「安井かずみがいた時代」 島崎今日子 | pyonpyon ブログ

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松任谷由実。

安井かずみがいた時代 「安井かずみがいた時代」 島崎今日子  集英社



世代は、ちょっとばかり違うんですけど、興味深く読みました


安井かずみと結婚の記者会見をした時の加藤和彦がステキ過ぎる~ラブラブと子供心に(いくつまでが子供?)思ったんだよね~


安井かずみの夫だった加藤和彦が♪ワンディ~ワンライフ~今日こそは~何かいい事がある~♪、みたいな事を歌って芝生の上に座っていたCMがあったんだよ


それが好きで好きで


加藤和彦は・・・高学歴、高身長、ハンサム、スマートな物腰・・・乙女の理想を体現してる感じだったような記憶がある



十分すぎるほど大人になった今では(特にこの本を読んだので)「こーんな男は、ちょっとなぁ~」って思うけれどね




私が安井かずみを意識した時は、彼女はもうシワが凄くて厚化粧のオバサンって状態だった



素敵な大人の女性になんか見えなかった(加藤和彦、こんなババアと夫婦生活してるなんて可哀相~と思ってた)



自分がけっこうな年になったこのタイミングでこの本を読んで・・・安井かずみの寂しさと悲しみが少し理解できるかな


一章一章が、安井かずみと関係があった人と安井かずみの代表作の歌詞を表題にしたインタビュー形式にはなっているけれど、問答になっているわけでもなく、ちゃんとした文章になっているので小説の様な感じで読める


安井かずみのエッセイの文章も取り入れて、その当時彼女が何を言っていたか、も分かるようになっている


あ~、あんなに性に奔放だった女性だったけど、案外保守的な考えを持っていて「妻」になる事にこだわりがあったのね~とか意外な面が見える



人によって、その時のエピソードのとらえ方(夫婦のどちらと付き合いが深かったか)が違って、同じような場面でもそれぞれの見方をしている事を対比もせずにそのまま載せているのもいい



インタビューを受けた人は、林真理子(この人は一番付き合いが浅いんじゃないか?って言うよりなんでコイツが混ざってるわけ?)、平尾昌晃、コシノジュンコ、稲葉賀恵、大宅映子、加藤タキ夫妻、新田ジョージ(かずみの最初の結婚相手)、かまやつひろし、吉田拓郎、渡辺美佐(ナベプロ社長)、オースタン順子(かずみの妹)等々、独身時代に付き合いが深かった人と結婚後に付き合いが深くなった人


特に後半の3人(吉田、渡辺、かずみの妹)の章が気持ちの偏りが無く冷静に安井加藤の夫婦を分析して理解していた事がわかる内容だった


全体としては、安井かずみの方に比重があるので「妻が亡くなって49日も経たないうちに再婚した加藤和彦はとんでもないヤツ」という書かれ方をされているのは、致し方ないかなと思う


かずみが亡くなってほどなく、葬儀まで4日間もあったにもかかわらず「自宅は階段があるから大変だ」という理由で自宅へ遺体を安置したいという身内の希望を拒否して病院の霊安室にかずみの遺体を置いていた事や、かずみの写真がアルバムごとゴミに出されていたり、服も何もかも家族(実家)に相談なく加藤によって捨てられてた件などをみても、それまで付き合いのあった友人知人達から「加藤許すまじ!」と思われても仕方なかったと思う


妻の死後、直ぐに新しい恋にのめり込む常人では理解出来ない程の、あまりの切り替えの早すぎる行動に加藤和彦という人が現れていたと思う


冷たいとかそういうんじゃないんだよね


数学的みたいな考え方とでも言うのかしら?そこに余韻は無い(妻の死後は後追いのような気分でいた事もあったようだが)


「安井とのことは全力で尽くしたので完結した」


次に全力で尽くしたい人を見つけたので、これからはこの人のために生きて行きます!な考えとでも言うのかしらね




仕事も私生活も放り出す形で妻の看病にあたった加藤と同じ人であるのか?と大半の女性は驚いていたが男性の友人や渡辺美佐は冷静に受け入れていたのが印象的「あそこまでやったんだから、それであの夫婦は完結したのだ」と



インタビュー受けている殆どの人が、育ちも良く高学歴で社会でも成功者と言われる人達なので、そうハッキリとは言い表してはいないけれど、ほぼ全員がアンチ加藤


証言者によって夫婦を見る目は違っていたし、夫婦もその姿の見せ方を使い分けていたように思う


加藤が妻を主導しているように見ている人もいれば安井が夫を主導(調教と表現している人もいた)していると見ていた人もいた


どちらも本当の姿だったと思う


例えば、加藤は吉田拓郎(結婚前から各々の共通の知人)の前では「一家の長」でありたかったのだろうし、安井は女友達の前では「夫にわがまま放題を言える妻でありたかった」


そうあるために、その場では息の合った夫婦の共同作業が行われていたのだろう


吉田が話した中に、加藤は「自分より先を歩いてくれる女性じゃなきゃ魅力を感じない」と言う男だから安井を選んだのは分かるが、男女関係では歴戦のツワモノである安井がなんであんな頼りない男に熱を上げたのかさっぱり分からないと言っていた




一時期、安井は加藤の浮気によって打ちひしがれて妹に「もうダメかもしれない」と彼女らしからぬ電話をかけている



安井に「離婚」という選択肢があれば、後半の人生はまた違うものになっていたかもしれないが、加藤を絶対手放したくなかった(安井は8歳上)のだろう


唯一といってもいいくらいに、加藤の肩を持つ証言をしているのが玉村豊男夫妻


安井と加藤は「さりげなく努力をしながら素敵なカップルを実行してきた」仲の良い夫婦であったと評している


二人の関係は決して装いなのではなく、お互いにその関係と形を理想として暮らしを保ってきたのだろう




この同じ様な事を音楽仲間である吉田拓郎が感じた印象になると「二人の関係は危うい綱渡りをしているようにしか見えないし、生活は破綻しているとしか思えなかった」「素敵を装い続けてメディアに相手にされなくなったらどうするの?」と言いたかったと



こういう風に、関わっている生活の相手によっていろいろなエピソードが書かれている



でも、全ての人が安井かずみという人を愛していて、その死を未だに哀しんでいる事が伝わる



世代は違っても、その当時の新進気鋭のアーティスト達との交流や日本の業界人とは思えないような交友関係を知るだけでも面白い本だと思う



本の最後に、証言者として登場する人たちの事について書かれているので「この人は何をする人なの?」ってのが分かります



まあ、私と同じ世代だとギリギリ分かると思うけど、下の世代の人には殆どの人が「誰?」だろうね



「誰?」って片づけるには、もったいないひとばかりだけどね  (;^_^A