道龍主従の考えた作戦は大晦日を狙うという戦略であった。


道龍は配下を遣って京の珍しい美術品をを頻繁に贈るだけでなく、
自らも足繁く、木沢具行を通い、鷹狩りや茶会などを開いて
安心感をもたすとともに、傲慢な具行の心を満たすことに成功した。


そのため、道龍が自領の田畑を荒らす狐や狸のたぐいが
木沢氏の領地に逃げ込んだ場合の狩猟の許可を願い出た場合も
「具行様、わしの領地の田畑が毎年々々、狐や狸にやられ、
不自由しております。恐れながら、御領に逃げ込んだ場合は
捕えてもよろしいでしょうか」と訴えれば、
鷹揚に具行は「何も問題ない。わしとそちの関係ではないか
遠慮などいらぬ。自由にせい」と答えた。


最もこれこそ、道龍の最大の罠であった。

師走の大晦日にも道龍は飲み切れぬほどの酒を
具行の元に配下に届けさせる手配をした。
夜には京女を具行の元に送らせる手筈も整えた。


「準備にぬかりはないか、政忠」
「皆、殿の指示を待っておりますぞ。」
「よし、では明日は奥平家初の合戦ぞ」
(この戦が奥平家の雄飛の最初だで、
負ければ終わり、勝てば次の道が開ける…)


その晩、主従は遅くまで語り合ったのは言うまでもない。


「第五話:決戦、王寺の戦い」に続く


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