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小路幸也「東京公園」



小路さんの作品を読むのは3作品目。
「東京バンドワゴン」シリーズは下町の古本屋を舞台にした大家族の物語。
寺内貫太郎一家などのホームドラマを思い起こさせてくれる心温まる物語だった。


この作品は北海道旭川から東京に出てきている大学生の圭司が主人公。
ルームメイトのヒロとの二人暮らし。

圭司は小学5年のときにカメラマンだった母親を病気で亡くした。
母親の形見のニコンF3を小学6年から使い続け自分もカメラマンを目指している。
大学では建築学科に通っているが、これもカメラマンとしての器を大きくするため。
圭司は公園で楽しんでいる見知らぬ家族の写真を撮ることに生きがいを感じている。
もちろん被写体となる家族に説明をして許可を得てからだ。


同居しているヒロは3歳年上でライターやグラフィックデザイナーをしている。
昔は傷害事件を起して少年院に行ったことがあるというがイケメンで優しい。
その傷害事件の後日談が明かされるがなかなか泣かせる話だ。


圭司には父の再婚相手の連れ子である5歳年上の義理の姉の咲実がいる。
東京で働いており、圭司のバイト先のバーなどで時々会うようにしている。


また幼馴染の女の子で東京で再会した富永がよく遊びにきている。
ご飯を食べながら持ってきたDVDで映画を観る。


そんな圭司がいつものように公園に出かけ、家族の写真候補を探していた。
水元公園で会った初島という男性から風変わりな依頼を受ける。
「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」
圭司は自分の趣味とは合っているが、尾行して撮るのは気が引ける。
しかしバイトとして圭司は初島の依頼を引き受ける。

初島さんの妻、百合香さんは子供を連れて東京の彼方此方の公園へ出かけていく。
圭司は気づかれないようにしながら百合香さんを尾行して写真を撮っていく。

圭司は次第にカメラ越しにある笑顔に惹かれていく。

・・・。

これ以上は書かないようにしよう。


この作品はそれほど大きな事件が起こるわけもなく淡々と日常生活を描きながら
圭司の心の揺れ動きを移していく。

登場人物にいい人が多く、読んでいて感じるのは思いやりの温かさ。
「東京バンドワゴン」シリーズでもそうだが小路さんの特徴かもしれない。
家族を思いやる、友達を思いやる、そして自分はどうしたらいいか。
ああ、そうか。読み終わって、そうだよな。と納得する。
大きな感動とかではなくて、じんわりと温かいものがこみ上げてくる作品だ。


もう少し他の作品も読んでみようかなと思う。


内容(「BOOK」データベースより)
「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」―くつろぐ親子の写真を撮ることを趣味にしている大学生の圭司は、ある日偶然出会った男から奇妙な頼み事をされる。バイト感覚で引き受けた圭司だが、いつのまにかファインダーを通して、話したこともない美しい被写体に恋をしている自分に気づく…。すれ違ったり、ぶつかったり、絡まったりしながらも暖かい光を浴びて芽吹く、柔らかな恋の物語。 

内容(「MARC」データベースより)
ファインダー越しに感じてるこの気持ち。これって、ただの好奇心? それとも、もしかして恋? カメラマン志望の大学生・圭司をとり巻く様々な人間模様。柔らかな光を浴びて、ゆっくりと芽吹く恋の物語。