マジすか学園GX☆#1ー7☆
「お前…、いったい、何者(なにもん)なんや?」
ディーヴァの隊員のひとりが、大声で笑い出したり、妙な独り言をもらす異様な少女に、声をかける。
マジ女の生徒でもない、関西のヤンキーでもない、ましてや、ディーヴァの隊員でもない、見たこともないセーラー服を着た髪の短い少女に─。すると。
「大阪まで、来た甲斐が、ありました。まさに、『立直(リーチ)一発ツモ』って感じですね」
このタイミングで、ディーヴァ解散とは。僥倖この上ない。とでも、言わんばかりに。前田敦子やマジ女の生徒たちのちからにより、自らをディーヴァ(神)と名乗っていた組織は、消え失せた。
「話、聞いとるんか?」
「おお…、人間は、神の失敗作に過ぎないのか─。それとも、神が、人間の失敗作なのか─」
「もしかしたら、ヤバい奴やったんか…?」
「さらに、わたしの尊敬するニーチェ先輩は、こうも、仰りました。
『人生を危険にさらせ』─と」
「ホンマに、さっきから、何が、言いたいんや!」
「つまり─、ディーヴァ崩壊の後、混乱した大阪、いや、関西は、わたしが、まとめてみせるということです。この─わたし、『須藤リリカ』が」
「笑わせんなや!お前みたいな変なヤツに、そんなこと出来るわけないやろ!」
凄みをきかせるディーヴァの隊員に対して、
おっとりとした表情は、少しも、くずすことはなく、須藤リリカは、やわらかく微笑む。
「それでは、手始めに─」
深淵を覗き込むとき、深淵もまた、こちらの方に、目を向けているという。
「──まず、あなたから、潰してみましょうか?」
一方
東京では。
地下室──
「まぐれで、かわせたからといって、浮かれるなよ」
ツインテールの悪魔は、怒りを内に秘めたまま、笑う。薄く。
「ジュリナ!気をつけろ!そいつの拳は、直前で─、曲がる!」
ネズミの言うとおり、市川ミオリの悪魔のような拳は、避けたつもりでいても、必ず、顔面を捉える。それは、相手がよけたと思った瞬間、軌道を変えることの出来る、そう、まるでホーミング(自動追尾)ミサイルのように、悪魔の拳は、決して、狙いを外すことはないのだった。
それでも─。
「わかってる!」
ジュリナが、強くうなずく。
“てっぺん”になるために。
“てっぺん”を超えるために。
この少女は、いままでも、常に、大声で、叫んでいた。夢を─。
大声で、叫べば、叫び続ければ、いつか、叶う─と。
ジュリナの右拳が、市川ミオリの顔面を再び、捉える。
「こんな拳で、矢場久根が、堕とせると思うか!何が、“てっぺん”を超える、だ!矢場久根を、なめるな!」
同時に、
ミオリの拳が、ジュリナの腹部に、突き刺さっていた。前のめりに、折れ曲がるジュリナの身体。苦痛に歪む表情。全身に響き渡る黒い衝撃。悪魔の拳。
繰り返される、腹部への苦痛の嵐。
市川ミオリの拳が、いつもの、相手の顔面のみを狙う攻撃から、腹部へと、狙いを変えた。
これは、少なからず、ジュリナを脅威だと感じたからに、他ならないのだが、逆に、こうとも言える。
遊びは、終わり、なのだと。
市川ミオリの底知れない驚異が、全身をまとう瘴気にあらわれる。普通なら、気圧されてしまいそうになる圧力にも、ジュリナは、立ち向かう。恐れ知らずの強気な少女は。
「距離をとれ!ジュリナ!一旦、市川の間合いから離れるんだ!」
ネズミの声が、聞こえているのか、いないのか、ジュリナは、さらに、前へ、踏み込む。
逃げたら、負けだ。逃げたら、負ける。それに─
“てっぺん”だったら、絶対に、逃げない、と。
薄暗い地下室に、お互いの拳を叩きつける音とジュリナの荒い息づかいだけが、響く。
ダメージの蓄積された身体を支えながら、ネズミは思う。
(互角…、いや、まだ、市川のほうには、余裕があるか…、このままだと─)
市川の頭突きが、ジュリナの顔面に激しく、きまった。
しかし、踏みとどまるジュリナ。
引かない。引けない。
そのとき─
地下室の入り口に、あらわれたのは─
(くそッ!こんなときに…、最悪の展開ってやつッス…)
ネズミが、舌打ちする。
─矢場久根商業の灰色の制服に長い黒髪の少女。
この状況にそぐわない
緊張感のない声が、その入り口の少女から、とんだ。
「あー!総長、ズル~い!マジ女は、最後(あした)だって、言ってたのにぃ!それに、ジュリナは、わたしの『獲物』なんだからぁ!」
その少女の名は、
矢場久根死天王─江口アイミ。
普段は温和な彼女は、ときに、
死天王最強にして、感情を一切持たない殺戮マシーンへと変貌する。また、
凄絶な美しさを誇る絶世の美少女でもあった。
通称─Ω(オメガ)。
全員の動きが、止まる。
「邪魔を─、するなよ」
鋭い視線を向ける
市川ミオリの言葉を無視し、オメガは、瞬時に、戦闘体制へと移行する。
瞳が、表情が、動きが、感情を持たない殺戮マシーンへと、変貌していく。口調さえも、機械的なまでに、一変する。
「目標捕捉…、排除する!」
直後。
オメガは
すべるように動き出すと、一瞬で、ジュリナの眼前に迫った。