「惣十郎浮世始末」木内昇 読了 | pyonpyon ブログ

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松任谷由実。



「惣十郎浮世始末 」木内昇 中央公論新社

  初読みの作家さんです 
気に入った!気に入った! 

 他の方のレビューを見ると、捕物帖は初みたい

 主な登場人物 
主人公、北町奉行所定町廻同心 服部惣十郎 
手下の岡っ引き 元スリの完治 
服部家の屋敷の離れに住む惣十郎の小者 佐吉
出羽国で家族を天然痘で亡くし苦労の末に医師となった、惣十郎が信頼を置き度々検死を依頼する口鳥梨春 
付き合いのある家主の出戻り娘で服部家の下女 雅 

 500頁を超える長編ですが、5章の短編がそれぞれ繋がりを持ち最終章で解決、という筋立て

 火事の半鐘が鳴り響く所から始まる話は、薬種問屋の火災現場から2体の焼死体があがる殺害事件へ、1体の焼死体は身元不明のままで話は次へと進んでいく
 霊力を騙り高価な御札を買わせる「霊感商法」や老女の変死死体から老いていく母の介護に疲れての殺人の疑いが浮かぶ「介護殺人」、天然痘への漢方医と蘭方医の取り組み方も上手く小説に取り込み、事件の大事なキーワードとなっている
 いろんな事件が組み合わさって、惣十郎が思ってもみなかった過去の事件へと繋がりを見せる

 念入りな捜査と惣十郎の人柄が事件解決の糸口を探り当てていく 

 登場人物は魅力的なキャラクターが多い
 惣十郎は、同じ同心でもあさのあつこの「弥勒」シリーズの小暮信次郎ほど嫌な奴じゃなく😝思いやりのあるいい男 
上役の娘を妻に娶るが、3年程で流行り病で亡くしている 
だが、惣十郎には心に秘めた恋い焦がれた相手(意外な人物)がいる設定

 娘の頃から惣十郎の事が好きだった雅、服部家に奉公している現在はこの上なく幸せなのだが、惣十郎の前では好きが高じて素っ気ない固い表情になってしまう
庭に来る迷い猫に餌をやりながら自分の惣十郎に対する気持ちを切々と語っている姿が可愛い

 手下の元スリ完治は、仕事の出来る男で佇まいと仕事っぷりは池波正太郎作品にいそうな男 
惣十郎も頼りにしている 

 完治にライバル心がある小者の佐吉 
彼は自然体で単純なところのある男で、完治などは何故惣十郎が佐吉を使い続けているのか?と思っている 
ある時、惣十郎は完治に「佐吉の良さは物事をそのまま受け入れて伝えるところなんだ、自分やお前のように先読みをしたり穿った見方をしてしまうと真実が見えなくなってしまうんだ」と話す 
 また別の場面では、完治に「俺が同心になっての一番の手柄は、お前を手下に持った事だ」とさり気なく言う 
 完治、心の中でウルウル(;_:) 

 結末は好き嫌いがあるかもしれないけれど、まあそれはそれで…という感じで惣十郎の日常が始まっているという終わり方を私は気に入っている 

 新刊が楽しみな作家が増えたことが嬉しい💕