マジすか学園GX☆#1ー1☆
ディーヴァの心臓部ともいえる指令室のある豪華客船へ乗り込んだ
前田とアヤメの二人が、大きな揺れを感じたあと─
巨大すぎる要塞は、ゆっくりと、音を立てて動き出した。
はるかなる外洋へと─。
そこで、
甲板に、人影を感じることのなかった
前田とアヤメの二人は、船内の捜索へと切り替えた。
港では、
未だ、仲間たちが、必死で闘っている。
一刻も早く、
ディーヴァの総帥を、見つけ出し、この大きな戦争を終わらせなければ。いま、すぐにでも─。
そのために、ここまで来たのだ。いままで、多くの仲間が傷つき、たくさんの犠牲を払い、ついに、ここまで─。
必ずや、総帥を、見つけ出す。その思いを胸に、二人は、船内を走り続けた。
その間、客船は、どんどん、港を離れていく。
ようやく、
操舵室の前に辿りつくことができた二人。
すぐに、
扉を開ける。
しかし─。
「どうして…?」
アヤメが、思わず、声を漏らす。
計器類が並ぶ
広々とした
暗い室内には、ひとの気配など、まったく、なかった。
そして、壁一面に、無数のモニター。【エリア】内の監視カメラの映像が、煌煌と流れている。
ただ、
ここに、誰かが、存在した気配だけは、微かに感じられた。
前田が、空っぽの操舵席を見る。
「自動操縦…?」
最新鋭の
コンピュータ制御された客船だった。プログラミングさえすれば、自動で、目的地まで進むことが出来る。
「ちくしょう!ふざけた真似を!」
計器を叩きつけるアヤメ。
「ほかを、探そう…」
前田が、振り返った。
そのとき─
二人の
左右の耳をつんざく程の
爆発音が、室内外に鳴り響いた。
驚く間もなく、二人は、操舵室を飛び出した。
明らかに、人為的な爆発であった。
裏社会とも強い繋がりを持つ、関西最強最悪のディーヴァという組織にとって、爆発物を準備することは、さほど難しいことではない。アヤメの調べたところによれば過去に使用した事例も、いくつか、あった。
途中、
二度目の爆発が起きた。激しく船体が揺れる。
走りながら、アヤメが、叫ぶ。
「くそっ!これは、罠だったんだ!総帥は、わたしたちだけを残し、自分は船を下りて、あらかじめ、仕掛けてあった爆弾を…、爆発させたんだ!」
「とにかく、甲板に救命ボートがあったはず。それで、脱出しよう!」
二人は、ふたたび、甲板に駆け上がった。
爆発の損傷規模は、客船の後方部に集中していた。
その部分から浸水が始まり、ゆっくりと傾き始める客船。
アヤメが、急ピッチで、救命ボートの準備をしながら、前田のほうを見やると、前田は、背中を向け、一方向を眺めていた。
「前田!何やってんだ!急げ!」
「アヤメ、お前は、先に行け」
「えっ?何を言って…」
言葉を発することも忘れ、絶句するアヤメ。
前田の視線の先を追ってみると、そこには、銀灰色(グレイ)の特攻服を身にまとった少女の姿があった。将軍のものとは明らかに違う仕様の特攻服と威圧感(オーラ)を身にまとって。
その少女の背後に見えるのは、真っ赤な炎と黒煙の広がり。横あいからの熱風が、少女の長い髪と特攻服を翻す。
「ま、まさか…」
アヤメが、声を絞り出す。
(残って、いたのか─?)
信じられない。まさか。本当に。
この
いまにも確実に沈みゆく船に、これから、地獄しか待っていないようなこの状況で、まさか、“残っていた”とは─。
「前田、最初に言うたよな、将軍全員が倒されたら…てな、
それが、この遊戯(ゲーム)のルールやった。だから、待っとったんや」
「お前が…、総帥…」
最早、素顔を隠すこともなく、
獣のように、光輝く瞳で、少女は応えた。
「そうや…、わたしが、ディーヴァの総帥─、薮下シュウや!」
「お前!どういうつもりだ!このままじゃ、この船、沈んじまうだろ!」
「これも、遊戯(ゲーム)の演出や。スリル満点やろ。まだ、あといくつか、仕掛けてある。港のほうにもな。ああ、言うとくけど、救助なんか来ぇへんで。そのへん、根回しは済んどる。もともと、【エリア】内は、政府も警察も不干渉の領域やからな」
「本気…か?」
(イカレてる…)
アヤメも、思考がまとまらないでいた。
「お前らを、ぶちのめすのに、そんなに、時間かからんやろ!」
いつでも、自分だけは、脱出できるという自信。
「止めることは、出来ないのか?」
前田が、尋ねる。この戦争や愚かな行為を止めることは出来ないのか、と。
「止めれるもんやったら、二人がかりで、止めてみろや!」
両手を広げ、歩みよってくる総帥、薮下シュウ。
それを見て、アヤメが、唾を吐き捨てる。
「クソ餓鬼が…」
「クソ餓鬼、上等や!」
大きく
揺れる甲板。
バランスの崩れるアヤメに対し、平然と、身体を移動させる薮下シュウ。平地のように、とてもスムースに。驚くべき平衡感覚。
野獣のような鋭い動きで、アヤメに迫る。
薮下シュウは、そのまま、一瞬で、アヤメの懐に入り込み、下方から顔面を、拳で打ち抜いた。
大きく吹き飛ばされるアヤメ。
「アヤメ!」
甲板に、全身を激しく叩きつけられたアヤメが、咳き込む。
総帥の一撃は、疲労困憊だったとはいえ、アヤメを一発で、戦闘不能にした。
(くっ…、なんて拳だよ…、起き上がれ、ない…)
「いままで、ずっと、見てきたわ─」
総帥が、前田のほうへ向きなおる。
「待っとったんや、ずっと…。こんな雑魚に、用はない。前田、お前は、違うよなぁ?」
前田が、両腕を掲げ、構える。両の拳の間から、鋭い視線を総帥に、ぶつける。
「口で言って、わからなければ…、拳で、伝えるしかない…、『マジ』の意味を─」
「努力が、報われることなんかない!世の中、『マジ』なんかないんやで!」
前田と総帥の二人が、動き出す。
繰り出された二つの拳。
と同時に、またしても、爆発音が、辺り一面を支配した。
しかし、
揺れる甲板や激しい爆発音を
ものともせずに、
前田の左拳と、薮下シュウの右拳が、お互いの頬に、しっかりと決まっていた。
よろめく前田。
笑う薮下。
───。
さらに、二人の闘いは、船体の揺れ同様に、激しさを増していくのだった。
アヤメが、天を仰ぎ、祈る。
(みなみ…、前田を…、頼む─)