マジすか学園F☆#2ー7
大島優子とサド。
マジすか女学園の屋上を後にした二人。
病気になる前から、
変わることなく、前しか向かない優子は、
“目的地”へと無言で、足を進めていた。背中を守るように、サドが付き従う。
いつ、また発作が起きるかわからない。そして、そうなったとき、優子の身体(いのち)の保証はできない、と主治医は言っていた。このまま、行かせてしまって本当に良いのか。考えても、考えても、答えは出ない。
優子の『大掃除』という言葉が、サドの頭をめぐる。
優子さんの野望(ゆめ)─
初めて会ったときから、口にしていたこと─
どんな状況にあっても、前しか向かない。
身体は、決して、本調子といえないはずなのに。
優子の首すじには、まだ、肌寒い季節にも関わらず、油汗が滲んでいた。
それでも、止めても無駄なことは、百も承知だった。
その姿、久しぶりの制服を見て、
あの頃と、少しも変わってないな…そんな風にサドが、思っていると、
「サド…、いま、何考えてた?」
歩きながら、
突然、優子が、尋ねてきた。
サドは、平静を装うように、応える。
「昔のことを…、思い出してました」
「そうか…、わたしも─、お前と初めて会ったときのことを、思い出してた…、入学式の日のことを」
入学式直後。
学園最強の武闘派集団─
ラッパッパの先輩たちに図書室に呼び出された優子。
どんなに、打ちのめされ、
倒れても、倒れても、前だけを見据え、立ち向かっていった。
そのとき、
多勢に無勢の
ピンチを救ったのは、まだ、知り合って間もないサドだった。
(『助けてくれなんて…、言ってねーぞ…』)
(『別に助けに来たわけじゃない、こんなやり方が気に入らないだけだ』)
(『誰にも…、邪魔させねぇ…、わたしの…“ゆめ”は…』)
優子が懐かしむ。
「お前は、変わらないな。S(サディスト)のくせに、本当は優しいんだ。それに…」
振り返り、
「泣き虫だ」
いたずらっぽく言う。
「それは…、優子さんのせいですよ」
苦笑するサドに、
優子が、微笑む。
「お前は、輪廻とか、転生ってやつを信じるか?」
病に冒され、
死と隣り合わせの人生を歩む優子。
死後の世界などというものが、果たして本当に、存在するのだろうか。サドは考える。
「そうですね…、もし、本当に、生まれ変わりというものがあるとしたら──」
サドの瞳には、一点の曇りもない。
「──わたしは、また、マジ女に…、そして、ラッパッパに入りたいです」(優子さんと…)
優子は、瞳を閉じ、うなづく。満足そうに。
「わたしも…、
何回、生まれ変わっても、お前と一緒に、また、あの景色が見たいよ」
見上げる。空を。
「わたしの好きな、あの場所から…」
二人は現在(きょう)も、
未来(あす)も、
階段を
のぼり続ける。
のぼっているときは、けっして見ることのできない景色。
のぼり切ったとき、
のぼり切った者だけが、
初めて見ることのできる景色─
“てっぺん”─
その景色を、また、『二人』で見るために。
