マジすか学園F☆#3ー6☆
大阪──
忽然と姿を消した前田とアヤメの二人は、ディーヴァ総帥の姿があった
豪華客船への潜入に成功していた。
かなり広々とした甲板を、走り、総帥の姿を捜し回る。
しかし、そこには、
総帥はおろか、人影のひとつすらも、見つけることは出来なかった。
「甲板には、誰もいないみたいだニャ」
「でも、確かに見たんだ…、特攻服を着た影を…」
「もう少し、探してみようか。今度は、船内を、手分けしてニャ」
アヤメが、歩き出そうとする。
「その前に、ひとつ、訊いていいか?」
「ニャ?」
前田は、先刻の【エリアF】教会前での出来事を、思い出しながら、尋ねた。
「アヤメは…、“みなみ”のこと…知ってたんだな…、わたしの大親友(マブダチ)の、高橋みなみを」
あのとき──
『前田ー!寝てんじゃねーぞ!』
アヤメが叫ぶ。 自分が出来ることは、叫ぶことだけ。 声がかすれるくらいに──
『お前の大親友(マブダチ)は、そん な情けないお前を見るために、命張っ たんじゃねーぞ! そんなんじゃ、死んだ“アイツ”に顔向け できねーだろ!わたしの大好きだった“ アイツ”に…、カッコ悪いとこ見せてん じゃねー!』
(………、アヤメ…)
『聞いてんのか!前田!弱気なお前な んか大キライだ!バカ野郎!』
───
それは、敵となり、立ちはだかった山本サヤカとの激闘のさなかの出来事だった。
「あのときは、思わず、叫んじゃったニャ」
失敗したというような表情で、軽く舌を出すアヤメ。
「やっぱり知ってたのか…、どうして、黙ってた?」
「恋敵(ライバル)だから…かニャ」
微笑みながら、アヤメが続ける。
「たぶん、わたしは、お前が、どんな人間なのか、見極めたかったのかもね」
さらに、アヤメは、続ける。
「みなみと初めて出会ったのは高一のとき、わたしが、アンダーガールズに絡まれてるときだった。勧誘が、しつこくてね。
それ以来、
みなみには、危ないところを、何度も助けられたニャ。アイツはいつも、命懸けで、学校の違うわたしだけじゃなく、周りのみんなを助けてたよ…、理不尽なやつらから─、真剣に、“マジ”に生きてた…、まさに、いまの…お前みたいにな…、それなのに─」
アヤメが、神妙な顔つきに変わる。
事件
当時のことを思い出しながら、
「─あの“事件”は、本当に悲しかった、けど…、前田…、そんな顔するな、
わたしは、お前のせいだなんて、少しも思っちゃいない…、あれは、不幸な事故だったんだ…
ただ、そのとき、わたしは、もう、関西(こっち)に引っ越して来てたから、みなみの事件を知ったのは、少し後のことだった…。まったく、信じられない気持ちだった…、しばらく、立ち直れないほど…混乱してたよ、お前は、もっと…だっただろうけどね…」
前田が頷く。
「だから、かな…、わたしは、いまだに、みなみの“死”を実感できなくて…、
もしかしたら…、みなみが、いまでも、突然、わたしの目の前に、あらわれるんじゃないか…って、いつものように、風のように…てね」
軽く舌を出し、アヤメは、言った。
そして─
「最近、変な噂を耳にし始めたんだ。悪名高いディーヴァの総帥が、みなみの事件に関わってる、って噂を…
それで、何度か、【エリア】に侵入して、探ってみてたんだ。総帥に話を聞きたくて…、その前に、ディーヴァのやつらに見つかっちゃったけどニャ」
「わたしも、その話をディーヴァの岸野から聞いた。ただ、わたしが、ここへ来たのは、みなみの復讐のためなんかじゃない。これ以上、仲間を傷つけさせないために、わたしは…」
「わかってるニャ、わたしも、ディーヴァの横暴には、かなり、頭にきてた。それでも、この巨大な組織、裏社会と密接につながってるディーヴァに、真っ向からぶつかるなんてこと、考えもしなかった。
そして、こんなところまで来れるなんて、思ってもなかった。
敵の頭を潰す目前まで…。それもこれも、前田…、お前がいてくれたからだ」
「それは違うよ。さっきも言ったように、ここまで来れたのは、仲間(みんな)のおかげだ。仲間がいたから、ここまで来れたんだ。アヤメ…、ありがとう」
その言葉に、
アヤメが、照れくさそうに笑った。
そのとき。
二人の足元が、大きく揺れた。
一方。
ディーヴァと反ディーヴァ連合が衝突している港では、喧嘩に夢中で、前田たちの乗った客船が動き出したことに、ほとんど気づく者はいなかった。
大型トラックのコンテナの上では、チームホルモンのヲタと山田ナナの二人が、ディーヴァの攻勢を『集中的に』受け続けていた。
「チクショウ!まだ、しぶとく、登ってきやがるぜ!」
「アンタが、調子乗って炎上させたんやろ!なんで、他人事(ひとごと)みたいに言うてんねん!
相手に将軍クラスのやつがおらんとはいえ、戦況は、五分五分…、いや、四分六分ってとこやのに」
「だからどうした!やるしかねーだろ!ここまで来たら!それとも、何か、名案でもあるってーのか?」
ギャーギャーわめくヲタをスルーしつつ、全体を見渡すナナが、遠くのほうで、ある人物の到着に気づく。
(なんや、あいつ…、病院行かへんかったんか…、アホやなぁ…、まぁ、あのまま、戦線離脱しとったら、“らしくない”か)
そして、意を決した
山田ナナが、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
嫌な予感しかしないヲタ。
「良い(ええ)こと、思いついたわ」
ヲタは、
怪しい笑みで、
にじり寄ってくるナナと、数十人のディーヴァ隊員に取り囲まれたトラックの下を、交互に見やりながら、
「おい!何、考えてんだよ!」
そんな
ヲタが、狼狽えるのも構わず、
「元凶は、誰やねんっちゅー話や」
そう言いつつ、ナナの手が伸びた。
「押すなよ!絶対に、押すなよ!」
という声がむなしく響いた。
ドン。
ヲタが、無様に、宙を舞う。
「ぅわああああああああ!」
密集しているディーヴァの
隊員たちが、ライブコンサートでよく見かける客席ダイブしたかのように、絶妙なクッションとなって、ヲタは、何とか、着地に成功(?)した。
トラックの荷台を見上げ、睨みつける。
「押すなっつっただろーが!」
「すまんなぁ、前フリかと、思てん」
「あの、トラブルメーカーがッ!」
ヲタは、舌打ちしつつ、立ち上がり、殺到するディーヴァに対し、身構える。
そのとき、海上から、その場にいる全員の耳をつんざく
爆音が、あたり
一帯を埋めつくした。
灰色の
爆風と共に。
振り返ると、
前田たちの乗った客船の後部付近から、赤黒い炎が激しく巻き上げられるように燃え盛っているのが見えた。船体は、傾き、いまにも、沈みそうになっている。
「なっ…」
一瞬、呆気にとられるヲタ。港にいる、すべての者が、同様の状態だった。
直後、ヲタは、気をとりなおし、海へ向かって叫んでいた。
「前田ぁあああああああああああっ!」
大声で。まるで、不安を払拭するかのように─。
しかし、
その切なる声は、更なる、爆発音に、かき消されていった。
忽然と姿を消した前田とアヤメの二人は、ディーヴァ総帥の姿があった
豪華客船への潜入に成功していた。
かなり広々とした甲板を、走り、総帥の姿を捜し回る。
しかし、そこには、
総帥はおろか、人影のひとつすらも、見つけることは出来なかった。
「甲板には、誰もいないみたいだニャ」
「でも、確かに見たんだ…、特攻服を着た影を…」
「もう少し、探してみようか。今度は、船内を、手分けしてニャ」
アヤメが、歩き出そうとする。
「その前に、ひとつ、訊いていいか?」
「ニャ?」
前田は、先刻の【エリアF】教会前での出来事を、思い出しながら、尋ねた。
「アヤメは…、“みなみ”のこと…知ってたんだな…、わたしの大親友(マブダチ)の、高橋みなみを」
あのとき──
『前田ー!寝てんじゃねーぞ!』
アヤメが叫ぶ。 自分が出来ることは、叫ぶことだけ。 声がかすれるくらいに──
『お前の大親友(マブダチ)は、そん な情けないお前を見るために、命張っ たんじゃねーぞ! そんなんじゃ、死んだ“アイツ”に顔向け できねーだろ!わたしの大好きだった“ アイツ”に…、カッコ悪いとこ見せてん じゃねー!』
(………、アヤメ…)
『聞いてんのか!前田!弱気なお前な んか大キライだ!バカ野郎!』
───
それは、敵となり、立ちはだかった山本サヤカとの激闘のさなかの出来事だった。
「あのときは、思わず、叫んじゃったニャ」
失敗したというような表情で、軽く舌を出すアヤメ。
「やっぱり知ってたのか…、どうして、黙ってた?」
「恋敵(ライバル)だから…かニャ」
微笑みながら、アヤメが続ける。
「たぶん、わたしは、お前が、どんな人間なのか、見極めたかったのかもね」
さらに、アヤメは、続ける。
「みなみと初めて出会ったのは高一のとき、わたしが、アンダーガールズに絡まれてるときだった。勧誘が、しつこくてね。
それ以来、
みなみには、危ないところを、何度も助けられたニャ。アイツはいつも、命懸けで、学校の違うわたしだけじゃなく、周りのみんなを助けてたよ…、理不尽なやつらから─、真剣に、“マジ”に生きてた…、まさに、いまの…お前みたいにな…、それなのに─」
アヤメが、神妙な顔つきに変わる。
事件
当時のことを思い出しながら、
「─あの“事件”は、本当に悲しかった、けど…、前田…、そんな顔するな、
わたしは、お前のせいだなんて、少しも思っちゃいない…、あれは、不幸な事故だったんだ…
ただ、そのとき、わたしは、もう、関西(こっち)に引っ越して来てたから、みなみの事件を知ったのは、少し後のことだった…。まったく、信じられない気持ちだった…、しばらく、立ち直れないほど…混乱してたよ、お前は、もっと…だっただろうけどね…」
前田が頷く。
「だから、かな…、わたしは、いまだに、みなみの“死”を実感できなくて…、
もしかしたら…、みなみが、いまでも、突然、わたしの目の前に、あらわれるんじゃないか…って、いつものように、風のように…てね」
軽く舌を出し、アヤメは、言った。
そして─
「最近、変な噂を耳にし始めたんだ。悪名高いディーヴァの総帥が、みなみの事件に関わってる、って噂を…
それで、何度か、【エリア】に侵入して、探ってみてたんだ。総帥に話を聞きたくて…、その前に、ディーヴァのやつらに見つかっちゃったけどニャ」
「わたしも、その話をディーヴァの岸野から聞いた。ただ、わたしが、ここへ来たのは、みなみの復讐のためなんかじゃない。これ以上、仲間を傷つけさせないために、わたしは…」
「わかってるニャ、わたしも、ディーヴァの横暴には、かなり、頭にきてた。それでも、この巨大な組織、裏社会と密接につながってるディーヴァに、真っ向からぶつかるなんてこと、考えもしなかった。
そして、こんなところまで来れるなんて、思ってもなかった。
敵の頭を潰す目前まで…。それもこれも、前田…、お前がいてくれたからだ」
「それは違うよ。さっきも言ったように、ここまで来れたのは、仲間(みんな)のおかげだ。仲間がいたから、ここまで来れたんだ。アヤメ…、ありがとう」
その言葉に、
アヤメが、照れくさそうに笑った。
そのとき。
二人の足元が、大きく揺れた。
一方。
ディーヴァと反ディーヴァ連合が衝突している港では、喧嘩に夢中で、前田たちの乗った客船が動き出したことに、ほとんど気づく者はいなかった。
大型トラックのコンテナの上では、チームホルモンのヲタと山田ナナの二人が、ディーヴァの攻勢を『集中的に』受け続けていた。
「チクショウ!まだ、しぶとく、登ってきやがるぜ!」
「アンタが、調子乗って炎上させたんやろ!なんで、他人事(ひとごと)みたいに言うてんねん!
相手に将軍クラスのやつがおらんとはいえ、戦況は、五分五分…、いや、四分六分ってとこやのに」
「だからどうした!やるしかねーだろ!ここまで来たら!それとも、何か、名案でもあるってーのか?」
ギャーギャーわめくヲタをスルーしつつ、全体を見渡すナナが、遠くのほうで、ある人物の到着に気づく。
(なんや、あいつ…、病院行かへんかったんか…、アホやなぁ…、まぁ、あのまま、戦線離脱しとったら、“らしくない”か)
そして、意を決した
山田ナナが、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
嫌な予感しかしないヲタ。
「良い(ええ)こと、思いついたわ」
ヲタは、
怪しい笑みで、
にじり寄ってくるナナと、数十人のディーヴァ隊員に取り囲まれたトラックの下を、交互に見やりながら、
「おい!何、考えてんだよ!」
そんな
ヲタが、狼狽えるのも構わず、
「元凶は、誰やねんっちゅー話や」
そう言いつつ、ナナの手が伸びた。
「押すなよ!絶対に、押すなよ!」
という声がむなしく響いた。
ドン。
ヲタが、無様に、宙を舞う。
「ぅわああああああああ!」
密集しているディーヴァの
隊員たちが、ライブコンサートでよく見かける客席ダイブしたかのように、絶妙なクッションとなって、ヲタは、何とか、着地に成功(?)した。
トラックの荷台を見上げ、睨みつける。
「押すなっつっただろーが!」
「すまんなぁ、前フリかと、思てん」
「あの、トラブルメーカーがッ!」
ヲタは、舌打ちしつつ、立ち上がり、殺到するディーヴァに対し、身構える。
そのとき、海上から、その場にいる全員の耳をつんざく
爆音が、あたり
一帯を埋めつくした。
灰色の
爆風と共に。
振り返ると、
前田たちの乗った客船の後部付近から、赤黒い炎が激しく巻き上げられるように燃え盛っているのが見えた。船体は、傾き、いまにも、沈みそうになっている。
「なっ…」
一瞬、呆気にとられるヲタ。港にいる、すべての者が、同様の状態だった。
直後、ヲタは、気をとりなおし、海へ向かって叫んでいた。
「前田ぁあああああああああああっ!」
大声で。まるで、不安を払拭するかのように─。
しかし、
その切なる声は、更なる、爆発音に、かき消されていった。