マジすか学園V☆(下書き2)
『わたしが、最強の盾になってやるよ。そして、お前を守る。守り続ける。だから、お前が、最後に、決めるんだ。お前の最強の──』

吹奏楽部(ラッパッパ)部室へと続く階段の下では、お嬢様風の黒髪ショートボブの少女と、カミソリゾンビの二人が、相対していた。
「拳は、あまり、使いたくないんだけど─。無用の争いは避けたいし。でも、どこへ行っても、争いは絶えないね」
絶対音感を持つ帰国子女が零す。
欧米では、民族による差別が、日常茶飯事だといわれている。差別される側は、自然と、身を助くる術を得なければ、必要最低限の生活を送ることも難しい。そんな少女が、日本でも有数のヤンキー校を選んだのは何故なのか。
少女の優雅な笑みから、それを、読み取ることは出来なかった。
先手をとって、カミソリが仕掛ける。研ぎ澄まされた手刀の出処をつかませないよう、身体を回転させ、また、その遠心力によって、威力の増した攻撃で、少女に迫る。
その手刀を、その場から動くことなく、膝を柔らかくし、上体を下げ、かわす。その反動を利用し、少女は、右の拳を振り上げた。
「ぐっ!」
またしても、カミソリと少女の間に割って入ったゾンビが、盾となり、少女の拳を身体で受け止める。
「ゾンビ!」
「構うな!どんどん攻めろ!」
少女の拳は、一撃で、とどまることを知らず、ゾンビの身体をさらに、打ちつけた。打たれ強いはずのゾンビではあったが、少女の拳は、かなり重く、ダメージは蓄積されていく。
「おりゃっ!」
ゾンビの背中から、飛び出したカミソリの手刀が、少女を襲う。意表を突く攻撃に、
初めて、少女の薄紫色の制服の胸元が、割かれた。
「ff(フォルティシモ)だね」
音楽用語で、カミソリの攻撃を表現する少女には、未だ、余裕の笑みがあった。
たたみかけるカミソリの手刀。さらに、拳、蹴りを連続で繰り出す。
少女は、狭い廊下にも関わらず、壁伝いに、カミソリの攻撃を避け続ける。
ゾンビも、それに続く。
少女を、囲い込むように─。挟撃。
しかし。
当たらない。
二人の攻撃が、
かすりもしない。逆に、カミソリゾンビ、二人の体力のほうが、どんどん削られていった。
また、少女からの攻撃は、ほとんど全て、ゾンビが受けていた。カミソリを庇うように。ふらつくゾンビ。
それを見かねて、今度は、ゾンビの前に、カミソリが立つ。
「おい、あんまり…、無茶するなよ…」
心配そうに、カミソリが声をかける。
「わかってる…、でも…それでも…、これが…、わたしの戦い方なんだ…、約束…した、だろ…」
悲壮感の漂い始めたふたりに、
「コンビのハーモニーは、なかなか良いけど─、まだ、深みが、足りない、かな」
少女は、左右の蹴りを、ほぼ同時に放った。
吹き飛ぶカミソリとゾンビ。
「はぁ…、はぁ…、こいつ…、ほんとに強ぇ…」
「まだ…、まだ、やれる!わたしが、守るから!」
ゾンビが、声を張り、立ち上がろうとする。
「ゾンビ…」
「マジ女の生徒が、この程度だったなんて、がっかりもいいとこ」
二人の様子を見て、肩をすくめ、
ため息をもらす少女。
「なんだとっ!?」
「てめぇ…、いったい…、何者なんだ?」
その問いかけに、真剣な表情で応える少女。
「わたしは、ドイツにいた頃、“あるひと”に、喧嘩と、そして、『マジ』の意味を教わった。その恩人の母校であるこの学校(マジ女)の話を聞いた時から、この校舎に入学することが、わたしの長年の夢だった」
少女は、射るような視線を、カミソリゾンビの二人に向け、ハッキリと言い放つ。
「わたしの名前は─生田エリカ、
決して、誰にも負けない。
“あのひと”の遺志を継ぎ─
この学校の“てっぺん”を、取りに来た!」
「“てっぺん”を…」
「…とりに、来た─だと?」
カミソリゾンビの二人が、少女─生田エリカの言葉を、頭の中で、繰り返す。
「そう。だから、貴方たちには、負けない」
断定的な、少女の言い様に、ゾンビが、食ってかかる。
「ふざけんな!“てっぺん”は、さくらさんなんだよ!」
「わたしたちは、その、さくらさんの舎弟。寝言は、わたしたちを倒してから、言え!」
「カミソリ!フォーメーション06(ゼロロク)だ!」
「了解!」
ゾンビが、両腕を広げ、生田エリカの前に、立ちふさがった。どこからでも、かかってこいと、言わんばかりに。
「もう、起き上がれなくしてあげる。そしたら、もう、ゾンビじゃないけど」
生田エリカが、大きく、腕を振りかぶる。右の拳に、渾身のちからを込め、ゾンビの身体を打ち抜いた。いままでで、一番強烈な拳。それでも、ゾンビは、揺るがない。微動だにしない。
さらに、ゾンビの顔面に、何発も、拳を打ち込んだ。
「そ、そんなもの…かよ、そんなんで、“てっぺん”取れると…、思ってんのか…」
「負け惜しみを…、それより、後ろの子は、いつ、出てくるのかな?」
ゾンビの背中に隠れたままの、カミソリに向けて、言う。
「右から来る?左から?それとも下…」
生田エリカが、言葉を終える前に、天井から、殺気の塊が、降ってきた。
「うぉおおおおおお!」
一瞬で、
ゾンビの背中を乗り越え、0時から6時の方向へ、カミソリは、手刀よりも強力な、腕力の三倍はあると言われている脚力を、天井から、生田エリカの頭上へと、振りおろした。足刀─大鉈を振るうかのような、全体重を載せた、かかと落としだった。
一瞬、虚をつかれた生田エリカではあったが、両腕をクロスして、その大技をしっかりと受け止めた。
しかし。
その衝撃は、受け止めきれるものではなく、生田エリカの頭上へ、深々と突き刺さった。起死回生の最強の──。
エリカが、膝をつき、倒れる。
呻き声を、漏らし─。
「くっ…」
「やったな…、カミソリ…」
「ゾンビ!大丈夫か!」
寄り添い、
ゾンビの身体を支えるカミソリ。
「見たか…、これが…、わたしの…、いや、『わたしたちの』戦い方だ!」
ゾンビが吠える。
二人の視線の先には、
頭を振り、ゆっくりと
立ち上がる生田エリカの姿があった。
その
双眸は鋭く、カミソリゾンビの二人を貫いていた。
「Danke…」
感謝。または、自分自身への戒めでもあったのか。
そして─
「Auf Wiedersehen!」
少女は、二人に、
別離(さよなら)の言葉を告げた。
次の一撃で、必ず、
決着をつけるために─。

吹奏楽部(ラッパッパ)部室へと続く階段の下では、お嬢様風の黒髪ショートボブの少女と、カミソリゾンビの二人が、相対していた。
「拳は、あまり、使いたくないんだけど─。無用の争いは避けたいし。でも、どこへ行っても、争いは絶えないね」
絶対音感を持つ帰国子女が零す。
欧米では、民族による差別が、日常茶飯事だといわれている。差別される側は、自然と、身を助くる術を得なければ、必要最低限の生活を送ることも難しい。そんな少女が、日本でも有数のヤンキー校を選んだのは何故なのか。
少女の優雅な笑みから、それを、読み取ることは出来なかった。
先手をとって、カミソリが仕掛ける。研ぎ澄まされた手刀の出処をつかませないよう、身体を回転させ、また、その遠心力によって、威力の増した攻撃で、少女に迫る。
その手刀を、その場から動くことなく、膝を柔らかくし、上体を下げ、かわす。その反動を利用し、少女は、右の拳を振り上げた。
「ぐっ!」
またしても、カミソリと少女の間に割って入ったゾンビが、盾となり、少女の拳を身体で受け止める。
「ゾンビ!」
「構うな!どんどん攻めろ!」
少女の拳は、一撃で、とどまることを知らず、ゾンビの身体をさらに、打ちつけた。打たれ強いはずのゾンビではあったが、少女の拳は、かなり重く、ダメージは蓄積されていく。
「おりゃっ!」
ゾンビの背中から、飛び出したカミソリの手刀が、少女を襲う。意表を突く攻撃に、
初めて、少女の薄紫色の制服の胸元が、割かれた。
「ff(フォルティシモ)だね」
音楽用語で、カミソリの攻撃を表現する少女には、未だ、余裕の笑みがあった。
たたみかけるカミソリの手刀。さらに、拳、蹴りを連続で繰り出す。
少女は、狭い廊下にも関わらず、壁伝いに、カミソリの攻撃を避け続ける。
ゾンビも、それに続く。
少女を、囲い込むように─。挟撃。
しかし。
当たらない。
二人の攻撃が、
かすりもしない。逆に、カミソリゾンビ、二人の体力のほうが、どんどん削られていった。
また、少女からの攻撃は、ほとんど全て、ゾンビが受けていた。カミソリを庇うように。ふらつくゾンビ。
それを見かねて、今度は、ゾンビの前に、カミソリが立つ。
「おい、あんまり…、無茶するなよ…」
心配そうに、カミソリが声をかける。
「わかってる…、でも…それでも…、これが…、わたしの戦い方なんだ…、約束…した、だろ…」
悲壮感の漂い始めたふたりに、
「コンビのハーモニーは、なかなか良いけど─、まだ、深みが、足りない、かな」
少女は、左右の蹴りを、ほぼ同時に放った。
吹き飛ぶカミソリとゾンビ。
「はぁ…、はぁ…、こいつ…、ほんとに強ぇ…」
「まだ…、まだ、やれる!わたしが、守るから!」
ゾンビが、声を張り、立ち上がろうとする。
「ゾンビ…」
「マジ女の生徒が、この程度だったなんて、がっかりもいいとこ」
二人の様子を見て、肩をすくめ、
ため息をもらす少女。
「なんだとっ!?」
「てめぇ…、いったい…、何者なんだ?」
その問いかけに、真剣な表情で応える少女。
「わたしは、ドイツにいた頃、“あるひと”に、喧嘩と、そして、『マジ』の意味を教わった。その恩人の母校であるこの学校(マジ女)の話を聞いた時から、この校舎に入学することが、わたしの長年の夢だった」
少女は、射るような視線を、カミソリゾンビの二人に向け、ハッキリと言い放つ。
「わたしの名前は─生田エリカ、
決して、誰にも負けない。
“あのひと”の遺志を継ぎ─
この学校の“てっぺん”を、取りに来た!」
「“てっぺん”を…」
「…とりに、来た─だと?」
カミソリゾンビの二人が、少女─生田エリカの言葉を、頭の中で、繰り返す。
「そう。だから、貴方たちには、負けない」
断定的な、少女の言い様に、ゾンビが、食ってかかる。
「ふざけんな!“てっぺん”は、さくらさんなんだよ!」
「わたしたちは、その、さくらさんの舎弟。寝言は、わたしたちを倒してから、言え!」
「カミソリ!フォーメーション06(ゼロロク)だ!」
「了解!」
ゾンビが、両腕を広げ、生田エリカの前に、立ちふさがった。どこからでも、かかってこいと、言わんばかりに。
「もう、起き上がれなくしてあげる。そしたら、もう、ゾンビじゃないけど」
生田エリカが、大きく、腕を振りかぶる。右の拳に、渾身のちからを込め、ゾンビの身体を打ち抜いた。いままでで、一番強烈な拳。それでも、ゾンビは、揺るがない。微動だにしない。
さらに、ゾンビの顔面に、何発も、拳を打ち込んだ。
「そ、そんなもの…かよ、そんなんで、“てっぺん”取れると…、思ってんのか…」
「負け惜しみを…、それより、後ろの子は、いつ、出てくるのかな?」
ゾンビの背中に隠れたままの、カミソリに向けて、言う。
「右から来る?左から?それとも下…」
生田エリカが、言葉を終える前に、天井から、殺気の塊が、降ってきた。
「うぉおおおおおお!」
一瞬で、
ゾンビの背中を乗り越え、0時から6時の方向へ、カミソリは、手刀よりも強力な、腕力の三倍はあると言われている脚力を、天井から、生田エリカの頭上へと、振りおろした。足刀─大鉈を振るうかのような、全体重を載せた、かかと落としだった。
一瞬、虚をつかれた生田エリカではあったが、両腕をクロスして、その大技をしっかりと受け止めた。
しかし。
その衝撃は、受け止めきれるものではなく、生田エリカの頭上へ、深々と突き刺さった。起死回生の最強の──。
エリカが、膝をつき、倒れる。
呻き声を、漏らし─。
「くっ…」
「やったな…、カミソリ…」
「ゾンビ!大丈夫か!」
寄り添い、
ゾンビの身体を支えるカミソリ。
「見たか…、これが…、わたしの…、いや、『わたしたちの』戦い方だ!」
ゾンビが吠える。
二人の視線の先には、
頭を振り、ゆっくりと
立ち上がる生田エリカの姿があった。
その
双眸は鋭く、カミソリゾンビの二人を貫いていた。
「Danke…」
感謝。または、自分自身への戒めでもあったのか。
そして─
「Auf Wiedersehen!」
少女は、二人に、
別離(さよなら)の言葉を告げた。
次の一撃で、必ず、
決着をつけるために─。