
今年もあと1ヶ月と半分で終りますが
「今年一番の本」
森鴎外の末っ子「類」が主人公の森鴎外一家の話だが
鴎外は類が小学五年の時に亡くなるので
物語の主な登場人物は
類と姉2人の母で鴎外の妻(後妻)志げ、長女の茉莉、次女の杏奴(あんぬ)、末っ子で次男の類
長男の於菟は、先妻との子で類とは20才も年が離れており、志げとの折り合いもあまり良くなかったこともあり、殆んど出てこない
読み始めは旧仮名遣いで書かれた「スカアト」「スヰトピイ」など読みにくい単語が多く
読み始めて直ぐに止めた前作「輪舞曲」を思い起こして憂鬱になったが、内容の楽しさにそんな気持ちも直ぐにふっとんでしまった
小説でありながらエッセイのようでもあり、映像を見ているのか?と錯覚をおこすようなテンポの良さと言葉選びも素晴らしい文章に📖の分厚さも忘れるほど夢中
読みながら目に浮かぶ映像は昭和の頃に特番で年に1~2回だけ放送していた「久世光彦演出、黒柳徹子ナレーションの向田邦子ドラマ」のよう
登場人物が全て実在である上に文壇の大先生ばかり
作者もかなり気を入れて言葉選びに気を使ったのではないだろうか?
鴎外の死後、潮が引くように身内も知人達も一家から離れて行ってしまい、家族は辛い生活を続けて行くのだが、そんな中でも少し浮世離れした長女「お茉莉は上等✨」と鴎外からも言われていた彼女の少しズレ気味の金銭感覚とお嬢様気質は可笑しく、いつまで経っても「何者にもなれない鴎外の不肖の息子、類」の波乱万丈の人生も言葉の選び方ひとつで暗い話にならず最後にやっと辿り着く穏やかな生活まで楽しく読み終える事が出来たのは朝井まかての文章の力だな~
何が大きな賞をとるのでは?な予感がする今年一番の作品でした(今のところ😅)