#8
親衛隊十人衆、カノンの拳法家ならではの多彩な攻撃は、徐々に、前田を壁際に追い詰めていた。パンチひとつとっても、通常のそれとは軌道も出所も違う。加えて、ヒジやヒザ、それらを組み合わせた無限の打撃コンビネーション。
前田の天性の勘が、かろうじてクリーンヒットを避けていた。
(このままじゃ…ダメだ)
前田が、危険を覚悟で、一歩踏み込んだ。
直後ー
カノンの拳が、前田の顔面をとらえた。
「ぐはっ」
前田の頭が跳ね上がる。そして、ヒジ、蹴り、拳、ヒザ、ヒジと、相手が倒れるまで止まらない無限コンボ。
たまらず、前田が崩れ落ちる。
「はぁ…はぁ…」
「万全の体調のお前と闘いたかったよ」
皮肉ではなく、カノンの本心の発露だった。
「うあああ!」
立ち上がりざまの
前田のパンチは、無情にも、カノンには届かない。
カノンは、壁に向かって跳んでいた。
そして、反動を利用した蹴り。三角跳び。
前田がガードすらできず、吹き飛んだ。
拍子抜けした
カノンは何か思いついたように、
「そういえば、さっき、事務用のケータイに…」
と言って、スマートフォンを取り出した。
そして、それを、伏している前田の側に放り投げる。
スマートフォンのディスプレイには、生徒会長の傷ついた姿、
と、
だるま、学ラン、歌舞伎シスターズの捕らわれている姿が、一緒に写っていた。生徒会長同様に、皆、顔の生傷が痛々しい。
前田のなかで、ぷちっと何かが切れる音がした。
半瞬後ー
前田の右の拳が、カノンの顔面を貫いた。
よろめくカノン。
「これが…お前の本気か…」
カノンが、うれしそうに言った。
「世の中…マジしかねーんだよ」
前田の怒りは、頂点に達していた。