マジすか学園3☆#11ー8☆
東京ー
私立K大学病院の個室ー
病床(ベッド)の上で横たわる、ウェーブのかかった髪の長い少女は苦しそうに、
「まわりのやつらは…、喧嘩ばかりしてる…お前らのこと…いろいろ言うかもしれねぇ…、でも、お前らは…、いつだって、本当に、最高だった…、たくさんの“マジ”を…、ありがとな…、後は…頼んだ…」
室内にひとり
その様子を上から冷ややかな視線で見下ろしているサド。またか、と言わんばかりにー。
「優子さん…、その遺言めいた芝居は、もう、やめてください」
もう、何度も見せられた芝居。演技も過剰になってきており、もはや、最初の感動は薄れ、怒りすら覚えていた。不謹慎だ、とサドは思う。
「チェッ、だって退屈なんだもんよー。術後の経過観察なんかいらねーって、早く退院させてくれよ。もう病院は嫌だー!」
「何を言ってるんですか!機内で意識不明になったのはどこの誰だと思ってるんです!?みんな、どれほど心配したことか…、意識が戻るまで、生きた心地がしませんでしたよ…。ほんとは、病床(ベッド)に縛り付けておきたいくらいなんですから。アメリカでの大手術のあと、記憶喪失のまま、ハーレムでの大暴れ…、主治医も呆れてましたよ…」
優子は、機内で意識不明の重体に陥り、この病院に運ばれ、目覚めたのは、昨晩遅くのことだった。普段通りのおちゃらけた応対が出来ていたのと、担当医による「極度の疲労が重なったのだろう」という診断結果に、とりあえず、皆、安心して、帰宅したのだった。
サドは、優子のため、入院の準備を整え、再び、病室を訪れていた。
「ははは…、また、こうして、サドの説教聞けるのも、あの主治医(せんせい)のおかげだしな。しばらくは、おとなしくしとくよ…たぶん」
「たぶん…?」
サドの永久凍土のように凍てついた視線が、優子の無邪気な顔に突き刺さる。
「へいへい、わかりましたよ。何だか強くなってんなぁ…、お前。
シブヤは会社、ブラックはパート、トリゴヤはバイトの面接、チョウコクは山籠もり、ゲキカラは学校か…、みんな、それぞれ、新しい生活が始まっちまってるんだな…、サド、お前も、専門学校(ガッコ)のほうはいいのか?」
「みんな、また、すぐに顔を出すって言ってましたよ。前と違い、面会は解禁でいいんですよね。
わたしのほうは、大丈夫です。そんなことより─、もう…、どこにも行かないでくださいよ…」
サドが、深い感慨を込めて言った。
しんみりした雰囲気を打破しようと、「あっ!そういえば…」と、優子は折り畳まれた紙片をサドに手渡す。
「これ…、今朝早く、ゲキカラが来てさ、帰り際に、お前に渡してくれって…、なんなんだろな」
サドも、不思議そうに紙片を受け取り、開く。
『サドへ
抜け駆けしたら、潰すよ
ゲキカラ』
くすりとサドが笑う。先手を打たれた。
「これは、宣戦布告と受け取っておきましょう」
「ん?」
何が展開されているのか意味不明な優子。
くしゃりと紙片を握りつぶし、
水をかえてきます、と花の入った花瓶を持って、サドは部屋を出ていった。
ふと、優子の表情が憂いを帯びたものに変わる。
「ありがとうくらい、何回でも言わせてくれよ…、本当に、お前らには感謝してんだ…、何度言っても足りないくらいな…。それに…、また、いつ…、突然…」
頭をふる。
Tシャツに黒いスウェットのラフなスタイルで、優子は病床(ベッド)から起き上がると、広く開放的な窓辺に立った。東京の空は明るい。
十階建ての最上階にあるVIP専用の高級感漂う個室。
眼下には、よく手入れされ緑にあふれた豪奢な中庭があった。成金趣味とはシブヤの弁である。
そのなかに、ポツンと漆黒の特攻服を着た少女が、こちらを見上げ、佇んでいた。いくつもの闇を渡り歩いてきた冥い双眸。暗黒色の長いストレートの髪。
少女は、優子から目をそらすことなく、呟く。
「おれが仕留め損なったのは、てめーらが初めてだ…、たしかに油断はあったのかもな…、だから、今度は、間違いなく、直接、おれの拳で、ぶち殺す…
アンダーガールズ親衛隊の、いや、暗黒狼(ダークウルフ)の誇り(プライド)に賭けてな…」
漆黒の特攻服の少女─木崎ユリアは
くるっと踵を返し、病院の敷地を後にした。
「The fun starts now.(お楽しみは…これからだ)」
その後ろ姿を神妙な顔つきで見送る優子。
突如ー
激しい目眩にみまわれる。険しい表情で、大きな窓に体重を預ける。
全身から嫌な汗が噴き出した。
「くっ…、すまねぇな、サド…、おとなしくしてるわけには、いかねーかもな…、すべてを終わらせる…、それまで…、もってくれるのか…、わたしのこの身体は…?」
歪む視界のなか、自問自答を繰り返す優子だった。
私立K大学病院の個室ー
病床(ベッド)の上で横たわる、ウェーブのかかった髪の長い少女は苦しそうに、
「まわりのやつらは…、喧嘩ばかりしてる…お前らのこと…いろいろ言うかもしれねぇ…、でも、お前らは…、いつだって、本当に、最高だった…、たくさんの“マジ”を…、ありがとな…、後は…頼んだ…」
室内にひとり
その様子を上から冷ややかな視線で見下ろしているサド。またか、と言わんばかりにー。
「優子さん…、その遺言めいた芝居は、もう、やめてください」
もう、何度も見せられた芝居。演技も過剰になってきており、もはや、最初の感動は薄れ、怒りすら覚えていた。不謹慎だ、とサドは思う。
「チェッ、だって退屈なんだもんよー。術後の経過観察なんかいらねーって、早く退院させてくれよ。もう病院は嫌だー!」
「何を言ってるんですか!機内で意識不明になったのはどこの誰だと思ってるんです!?みんな、どれほど心配したことか…、意識が戻るまで、生きた心地がしませんでしたよ…。ほんとは、病床(ベッド)に縛り付けておきたいくらいなんですから。アメリカでの大手術のあと、記憶喪失のまま、ハーレムでの大暴れ…、主治医も呆れてましたよ…」
優子は、機内で意識不明の重体に陥り、この病院に運ばれ、目覚めたのは、昨晩遅くのことだった。普段通りのおちゃらけた応対が出来ていたのと、担当医による「極度の疲労が重なったのだろう」という診断結果に、とりあえず、皆、安心して、帰宅したのだった。
サドは、優子のため、入院の準備を整え、再び、病室を訪れていた。
「ははは…、また、こうして、サドの説教聞けるのも、あの主治医(せんせい)のおかげだしな。しばらくは、おとなしくしとくよ…たぶん」
「たぶん…?」
サドの永久凍土のように凍てついた視線が、優子の無邪気な顔に突き刺さる。
「へいへい、わかりましたよ。何だか強くなってんなぁ…、お前。
シブヤは会社、ブラックはパート、トリゴヤはバイトの面接、チョウコクは山籠もり、ゲキカラは学校か…、みんな、それぞれ、新しい生活が始まっちまってるんだな…、サド、お前も、専門学校(ガッコ)のほうはいいのか?」
「みんな、また、すぐに顔を出すって言ってましたよ。前と違い、面会は解禁でいいんですよね。
わたしのほうは、大丈夫です。そんなことより─、もう…、どこにも行かないでくださいよ…」
サドが、深い感慨を込めて言った。
しんみりした雰囲気を打破しようと、「あっ!そういえば…」と、優子は折り畳まれた紙片をサドに手渡す。
「これ…、今朝早く、ゲキカラが来てさ、帰り際に、お前に渡してくれって…、なんなんだろな」
サドも、不思議そうに紙片を受け取り、開く。
『サドへ
抜け駆けしたら、潰すよ
ゲキカラ』
くすりとサドが笑う。先手を打たれた。
「これは、宣戦布告と受け取っておきましょう」
「ん?」
何が展開されているのか意味不明な優子。
くしゃりと紙片を握りつぶし、
水をかえてきます、と花の入った花瓶を持って、サドは部屋を出ていった。
ふと、優子の表情が憂いを帯びたものに変わる。
「ありがとうくらい、何回でも言わせてくれよ…、本当に、お前らには感謝してんだ…、何度言っても足りないくらいな…。それに…、また、いつ…、突然…」
頭をふる。
Tシャツに黒いスウェットのラフなスタイルで、優子は病床(ベッド)から起き上がると、広く開放的な窓辺に立った。東京の空は明るい。
十階建ての最上階にあるVIP専用の高級感漂う個室。
眼下には、よく手入れされ緑にあふれた豪奢な中庭があった。成金趣味とはシブヤの弁である。
そのなかに、ポツンと漆黒の特攻服を着た少女が、こちらを見上げ、佇んでいた。いくつもの闇を渡り歩いてきた冥い双眸。暗黒色の長いストレートの髪。
少女は、優子から目をそらすことなく、呟く。
「おれが仕留め損なったのは、てめーらが初めてだ…、たしかに油断はあったのかもな…、だから、今度は、間違いなく、直接、おれの拳で、ぶち殺す…
アンダーガールズ親衛隊の、いや、暗黒狼(ダークウルフ)の誇り(プライド)に賭けてな…」
漆黒の特攻服の少女─木崎ユリアは
くるっと踵を返し、病院の敷地を後にした。
「The fun starts now.(お楽しみは…これからだ)」
その後ろ姿を神妙な顔つきで見送る優子。
突如ー
激しい目眩にみまわれる。険しい表情で、大きな窓に体重を預ける。
全身から嫌な汗が噴き出した。
「くっ…、すまねぇな、サド…、おとなしくしてるわけには、いかねーかもな…、すべてを終わらせる…、それまで…、もってくれるのか…、わたしのこの身体は…?」
歪む視界のなか、自問自答を繰り返す優子だった。