
「父の恋人、母の喉仏」堀香織
光文社
初めての作家さんです
まずは「私はこの人が好き💕」
作者が幼い頃に離婚した両親を看取りをするまでの家族の話
自身の事、身内の事を本にする場合、何でもかんでも書くわけにもいかないだろう
この作者、エピソードの選別が絶妙なのだ
離婚した親の話に有りがちな、仲が悪くなる過程のエピソードなどはサラッと短い
離婚と再婚を繰り返す父だが長期休みには、父の住む金沢に来る娘達にとって居心地の良い環境を作っている(その間、何度かパートナーは変わるが皆、優しい)
ダメな父親だけど、子供をおもっていた時期もちゃんとあったわけだ(基本的には身勝手🤣)
このお父さん、金沢の方言で言うところの「だちゃかん」
呆れるほどダメなヤツのこと
装丁にある写真でわかるようにかなりのハンサム
愛嬌があり、人たらし、浮気性
建築の才能(二級建築士で金沢で建築事務所を経営するが倒産)はあったが経営には向かないタイプ
両親の別居で作者と妹は最初は父と金沢に残り、父の若い恋人と暮らしていた
文頭の話は、この女性との関わりの話なのだが、グッと引き込まれてしまった
事務所にアルバイトに来た彼女はいつしか父と不倫関係に
その後、妻は別居し東京へ
姉妹たちのお姉さん位の年齢の若い恋人は姉妹をとても丁寧に可愛がっていて姉妹も懐いていた
一緒に入浴した話、合唱発表会の話、どちらも子供の気持ちをよく覚えているな、と
3人で抱き合う場面はあくまでも疑似母子ではあるが、心が温かくなる
作者は大人になって、彼女と再会する
この娘さんが本当に心優しい人だった事がよく伝わる話が後半にある
母は、東京でクラブ勤めをしながら(父親は養育費をほぼ払わなかった😰そういう人なのだ)
子供3人をそれぞれ大学、専門学校に進学させる
ミドルエイジとなった機会に生まれ故郷の下田へ戻り、2度目の青春を謳歌していたが突然の病
その後の母の介護と看取りの話、母の恋人の話も変にドラマティックにはせず、簡潔な文章と表現が胸にしみる
作者は勿論だが、末の弟が穏やかで優しい
母が精一杯育てた子ども達から伝わるのは思いやりと優しさ
石黒謙吾による、あとがきの内容も良い
その後に作者、あとがきとして追加の短い章があるので最後まで読んでほしい
読み飛ばすような所は一つもない、大満足な内容でした