マジすか学園3☆#10ー1☆
「よけるのは上手いんやな」
城エリコの軽いフットワークからのキレ味鋭いパンチ。前田は避けてはいたものの、かろうじて、という状況であった。一発一発が迅く、重い。
問題はもうひとつ。檻(リング)だった。約20フィート四方を完全に空間的に把握している城。有棘鉄線の巻かれたロープに前田を追い詰めるように計算し、パンチを打ち込んでいた。前田もいつものような縦横無尽の動きは制限され、苦戦を強いられるほかなかった。
城の余裕の笑み。
「お前を倒せると思たら気分上々や、いまから本当のボクシング教えたる!」
前田はリング中央で足を止めた。望むは打ち合いだった。
「教えてもらおうか…、そのボクシングってやつを」
「ええ心構えや!ボコボコにして、土下座させたる!」
前田を中心に円を描くように、左回りにステップを踏む城。前田もその動きに合わせ、身体の向きを変える。
城は左ジャブを連打する。通常、ジャブは軽く相手との距離をはかるためのもの。しかし、城のジャブは重く、迅かった。
「これがジャブや」
前田の顔がみるみる腫れあがる。鞭のような左ジャブ。鋭い。強靭な手首。
かわしたつもりが、伸びてくる。
反撃の拳は空を切るばかり。
そして、ジャブから、いきなりの右ストレート。
もろに、前田の顔面に槍のように突き刺さった。
脳が揺れる。
「これが、ワンツーや」
よろめく前田。
その一瞬の間隙を見逃すはずもなく、城は、前田の懐に飛び込んだ。
ボディから顔面に容赦のないコンビネーション。上下の打ち分けは、前田の両腕のガードをものともしない。
城の目にはガードの綻びがよくわかった。
何発も鋭く重いパンチをまともにくらう前田。棒立ちの状態。
しかし、倒れない。耐える。ダメージは蓄積されていく一方だった。
「前田ー!」
アヤメが金網に指をかけ、檻を揺さぶる。
その瞳に、城が、故意に足を掛け、前田を倒す光景が映った。
追い討ちをかけるように、城は倒れた前田に蹴りを加え始めた。前田は横転し、苦痛に顔を歪める。
金網の周りで観戦しているディーヴァのひとりが、アヤメの肩に手を置き、言う。
「もう、前田も終わりや、次はお前の番やで」
アヤメは振り返り、
「雑魚が、きたねー手でさわんじゃねーよ…、どタマかちわんぞ!ボケ!」
肩に置かれた手を反対にねじり上げ、隊員を投げ飛ばす。アヤメの華奢な風貌の内側に、猛獣を棲まわせている片鱗が垣間見えた。
その勢いのまま、城に向かって叫ぶ。
「おい!城!きたねーマネすんな!それでもボクサーか!」
「おまえは、アホか!これはボクシングやない、喧嘩やで!まさか、ラウンド間のインターバルなんか期待してへんやろな!」
周囲にどっと笑いが起こった。
「くそっ!ボクシングじゃ、やつのほうが一枚も二枚も上手…、いったい、どうすれば…」
アヤメの言う通り、現段階では、城のほうがパンチのスピードもはやく、動態視力も上回っている。リングでの闘い方も熟練していた。このままでは、なぶり殺しにされるのが目に見えていた。
それでも、前田は立ち上がる。傷だらけになりながらもー。
眼光は鋭く、城を睨みつけていた。
「それが…、お前のボクシングか…、だったら、今度は…、わたしが…、お前に…教えよう…」
「へえ、何教えてくれるんや?」
「“マジ”の意味を…」
不意に
開け放たれていた窓から、清浄な風が、荒れ果てた大地のようなリングの上を吹き抜けた。
城エリコの軽いフットワークからのキレ味鋭いパンチ。前田は避けてはいたものの、かろうじて、という状況であった。一発一発が迅く、重い。
問題はもうひとつ。檻(リング)だった。約20フィート四方を完全に空間的に把握している城。有棘鉄線の巻かれたロープに前田を追い詰めるように計算し、パンチを打ち込んでいた。前田もいつものような縦横無尽の動きは制限され、苦戦を強いられるほかなかった。
城の余裕の笑み。
「お前を倒せると思たら気分上々や、いまから本当のボクシング教えたる!」
前田はリング中央で足を止めた。望むは打ち合いだった。
「教えてもらおうか…、そのボクシングってやつを」
「ええ心構えや!ボコボコにして、土下座させたる!」
前田を中心に円を描くように、左回りにステップを踏む城。前田もその動きに合わせ、身体の向きを変える。
城は左ジャブを連打する。通常、ジャブは軽く相手との距離をはかるためのもの。しかし、城のジャブは重く、迅かった。
「これがジャブや」
前田の顔がみるみる腫れあがる。鞭のような左ジャブ。鋭い。強靭な手首。
かわしたつもりが、伸びてくる。
反撃の拳は空を切るばかり。
そして、ジャブから、いきなりの右ストレート。
もろに、前田の顔面に槍のように突き刺さった。
脳が揺れる。
「これが、ワンツーや」
よろめく前田。
その一瞬の間隙を見逃すはずもなく、城は、前田の懐に飛び込んだ。
ボディから顔面に容赦のないコンビネーション。上下の打ち分けは、前田の両腕のガードをものともしない。
城の目にはガードの綻びがよくわかった。
何発も鋭く重いパンチをまともにくらう前田。棒立ちの状態。
しかし、倒れない。耐える。ダメージは蓄積されていく一方だった。
「前田ー!」
アヤメが金網に指をかけ、檻を揺さぶる。
その瞳に、城が、故意に足を掛け、前田を倒す光景が映った。
追い討ちをかけるように、城は倒れた前田に蹴りを加え始めた。前田は横転し、苦痛に顔を歪める。
金網の周りで観戦しているディーヴァのひとりが、アヤメの肩に手を置き、言う。
「もう、前田も終わりや、次はお前の番やで」
アヤメは振り返り、
「雑魚が、きたねー手でさわんじゃねーよ…、どタマかちわんぞ!ボケ!」
肩に置かれた手を反対にねじり上げ、隊員を投げ飛ばす。アヤメの華奢な風貌の内側に、猛獣を棲まわせている片鱗が垣間見えた。
その勢いのまま、城に向かって叫ぶ。
「おい!城!きたねーマネすんな!それでもボクサーか!」
「おまえは、アホか!これはボクシングやない、喧嘩やで!まさか、ラウンド間のインターバルなんか期待してへんやろな!」
周囲にどっと笑いが起こった。
「くそっ!ボクシングじゃ、やつのほうが一枚も二枚も上手…、いったい、どうすれば…」
アヤメの言う通り、現段階では、城のほうがパンチのスピードもはやく、動態視力も上回っている。リングでの闘い方も熟練していた。このままでは、なぶり殺しにされるのが目に見えていた。
それでも、前田は立ち上がる。傷だらけになりながらもー。
眼光は鋭く、城を睨みつけていた。
「それが…、お前のボクシングか…、だったら、今度は…、わたしが…、お前に…教えよう…」
「へえ、何教えてくれるんや?」
「“マジ”の意味を…」
不意に
開け放たれていた窓から、清浄な風が、荒れ果てた大地のようなリングの上を吹き抜けた。