「立身いたしたく候」梶よう子 読了 | pyonpyon ブログ

pyonpyon ブログ

日々のこと。
趣味のこと。
読書記録。
テレビ。
海外ドラマ。
好きな音楽。
松任谷由実。


「立身いたしたく候」 梶よう子 講談社

9月4日に読了
2014年2月刊行です

こんな面白い本の発売を見落としてきたなんて!
な、面白い作品でした

主人公の野依(のえ)駿平、繁盛している瀬戸物屋「つる屋」の五男で十七歳

一年前に、百五十俵の御家人(お目見え以下)の野依家へ幼い娘の許婚として養子に入った

義父の野依孫右衛門は、家督を二十歳で継いで二十八年間、無役無勤の者たちが属する小普請組のまま、一度も御番入り(無役の者がお役に就く事)しないまま隠居願いを受理された

駿平はどういう経緯で武士になったのか?

孫右衛門、虚弱な体質で病気ばかりしている
自身の病弱さを痛感している孫右衛門は、お家の存続のためなら多少人品卑しかろうが健康が一番!と婿探しに奔走
そんな時に手跡指南をしている友人から紹介されたのが「つる家」の五男
商家の倅なら書も算術も得意であろう、こちらは貧乏御家人の家、妻も四十路で今さら娘と年の近い元服前の少年を養子にしても躾と教育を施す余裕はない
つる屋の夫婦は貧乏御家人との養子口に苦い顔だったが当の駿平はこのまま実家にいても違う商家への婿養子か運が良ければ分家か…
そう考えると、いっそ武士になるのも面白いか!とその話に乗ったのだが
見た目は武士になってはみても、武士としての作法や所作は難しく苦労の毎日

野依家は番方(城内警備などを務める武官)の家柄、体の弱い義父に対して義母は武芸達者
「まずは御徒を目指しましょう」と木刀での指南も始まり毎日へとへとになる駿平

お役をもらうため、決められた日に手土産を持って通う上士の家での長蛇の列
口利きをしてやろうと近づく怪しい男
何かと駿平の世話を焼く、手跡指南所からの幼馴染で部屋住みの矢萩智次郎など登場人物も面白く、実家が瀬戸物屋ならではの理由で長崎へ旅に出る流れなど場面転換も無理がなく面白い
旅に同行するつる屋の大番頭のしっかり者ぶりとその後も良い

養子に入った当初の許婚の「もよ」はまだ十歳
駿平のことを「兄上」「兄さま」と慕う姿が愛らしい
成長するにつれて、なかなか厳しい武家の娘となり、先では頼りになる奥さまになるのでしょう

幕末が近づく中、これから武士はどう生きて行けばよいのか
武官に拘らず自身の特技の算術で身を立てる方法を自ら探る駿平の成長ぶりも良い

駿平の頑張りとは別の方法で身を立てる道を探る「お元気な智次郎」の幸せも願う

いい終わり方の話でした