森絵都「ラン」



本題に入る前に私の話。6月くらいから月に5~6回、約10Kmを走っている。

5月の高校の同窓会で盛り上がった勢いで『東京マラソンにでも出てみようか』などという軽口をたたいて、あの一種お祭りさわぎの東京マラソン、東京の有名な場所を走るのも悪くないなと、半分その気になって、じゃあ試しに走ってみようかと走り出したのだ。
私はずっとスポーツを続けてきているが実はマラソンや水泳などの持久力を必要とするものはあまり得意ではない。体力測定をやっても瞬発力や筋力はすこぶる良いものの持久力だけは平均以下。基礎体力はあるものの、心拍数がすぐに上がって、大汗はかくし、回復も遅い。呼吸がうまくないのかもしれないなも常々思っているが、とにかくあまり得意ではない。とはいえ、かの母校では毎年男子72km、女子40kmを12時間以内で完走するという今考えると実にとんでもない無謀な伝統行事があって、実際完走していたのだ。それを承知で入学しているのだからしょうがない。確かに走った。いや半分以上は歩いているはずだが。その記憶、これが勘違いのもとだ。そもそもあのピチピチとした高校生とは体力が違うのだ。当然回復力も違う。そもそもツライことを何故やるのだ。テニスのように相手に勝つといった喜びや気持ちの良いショットを放って、オレって上手いんじゃない?という気分になれるわけでもない。ただただ走るだけ。走っている格好がいいだろうなんて、あまり優越感を感じたりはしない。走る楽しみってなんだろう。自分が決めた距離・時間という目標への達成感?自分に打ち勝つ。少しでも以前の自分に打ち勝つ。かな。

まず、30分ゆっくり走るところから始めて、苦しくなったら無理はせずに途中歩いたりしながら、60分で10kmを目指して走っている。
とりあえずはまだ続けている。東京マラソンは7月から9月まで申し込み期間があって、私は申し込み開始翌日に申し込んだところもう既に定員の3万人を超えたので抽選になるとのアナウンスがされていた。先日、さて申し込み数は最終的にどうなったかと見てみると22万人を超えている。なんと7倍以上の競争率だ。うわあ、これは倍率が高い!何だか半分がっかり、半分ほっとしている。当たる可能性は低いなあ。でも、もし抽選で当たったらランニンググッズも買い替えようかな。本格的なランニングシューズやランニングタイツ。スポーツウォッチ。そして事前に10kmマラソンやハーフマラソン。なんて望みをつないでいるところだ^^。


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前置きが長くなったが9月号の『ランナーズ』に森絵都さんの新作「ラン」が紹介されていた。
森絵都さんの新作は走ることがテーマのようだ。『DIVE!』では見事なスポーツドラマを魅せてくれた。直木賞を受賞した『風に舞いあがるビニールシート』では人間ドラマを魅せてくれた。さて今回はどんな物語だろう。

『越えたくて、会いたくて、私は走り始めた』

夏目環は家族を亡くし、途方もなく大きな喪失感を抱えて生きる22歳の女性。環がある日、愛用の自転車「モナミ一号」を走らせたその先にまっていたものは?

走らなくちゃ…一歩でも前に進むために―― もしもあの時こうしていたら…環の心は、突然家族が亡くなったあの日から止まってしまっていた。もう一度家族に会いたい。ある日、自転車を走らせたその先に待っていたものとは?出会いと別れ、誰の人生にも必ずついてくる喜びと悲しみ。せつなさとあたたかさ溢れる森絵都ワールド。一歩踏み出す勇気をくれる一冊です。 


森絵都さんは、実際にフルマラソンに臨んでしまった。最初は緩く始めたがそのうち物語にも登場する久米島マラソンを見事完走したようだ。だから走ることをめぐるつらさ、疲労感、くじけそうになる気持ち、でも走り抜いた気持ち良さはどこまでもリアルに書かれている。


ファンタジーなつくりの中でマラソンを通じて、家族や周りの人たちとの係わり合い、前向きに生きることの素晴らしさを教えてくれる。

冒頭に書いたように、私としては走りの真っ只中にいるので、背中を押してくれる、まさに今ぴったりの一冊だった。