「恋歌」朝井まかて | pyonpyon ブログ

pyonpyon ブログ

日々のこと。
趣味のこと。
読書記録。
テレビ。
海外ドラマ。
好きな音楽。
松任谷由実。

恋歌  「恋歌」 朝井まかて  講談社



祝!直木賞って事で、ずっと放置していた感想メモを引っ張り出しての更新です(;^_^A


樋口一葉の師匠である中島歌子の生涯


序章、1~6章、終章で構成されているが、序章は歌子の弟子で小説家となった三宅龍子(筆名は花圃)が臨終間近である歌子の家の整理をしている時に歌子が書き残した「若き日の歌子の事を書いた手記」を見つけて読み進めるうちに話が始まっていく

終章でまた龍子の場面に戻る(歌子の葬儀)


中島歌子は(登世)小石川の池田屋という宿屋の娘として生まれる


池田屋は水戸藩上屋敷が目と鼻の先にあったので、御定宿として指定を受け繁盛を極めた


年ごろとなった登世は、水戸藩の藩士が出入する中で、眉目秀麗で将来を嘱望されている林 忠左衛門以徳(もちのり)に恋をしてしまう


両親の反対を押し切り、以徳と結婚し水戸へと嫁いで行く登世だったが、質素を常とする水戸の気風になかなか馴染めないお嬢様育ちの登世は以徳の家でも孤独だった

以徳は結婚後は江戸に居る事が多く水戸へは滅多に戻って来られない

家内を取り仕切る以徳の妹「てつ」は登世を無視し続け、土地にも家風にも馴染めない登世をささえるのが池田屋から付き添ってきた爺やの清六


影となり日向となりして水戸の人と嬢様の間をとりもったり、爺やの明るく人懐っこい性格のお陰で登世は少しずつ水戸に馴染んでいく


清六の登世への愛情は深く、嬢さまを水戸に一人で置いていけないと池田屋を辞めて登世に付き添って水戸までやってきた

登世も爺やの事を思いやり頼っており、この二人の間には温かい愛情がある


元を辿れば水戸の出身だったという清六は以徳の家で仕えるうちに影響を受け(以徳が在宅の時は水戸藩の若い藩士が集まり喧々諤々とこれからの世に付いて皆で話す席の隅に座る事を許されていた)最後は天狗党の同士として一行と行動をともにすることになる


水戸では諸生党と天狗党の争いが続き、天狗党派が負けた事により、登世もてつも入牢させられる


その後、牢獄での生活から解放されるが水戸に居る限り反政府の人間の家族だと言う事で命の保証もない

登世は、恋人が死んだ事で生きる気力を失った「てつ」を連れ江戸へ脱出する


頼りがいが無くいつまでも娘の様に幼かった登世が夫の死や爺やの死を乗り越えて成長していく


その後、歌子となった登世の生活は、歌塾での成功に反して家庭運のなく、生涯以徳を超えるような男性にもめぐり会う事はなかった


花圃や樋口一葉を育て歌人として名を残すが、晩年は家塾も閉じ華やかさとは程遠い生活の中で60歳の生涯を終える


ここで書かれている若い頃の登世は、素直で可愛らしく一生懸命な女性

嫁ぐ前の娘時代、短かった結婚生活、入牢生活とその後の生活、この人生の前半の登世が実に愛らしく魅力的に書かれているので、今まであまりよい印象(身持ちがあまり良くないみたいな印象)が無かった中島歌子の見かたが少し変わったかな


読んでから、随分経ってしまったのでザックリしか書いてないメモでは説明が難しかったな


爺やの体の事を(爺やが天狗党の一員として捕まった後)「爺やは年寄りだから、そんな状況におかれたら死んでしまう」と泣いてしまう登世、以徳の妻になったとはいえまだまだ幼さが残っているのがよくわかる


若き日の中島歌子ってこんな可愛い女性だったのです