
「口出し屋お貫」中島要 祥伝社
武家屋敷がひしめく本所の中の横網町に看板も出さずに軒下に下げた木札「口入れ やよいや」
主は、2年前に隠居した祖父時三の跡を継いだ22歳の孫娘「お貫」
お貫(かん)は「やよいや」跡取り息子の春平が時三の反対を押し切って駆け落ちした女との間に生まれた娘
お貫の生い立ちを含めた、父の春平と母の素性は後半の話で解き明かされる
ふりだし、悪縁、世間知らず、忠義者、卯の花、老愁、の6章
それぞれ「やよいや」に何らかの縁があって訪れる客であったり
「口出し屋お貫」の呼び名通り、世話焼きのお貫が口出しした事で繋がった縁などの話
中島要作品に登場する主人公の女性は、少し冷めた目線で世間を見る目を持っているが情に厚い
けれど情だけに流されてしまう事は無い
この作品で、お貫とよく行動を共にする美晴
元は大見世の花魁で身請けされて妾となり、今は三味線の師匠をしている
お貫とさほど年は変わらないが乗り越えて来た苦労がある分、惚れ惚れする生き様
中島要の描く市井に降りた元花魁たちはとても魅力的
お貫、美晴、それぞれの章に出てくる女たちとの個性や生き様の対比がいい
第一章「ふりだし」は主人公のおれんの厚かましさにイライラしてやや退屈するが、お貫や主な登場人物の紹介も兼ねているので辛抱して読み進めると
徐々にいつもの中島要作品の面白さに
最後の「老愁」は、続きを思わせるような終わり方をしている
続編はあるかもしれないけど、シリーズにはしないような気がする
他の作品でもシリーズにしようと思えば出来そうなものも終わらせてしまっているからね
中島要は、次回作が待ち遠しい作家さん