「恋情の果て」 北原亞以子 光文社
女性の恋愛を書いた北原亞以子らしい作品
12編の短編
いつか大店の若旦那に見染められて嫁に行きたい・・などと淡い夢を見つつ婚期を逃しかけている娘の話
父親も職人、このまま身近にいる職人のおかみさんになっちゃうと、今住んでいる佐久間町と職人だけしか知らずに死んでしまう!だから職人なんかには嫁ぎたくないといつも言っている娘おりょう
おりょうを慕っている娘が同じ長屋の仙太の嫁になろうか、どうしようかと悩んでいるが、おりょうの「職人のおかみさん云々」に影響されてなかなかよい返事をくれない
少し前、仙太はおりょうにふられていた
意趣返しにと知り合いの二枚目の職人に頼みおりょうを落とさせて捨てさせようと仕掛けるが・・・
表題にもなっている「恋情の果て」
下総から逃げてきた若い二人、網元の一人娘おとせと漁師の三次
江戸に出て来て公事宿に泊まっていたが、二人を見て駆け落ちだと見破った宿屋の主から「このままではお金がどんどん無くなる、仕事を見つけた方がいい」と勧められ二人で町中へ出るがスリに有り金全てを掏られた挙句に公事師を名乗る男に騙され女郎屋に売られる事になったおとせ
女を買いに来た女郎屋の女将の気が変わり、男の三次を連れて行く事になる
おとせに「逃げろ」と叫ぶ三次の事を心配しながらもその場から逃げおおせる
女郎屋の女将は若い男を養子として家に入れ愛人とし飽きたら捨てるを繰り返していたが三次の事は気に入ったらしく亡くなるまで一緒におり、その後は三次が女郎屋の主になっていた
おとせは初めに世話になった公事宿を頼って女中奉公を世話してもらい、煩い年寄りの世話をよく辛抱して老人を看取り、もらったお金で小さな料理屋を開く
三次との再会を夢見て男も寄せ付けずに必死に働いていたおとせの前に一人の浪人が現れる
浪人は公事の揉め事などを片づける仕事をしている男
三次と一緒に居た頃に二人を見かけた事があったというその男は、男の方は女房も貰っていると言うのに義理立てして自分で自分のからだを縛っていれば気が済むんだ!馬鹿だよお前はと言われ心が動く
十年待っても会う事も出来ない三次と不思議な魅力を持つ男とを比べ、男を選んだおとせだったが、直後に三次が商売仲間とおとせの店を訪れ三次と再会をする
待って待って待ち続けた男との再会に心が揺れるおとせだったが、当然三次は若かった頃のあの三次ではない
わかりつつも関係を結んでしまったおとせだったがそれは虚しいものであり、二人の再会を知った浪人は三次が相手じゃ叶わないな・・と自嘲気味に言い、おとせの愚かな選択に呆れたように出て行ってしまう
他には
若くして好きな男と所帯をもったが我儘が高じて分かれてしまった男と紅を買う店の前で再会する
風邪で寝込んでいる女房に紅を買いに来た男が店に入るのをためらっていた男に、女は自分が買った紅を渡す
お互いにまだ少し想いは残っているがもう元には戻れない二人
若気の至りを悔やむ女の話など
最後の2編は、ん?って感じの(女の恋?みたいな)作品だった (^_^;)
これが発売される最後の小説になるのではないかしら
いい作品だった