということが往々にしてあるものだ」
理々杏が、頭をかかえる。
そのとき。
奥の部屋の扉が開いた。
凄まじいオーラを身にまとった
「美月。どう動く?」
ラッパッパ─No.2。
副部長─山下美月は、
葉月の問いに、
「無論。我々に、歯向かい、ラッパッパに入部しないということであれば─」
鋭く
冷たく
言い放つ。
「─叩き潰せ!徹底的にな!」
新入生たちで
雑然とする教室で。
「絶望の…一秒前だったな」
顔を腫らして、机に頬杖をついている井上ナギに向けて
同じく顔を少し腫らした菅原サツキが、ラッパッパ四天王─遠藤さくらとの一戦をにこやかに、そう評した。
「これからだったのに…、あそこで、邪魔が入らなきゃ…」
「よく言うよ。ラッパッパ四天王のひとりと闘って、その程度で済んだのは、儲けモノだって。モデル級の顔が台無しだけどね」
肩をすくめるナギ。
見据える先は。
「あれが…ラッパッパか」
マジすか女学園の歴史に
連綿と受け継がれし
最強の喧嘩集団─吹奏楽部(ラッパッパ)。
「あんたと闘(や)り合った遠藤さくら級(クラス)、つまり四天王と呼ばれる人間が、あと三人いるんだよ。それ以上の怪物(バケモノ)もね」
「知ってるのか?」
「ある程度はね。わたしの情報網を舐めてもらっちゃ困るのよねー」
「ラッパッパのこと、もっと詳しく教えてくれないか?」
「そっか。もう、吹奏楽部(ラッパッパ)に入部して、仲良しこよしするつもりは、なさそうだね。それなら、『洗う部』にでも入る?」
真剣な表情を崩すことのないナギ。
「わかったわかった。そうだな。まず、あの喧嘩を止めに入ったのは、漆黒のスカジャンを受け継いだラッパッパ四天王のひとり、賀喜遥香。“雷の王”と呼ばれ、電光石火のスピードを持つと言う強者だ」
得意そうにサツキは続ける。
「残りの二人は、深緑(ダークグリーン)のスカジャン“野生児”与田祐希(ユウキ)。赤のスカジャン“降霊術師(ネクロマンサー)”伊藤理々杏(リリア)。それから、その上には、副部長の─」
「なあなあ、何の話ー?うちにも教えてやー。関西から来たばっかりやから、こっちのこと、ようわからんのよー」
前髪を、パッツンと切りそろえた
警戒心のない満面の笑顔を弾けさせ
新入生のひとりが声を掛けてきた。
「わたしの名前は、五百城 茉央(いおき まお)。やる気!元気!五百城ー!
なあ、たこ焼き食べへん?」
おもむろに、たこ焼きを取り出す茉央に、
ぽかんとするナギとサツキの前に、さらに、
「🎶窓もドアも〜開いて〜る〜🎶」
突然、歌いながら踊り出す
ハーフ顔の少女。ミュージカル調。
「🎶なんて久しぶりなの〜🎶」
だんだんと、声量も上がり、気持ちが込められていく。
「🎶そう〜生まれ〜て〜はじめて〜🎶音楽に〜のり〜🎶わたしは、池田テレサ。一緒に踊りましょう」
緊張感の欠片もない
わちゃわちゃした空気が流れる。巻き込まれていく。
ナギは、こういう雰囲気が嫌いではなかった。ただ、この空間に、“彼女”がいたら良かったのに─と切実に思うのだった。
入学初日早々
ラッパッパ四天王と校庭で
一悶着を起こしたナギのことは、すでに、校内中に知れ渡っていた。
この教室には、もちろん、ナギ以外にも、マジすか女学園の“てっぺん ”を虎視眈々と狙ってる者もいるはずである。
それを、すこしも表面に出さずに──。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。
─吹奏楽部(ラッパッパ)部室
四人。
二人は派手に落書きされた壁際に
あとの二人は、テーブルを挟んで
座っていた。
奥には、部屋が、もうひとつある。
「どうして、止めたの?」
壁に寄りかかっている
遠藤さくらが、隣りの賀喜遥香を非難するように言った。
「それは、あのときにも言ったはずだ。ラッパッパ入部のための腕試し(テスト)はもう充分だ、とな」
「念の為に訊いておくけど、あのとき、わたしが、あの子を、完全に潰してしまうと思った?それとも…」
「それとも?」
「わたしの方が、負けていた…とでも?」
パシッ!
と、駒音高く、響く。
空気が一変する。
「王手飛車取りぃ!てへっ。ボクの勝ちだね☆」
アイドル顔の伊藤理々杏の勝利宣言に
相対するマネージャーの向井葉月は、顔色ひとつ変えずにいた。
テーブルの上には、将棋盤。
紫色のフード付きパーカーの葉月が、
「ところで、与田は、どうした?」
「どこかで、寝てるんじゃない?☆」
理々杏の
予想通り、与田祐希は、朝からずっと、桜の樹の上で、眠っていた。
「で、めぼしい新人は、いたのか?賀喜」
「中学で名をあげてた者たちは、ほとんど見掛け倒しで。ラッパッパにスカウトするような者は、いませんでした」
「そうか。そういえば、N中の“中西アルノ ”は、残念だったな。期待していたんだが」
その言葉に、賀喜遥香は、表情を変えずにいた。
「で、うわさの井上ナギは、どうだ?」
当然、今朝の出来事は、葉月の耳にも入っていた。
「面白いとは思いますが、どうでしょう…。入部するかどうかは…。
あとは、東京最大のレディース。Esperanza(エスペランサ)の元特攻隊長。池田テレサ。ですか」
「二匹のウサギを追いかけても、一匹も捕まらないってことにならないようにな」
そう言いながら、葉月は、
悠々と
王手を掛けられた駒を盤上から、取り除き、
逆に王手をかけた。
「プロ棋戦では、王手飛車をかけたほうが負けるということが往々にしてあるものだ」
理々杏が、頭をかかえる。
そのとき。
奥の部屋の扉が開いた。
凄まじいオーラを身にまとった
黒髪に
銀色(シルバー)のハーフのファーコートの美少女があらわれる。「美月。どう動く?」
ラッパッパ─No.2。
副部長─山下美月は、
葉月の問いに、
「無論。我々に、歯向かい、ラッパッパに入部しないということであれば─」
鋭く
冷たく
言い放つ。
「─叩き潰せ!徹底的にな!」