★ 12月26日 土曜日
セミは、長い地下生活の後、
地上に出、成虫になる。
チョウも、
半死半生のような、
さなぎの状態を経た後、
羽を広げ、
野山を舞い飛ぶ。
人間についても、
これとよく似た経過を経験するものではなかろうか。
自分自身、若い頃を振り返ってみて、
蛹か繭のような
どうしようもない不可避の、停滞した期間があった。
が、
その長く暗いトンネルを潜り抜けた後、
思いもしなかった広々とした世界が
開けてきたのを覚えている。
地球全体に及んだ
コロナ禍の、
先もあまり見通せない
この滞留期間を乗り越えれば、
思いがけもしなかった新しいものが
必ずや、この先、待っているに違いない。
★ 12月27日 日曜日
この宇宙のほかにも
多くの宇宙があるのかもしれない。
この考えは、古来からあったように思う。
近年で言えば、
芥川龍之介の、「侏儒の言葉」の中の、
ブランキの夢にも出ている。
戦に勝ったナポレオンは、
第二の地球では敗れているかも、と。
これは、
単なる個人的空想ではなく、
古来から抱かれてきた、いわば共同幻想的な
直観を、
ブランキの夢に託して、随想録風に
載せたものと思うけれど、
多次元宇宙の存在が、
詩人的な発想にとどまらず、
量子力学のさらなる発展によって
科学的に立証される時が来たら、
これほどエキサイティングなものはない。
★ 12月28日 月曜日
真砂なす数無き星のその中に
吾に向かいて光る星あり
正岡子規の歌です。
が、
最も疎遠なものが
最も近しいものになるという
例はよくあるもの
という考えが
なんとなく
浮かんだ。
★ 12月30日 水曜日
地球の裏側まで貫通する穴に
物が落ちたら、どうなるか。
刻々と加速する物体は
その速さが、地球の中心で最大になり、
その速さは、
秒速8㎞毎秒で、
それから段々減少していき、
裏側に達した時はゼロ。
物に働く引力といえば、
地表面で最大になり、
中心ではゼロ。
物体は、つまり、単振動を繰り返し、
地球の裏側に到着するまで
約42分かかります。
蛇足ですが、
この地球貫通トンネルに落下した物体の運動は、
地表面を周回する
人工衛星の射影と考えることもできます。