「行成想歌」佐藤雫 読了 | pyonpyon ブログ

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松任谷由実。



「行成想歌 」 佐藤雫  光文社

2024年12月末に発行された本
佐藤雫の作品を探していて見つけました

昨年は大河ドラマ「光る君へ」を夢中になって見ていたので大変楽しめました

序章「花に会う」
15歳の行成が元服し初めて花山帝に謁見し、清涼殿を退出した後に花びら舞う中である少女と出会う

この出会いが始まりであり、後半で分かる当時行成が知らなかったもう一つの出会いへと繋がる

続く第一章では行成は、24歳になっており蔵人頭(帝の側近、宮廷諸事に関わる官職)に任じられ
ここから、一条天皇・懐仁との深い繋がりが始まる

「光る君へ」では道長と良好な関係でしたが、ここではもっと冷めた関係
行成は帝のため、帝一筋にお勤めをしているので
ある意味敵対関係になっている道長とは一線を引いている
官位の差もあるしね

藤原行成とは、どういう立場の家柄だったのか?
光る君への時はあまり詳しくは語られていなかったので

序章にある説明を少し

行成の父、藤原義孝は円融帝(一条天皇の父)の摂政・藤原伊尹(これまさ)の息子
血筋から言えば、藤原氏の嫡流
だが、行成が幼い頃に死別したため、その立場は藤原氏の傍流となり、父の弟であった藤原兼家の家系が嫡流となり昇進栄華の階を昇っている
藤原兼家は、道隆、道兼、道長の父

帝の気持ちに寄り添いながら道長の圧力にも抗わなければいけない立場であり、自身で納得しながらもの複雑な心持ちであった行成を支えていたのが妻の奏子

行成は、この時代には珍しく奏子以外に妻を持たず仲睦まじく円満な家庭

ただただ、定子だけを愛し続けていたい一条天皇は、一人の女性だけを愛するということが出来る行成が羨ましいと何度か口にする

序章から終章まで九つの話があり、光る君へで描かれた紫式部の話も無く(登場すらしない)
主に登場するのは、行成と一条天皇、定子(清少納言も)

道長は、定子の死にも何か関わったのか?と思わせるような描写もあり、悪役です

登花殿での華やいだ生活も少しなので清少納言と公達との歌のやり取りもほぼないけれど

定子が実家の没落で不遇になってゆく様も淡々と描きそこで妙なお涙頂戴な流れにはしない

「光る君へ」では描ききれなかった一条天皇と行成との深い繋がりが美しい

また終章での、締めくくりも好きです