「豆は煮えたか」 朝井まかて

掌を両手で優しく包むように触れると、その人の近い未来が見える
主人公のお玉には、そんな能力がある
深川で夫婦で水茶屋を営んでいたお玉
不慮の事故で菓子職人の夫を亡くす
あの日、私が代わりに行っていれば…お玉の心にずっとある、あの日の後悔
お玉1人でなんとか商売を続けてはいるが、名物だった「ささげやの豆餅」はどうやっても夫の味を再現することができないまま「不味い豆餅」を作り常連客に味見をお願いする毎日
ささげやの商売とは別にお玉が人知れず営んでいた占い
口伝えで知った人が「ささげや」を訪れ
お玉の手の空いた頃合いを見計らって「ある符牒」をささやく
それに応じて、お玉の後について奥へと案内され占ってもらう
お代はお気持ちで
お玉は、人の人生を左右するような占いを生業とする気はなく頼まれごとを断れない性分で続けている
親の勧める縁談相手より好きな男と結ばれたい娘、仲良しの娘が好きな相手を実は自分も好きで諦めきれない娘の話から始まり
本業の占い師が顧客離れに焦る話、売れない歌舞伎役者の未来、ささげやの常連客の老夫婦の話、手広く植木の商売をしている2代目の主の未来など
頼って来た者を無碍には出来ない性分のお玉
いつの間にか「似たような能力を持ってがために人知れず苦労してきた人達」が集まって来る
それぞれが繋がりを持つ短編が6編
人と人との縁で世の中は出来ている
心が温かくなるような人情話