マジすか学園3☆#13ー1☆
東京─
トリゴヤは、街を歩いていた。
いつもと違い、表情に精気というものが感じられない。
バイトの面接に行ったが、履歴書を見るなり、あっさりと断られてしまった のが原因だった。
この街では、マジすか女学園の卒業生という立派な肩書きが往々にして、邪 魔をする。大手チェーンのファストフード店やファミリーレストランは、軒 並み、断られ続けていた。
「有名すぎるのも問題だよねー。やっぱ、風俗しかないかー」 と、少し、やさぐれ始めたとき、目の前に三人の制服の少女があらわれ、声をかけ てきた。
「トリゴヤさんっ!」
「あれー、今日は、四人じゃないんだー?」
昭和、バンジー、アニメの三人を見て、いつものメンバーがひとり欠けてい ることを指摘するトリゴヤ。
「そ、その話は、また、今度…、そ、そんなことより、どこ行ってたんで すか?サドさんもブラックさんも、ゲキカラさんも、みんな、全然、ケータ イつながらないし」
(そっかー、サドは病院で、ブラックは仕事中、ゲキカラはいまごろ喧嘩中かな…、あれ、わたし、ケータイどうしたっけ…) などと、トリゴヤが適当に思っていると—。
「……、シブヤさんが…、やられました…、誰にやられたのかは…まだ…」
苦渋をにじませた表情で、昭和が手のひらを前に差し出す。ピンクの付け爪がひとつ。現場に落ちていたものらしい。
トリゴヤは、それを指で、そっとつまみとる。そして、瞳を閉じた。
いつもの残留思念をよみとる仕草だった。
「何か、見えますか?」
ジャンボが問う。昭和とアニメも固唾を飲んで見つめる。
すると、
「ぜーんぜん、なんにも見えないやー。疲れてるからかなー。あっ、わたし、バ イト探さなきゃだから、
もう、喧嘩なんかしてる年齢(とし)じゃないし…、じゃあねー」
ひらひらと手をふり、トリゴヤは歩き去っていった。
その背中に、ジャンボが言葉を投げつける。
「トリゴヤさん!あんた、いっつもヘラヘラして、…いったい、いつ、本気出すんですか!?」
「やめとけ…、ジャンボ…、仕方ないよ…、
しっかし、あのひと、優子さんも恐れるほどのすげー“ちから”持ってるってのに、いまいち、性格 にムラがあるっていうか…、やる気が感じられないというか…、元四天王のくせにさ…」
昭和が、憤るジャンボを押さえつけつつ、不満を口にすると、アニメが、
「前に、サドさんに、こんな話を聞いたことがある。四天王ってのはさ、選ばれてなるも んじゃないってな」
「どういうことだ?」
「トリゴヤさんは、自分で、四天王になることを選んだんだよ…、もちろん、資質や部長の承認も必要だが…、最後は、自分が決めるんだ…、ラッパッパの四天王として、闘い続ける…その覚悟をな!」
「確かに…、ラッパッパの四天王ともなれば、いろんなやつらに狙われて当たり前な存在だよな…、それでも、やり通したんだな…、闘って、闘って、史上最強と呼ばれるまでになって…」
「たしか、前に、シブヤさんが、矢場久根にやられたとき、たったひとり、矢場久根に、乗り込んでいったって、聞いたことがある。本当は、熱いひとなんだよ、きっと…、伊達に、伝説のラッパッパじゃないのさ」
三人は、人混みに消えていく、赤いスカジャンを、見えなくなるまで、見つめていた。
トリゴヤの足は、バイト探しに向かってー
いくわけではなかった。
表情には、冷たい、まるで、氷のような微笑を浮かべ、
(“神崩し”の光宗カヲル…、わたしの本気、たっぷり見せてあげる)
トリゴヤは、手のなかのネイルを強く、力強く、握り締めていた。
トリゴヤは、街を歩いていた。
いつもと違い、表情に精気というものが感じられない。
バイトの面接に行ったが、履歴書を見るなり、あっさりと断られてしまった のが原因だった。
この街では、マジすか女学園の卒業生という立派な肩書きが往々にして、邪 魔をする。大手チェーンのファストフード店やファミリーレストランは、軒 並み、断られ続けていた。
「有名すぎるのも問題だよねー。やっぱ、風俗しかないかー」 と、少し、やさぐれ始めたとき、目の前に三人の制服の少女があらわれ、声をかけ てきた。
「トリゴヤさんっ!」
「あれー、今日は、四人じゃないんだー?」
昭和、バンジー、アニメの三人を見て、いつものメンバーがひとり欠けてい ることを指摘するトリゴヤ。
「そ、その話は、また、今度…、そ、そんなことより、どこ行ってたんで すか?サドさんもブラックさんも、ゲキカラさんも、みんな、全然、ケータ イつながらないし」
(そっかー、サドは病院で、ブラックは仕事中、ゲキカラはいまごろ喧嘩中かな…、あれ、わたし、ケータイどうしたっけ…) などと、トリゴヤが適当に思っていると—。
「……、シブヤさんが…、やられました…、誰にやられたのかは…まだ…」
苦渋をにじませた表情で、昭和が手のひらを前に差し出す。ピンクの付け爪がひとつ。現場に落ちていたものらしい。
トリゴヤは、それを指で、そっとつまみとる。そして、瞳を閉じた。
いつもの残留思念をよみとる仕草だった。
「何か、見えますか?」
ジャンボが問う。昭和とアニメも固唾を飲んで見つめる。
すると、
「ぜーんぜん、なんにも見えないやー。疲れてるからかなー。あっ、わたし、バ イト探さなきゃだから、
もう、喧嘩なんかしてる年齢(とし)じゃないし…、じゃあねー」
ひらひらと手をふり、トリゴヤは歩き去っていった。
その背中に、ジャンボが言葉を投げつける。
「トリゴヤさん!あんた、いっつもヘラヘラして、…いったい、いつ、本気出すんですか!?」
「やめとけ…、ジャンボ…、仕方ないよ…、
しっかし、あのひと、優子さんも恐れるほどのすげー“ちから”持ってるってのに、いまいち、性格 にムラがあるっていうか…、やる気が感じられないというか…、元四天王のくせにさ…」
昭和が、憤るジャンボを押さえつけつつ、不満を口にすると、アニメが、
「前に、サドさんに、こんな話を聞いたことがある。四天王ってのはさ、選ばれてなるも んじゃないってな」
「どういうことだ?」
「トリゴヤさんは、自分で、四天王になることを選んだんだよ…、もちろん、資質や部長の承認も必要だが…、最後は、自分が決めるんだ…、ラッパッパの四天王として、闘い続ける…その覚悟をな!」
「確かに…、ラッパッパの四天王ともなれば、いろんなやつらに狙われて当たり前な存在だよな…、それでも、やり通したんだな…、闘って、闘って、史上最強と呼ばれるまでになって…」
「たしか、前に、シブヤさんが、矢場久根にやられたとき、たったひとり、矢場久根に、乗り込んでいったって、聞いたことがある。本当は、熱いひとなんだよ、きっと…、伊達に、伝説のラッパッパじゃないのさ」
三人は、人混みに消えていく、赤いスカジャンを、見えなくなるまで、見つめていた。
トリゴヤの足は、バイト探しに向かってー
いくわけではなかった。
表情には、冷たい、まるで、氷のような微笑を浮かべ、
(“神崩し”の光宗カヲル…、わたしの本気、たっぷり見せてあげる)
トリゴヤは、手のなかのネイルを強く、力強く、握り締めていた。