#13ー1☆
深夜の病院ー
手術室の扉の前で、手術中のランプをうらめしそうに睨みつけているシブヤ。
長椅子に座り、うなだれているトリゴヤ。
壁を背に、瞳を閉じ、腕を組んでいるブラック。
その隣には、後輩の阿部もいた。
暗い廊下には、シブヤの苛立ちをあらわす、ブーツを踏み鳴らす音だけが、むなしく響いていた。
「すいません!やっぱり、自分のせいです!」
自分との闘いのダメージが残っていたから…。
阿部が、重い沈黙を破り、口を開いた。
「お前のせいなのかよ!?」
シブヤが、阿部に詰め寄る。
「静かにしろ…ここは、病院だぞ…」
「うっせー!ブラック!やんのか!こらぁ!いつも、冷静ぶりやがって!」
ブラックとシブヤの間に、激しい火花が散る。
にらみ合う二人。
一触即発の状態。
「やめてー!」
椅子に座り、両耳をふさいで、トリゴヤが叫ぶ。
「サドが死んじゃうかもしれないんだよ!こんなとこで、ケンカしてる場合じゃないでしょ!」
「ちっくしょー!いったい誰がやりやがったんだ!?こんなむごいこと!そいつ、見つけだして、ぜってー、ぶっ飛ばしてやる!」
壁を殴りつけるシブヤ。
「気持ちは、皆、同じだ。必ず見つけ出し、地の果てまで、追い詰めて…潰す」
ブラックの言葉に、阿部も頷いた。
「で、あの強いサドさんを、あそこまで非道い目にあわせたのは、どこのどいつなんだ?」
「目撃者の情報によれば、小柄でツインテールだったらしい。阿部の話だと…」
「おそらく、あのやり方を見ても、矢場久根の新総長だと…思います」
「なるほど…」
標的は、はっきりした。
少しだけ、頭が冷えたのか、シブヤは、
「さっきは…わるかったな…」
そう言って
手術室のほうを振り返った。
そのとき、手術中のランプが、ふと、消えた。
「生命に別状はありません。ただ、頭部をかなり、強く打ってますので、意識を取り戻すまでは、決して、予断を許さない状態です」
という医師の診断にー
「予断を許さないって、どーゆーことだよ!医者だろ!治せよ!早く、治してくれよ!」
シブヤが、くってかかる。
医師は、そそくさと、その場を離れた。
(サドさん…早く目覚まして…また、叱って…よ)
膝から崩れ落ちるシブヤ。
やりきれない思いで、その様子を見守るブラック。
(サド…。みんな、待ってるんだよ…)
震える手をおさえ、
つとめて
気丈にふるまおうとするトリゴヤだった。