マジすか学園GX☆#3ー10☆
タイマン勝負の舞台である
高台にある神社では、
“てっぺん”
大島優子が、苛立ちを隠そうともせず、立ったまま、腕を組んで、向井地ミオンの来るのを
いまか、いまかと待ち構えていた。
『ったく、まだかよ...』
そこへ、
長い石段をゆっくりと
のぼってくる足音が、聞こえてきた。
反射的に、声を上げる優子。
『遅い(おっせー)ぞ、向井地!』
『優子さん』
だが、そこに、姿を見せたのは、タイマン勝負の相手である、向井地ミオンではなかった。
『サド?どうして、お前が』
真剣な眼差しで、優子に近づいてくるサドは、答える。
『向井地は、ここへは、来ませんよ』
『はあ?どうして、そう思うんだ?』
『わたしが、“嘘のタイマン場所”を、向井地に、伝えたからです。変更になったと言って...。今頃は、公園のほうで、来るはずのない優子さんを、待っていることでしょう』
『あん?なんだって、そんなことした!いったい、どういうつもりだ!』
詰め寄る優子。怒るのも無理はない。優子が、決めたタイマン勝負。それを、勝手に、邪魔するなんて。サドの真意が、優子には、まったく、わからなかった。
逆に、
サドが、尋ねる。
『下駄箱の手紙...、あれ...、優子さんですよね』
向井地ミオンへ、何度も、おくられた手紙。それは、喧嘩のアドバイスが記されたものだった。
『ちぇっ!なんだ、バレちまったのか』
悪びれもせず、
あっけらかんと笑う優子。
『向井地は、まだ、わかってないみたいですけど...、いったい、どういうことなんです?』
サドは、たたみかけるように、質問を続ける。
『それに...、わたしが、気づいてないとでも思ってるんですか?最近、優子さんの体調が、どこか、おかしいということに...、
だから...、いまだけは、喧嘩(タイマン)を...、やめさせたかったんです』
『サド...、やっぱり、お前(めぇ)には、かなわねぇな。そのことは、いつか、話しておこうと思ってたんだけどよ...』
神社の境内に腰をかけ、優子は、話を始めた。
最近、よく、眩暈(めまい)がすること。町の病院の検査では、はっきりとしたことまでは、わからない、ということ。大学病院で、精密検査をしたほうがいいかもしれないと言われたこと、
そして、向井地ミオンのこと。
『初めて、向井地を見て、何かが違うなって、思ったんだ。うまく、言えねぇんだけどさ、小(ちい)せぇくせに、頑張ってんな──って。なんだか、昔のわたしを見てるみたいで、な』
サドも、思っていた。どことなく、優子に似てるな、と。それは、体格だけということではなく。
『こいつは、きっと、強くなる。そう直感した...。そして、伝えたい、伝えなきゃいけねぇとも思った』
優子は、語る。
『向井地(アイツ)は、マジ女の“未来”なんだ。わたしたちが、卒業したとき...、「マジ」を継ぐやつが...、受け継いでいくやつが、必要なんだよ。途絶えさせちゃいけねぇんだ。それが、長年続く、マジ女の...、代々の“てっぺん”の役割でもある。この先、どんなやつが、あらわれるか、わからねぇが…、わたしには、あんまり、時間がないかもしれない...、そう思ったら、善は急げってわけじゃねぇけど...、このタイマン勝負が、きっと、向井地にとって、今後の糧になるんじゃないかと...、だから...』
『そう...だったんですか...』
そこへ(タイマン勝負に)至るまでの
優子の深い想いを、サドは知った。
『わたしは、間違ってるか?サド』
『いいえ。優子さんは、向井地に、マジ女の...、そして、ラッパッパの未来(あした)を...見たんですね。自分の身すらかえりみない、そんな優子さんに、わたしは、いつだって、ついていきますよ。何があっても。この世の果てまで』
『ふっ...ありがとな...、わたしに...、何かあったときは、頼むぜ』
それじゃ、公園のほう行ってみるか...。そう言って、立ち上がろうとしたとき、
サドの目の前で、
突然、優子が、ドサッと。崩れ落ちた。
『優子さん?』
意識を失った優子を見て、すぐさま、携帯電話で、緊急連絡をするサド。
.........
『優子さん!優子さんッ!』
その後、
サドは、救急車が、到着するまで、優子の名を叫び続けた。声が、かれるまで。