マジすか学園F☆#1ー9☆ | AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」

マジすか学園F☆#1ー9☆


【エリアK】


あれほど、圧倒的な強さを見せつけていた上西の表情から、余裕の色が消えた。鉄面皮が剥がれ落ちていく。

上西が繰り出す
得意の“鉄の爪”も、“鋼鉄の脚”さえも、前田には届かず、弾き返されるのみ。
上西のいままでの経験でも、これだけ攻撃が通じず、また、一方的に殴られ続けることはなかった。自然、上西は、手も脚も、出せなくなり、ついに、前田の拳のまえに、力尽き、崩れ落ちた。


「こいつ…、人間や…ない…」

地面に伏したまま、呻く。

あれ程、ひどく痛めつけたのに、全身、傷だらけになっているのに、それに、痺れ薬は“まだ”充分、効いているはずなのに─。
前田の人間離れした動きと精神力に、上西は、奥歯をギリギリと噛みしめる。

(…それでも、負けられへん!ここで、負けるわけには、いかんのや!)


その闘いを、立ち尽くし、ただ、呆然と見つめているボロボロの四人。前田四天王。


「さすが、敦子だな…、つけいる隙がねえ、俺たちが助けに入る余地もな…、なんか立ってるステージが違うって感じだぜ」



「当たり前や!あつ姐が、負けるわけあらへん!卑怯な手ぇ、使われへんかったら、あんなんにやられることもなかったんや!」


「前田の姉貴の…、極限の集中力…、一流のアスリートや格闘家の体験する、『ゾーン』にも似た心理状態…、まさに、神の領域…、おそらく、これで、決まり…」


「いや、油断するんじゃないよ…、“幕”には、まだ少し早いみたいだ…」

大歌舞伎が続ける。


「勝負事に、『まさか』は、付き物だからね…、いつでも、飛び込める準備はしておくよ」


地面に伏している上西が、右腕に、ちからを込める。


「ま…、負けられ…へん…、地べた…這いつくばってでも…、手足、もがれても…」

震える腕で、重力に逆らうように、身体を起こす。

「そうやないと…、いままで…、粛清してきたやつらに…、顔向け…できひんやろ…」

血と汗と土にまみれた顔で、自分に言い聞かせる。

いつのまにか、心を麻痺させなければ、生きていけなくなっていた。思考を停止し、鋼鉄の意志をもって、鉄の女を演じ、あらゆる目的を遂行してきた。

決して、望んで行なっていたわけではなかった。

ただ─

そうしなければ、魂(こころ)が壊れてしまうから─


よろよろと立ち上がった上西は、銀灰色(グレイ)の特攻服の内側に、手を突っ込み、液体の入った小さな瓶を取り出す。


「これで…、終いや…、これは…、痺れ薬と…ちゃうで…、少しでも体のなかに入れば、一瞬で、あの世行きの…劇薬や…、
忘れんな…、
うちは…、“鉄の女”…上西ケイや!」

小瓶を、右の“鉄の爪”に垂らす。粘度の高い液体が、爪に染み込むようにまとわりつく。

「逃げるんなら…、いましかないで…」


その光景を、眉ひとつ動かすことなく見つめ、前田は、左の拳を掲げる。
それを見て、上西が言う。


「かわせると…思てんのか…、こんな身体でも…、爪を、掠らせることくらい…出来るんやで」


それでも、前田は、無言でうなずくだけだった。

そして、駆け寄ろうとしている学ランたちのほうに、一瞬、視線を向けた。
それを見ただるまは、足を止め、学ランと歌舞伎シスターズを制止するように、太い両腕を広げた。

「な、何すんだよ!だるま!」



「あつ姐が『来るな』っちゅうとる…、あつ姐は、大丈夫や!絶対に死なへんわ!残されたもんの悲しみを誰よりもわかっとるひとやから…、それに、
あつ姐は、あの大島優子が認めた“てっぺん”なんじゃ!“てっぺん”は、あつ姐しかおらんのじゃ!だから…」



直後。

「おあぁあああああッ!」

上西の右腕が、振り上げられた。


「あつ姐ぇえええええええ!」


だるまの涙混じりの叫び。


上西の振り下ろされた“鉄の爪”に対して、前田は、反撃することなく、微動だにしなかった。

その前田が見据える瞳の手前ギリギリで、鉄の爪がぴたりと静止している。



「な、なんで、避けへん…?」


「なんでかな…」


前田が、ゆっくりと、口を開く。


「──お前が、もう…、“鉄の女”じゃなくなったようにみえたから…」


その言葉に、はっと胸をつかれたかのように、腕をおろし、がっくりと、膝を落とす上西。


「お前は…、鉄の女になんかなりたくなかったんだろ…、自分を殺してまで…、本当は…、お前自身が、救世主になりたかったんじゃないのか?
お前の望む通り…、この“セカイ”をぶち壊すことのできる、本当の…」


語りかける前田に、ちから無く、首を横にふる上西。


「救世主は…、やっぱり、お前のほうやったな…」


「違うよ…、わたしは…、救世主なんかじゃない…、わたしは、ただの──」

前田の言葉に、驚き、笑う。

「フッ…、つまらん“答え”やな…」


そのとき、鉄の女、上西ケイが、初めて、人間らしい笑みを見せた。


(かなわんわ…、完敗や)

負けを認めるしかない上西。


(頼んだ…で)



前田は、しっかりと受け取っていた。

上西ケイの“想い”を─

過去を─




そして、


“マジ”を──。


数多くの踏みつけられ、虐げられた人達の、“想い”を胸に。


前田は、また、歩き出した。


すべての決着(ケリ)をつけるために─